第323話 十分一スケールPちゃん

 ロータス郊外の荒野でぽつんと突き出ている岩山の上に、エシャーとルッコラは舞い降りた。


 それぞれの背中から、僕とミールは飛び降りる。


「ありがとう。エシャー」

 

 僕はエシャーの首筋を撫でながら言った。


「ドウイタシマシテ」


 僕のそばにロッドが降りてきた。


「ピー」

「ありがとう。ロッド」


 ロッドの頭を撫でてから、その首にぶら下がっていた籠に手を入れて、ホロマスクを二つ取り出す。


 一つをミールに渡して、一つは僕の首に付けた。


「ミール。ホロマスクの使い方は覚えているかい?」

「大丈夫です。カイトさん」


 僕もミールも帝国軍には顔を知られている。


 この町で素顔を晒すわけにはいかないので、顔の周囲に立体映像ホログラフを投影する装置、ホロマスクを持ってきたのだ。


 ホロマスクのスイッチを入れて鏡を見ると、僕の顔は三十代くらいのナーモ族男性の顔になっていた。


 頭に着いている猫耳は、BMIで動くようになっている。


 同様にズボンの尻から出ている猫尻尾も……


 尻尾の方は立体映像ではなく、市販品のパーティグッズのデータを元にプリンターで作った物だが、所詮は玩具。


 動きが不自然ではないだろうか?


「カイトさん、その尻尾」


 ミールの顔はホロマスクで二十代後半ぐらいのナーモ族女性の顔になっていた。


 ミールの自前の尻尾と、僕の尻尾の動きを見比べて見たが、やはり不自然だろうか?


「ミール。やっぱり、この尻尾は不自然かな?」

「いいえ、そんな事ないです。ただ……」

「ただ?」

「すごく、セクシイです!」

「へ? セクシイ?」


 ミールは、僕にしがみついてきた。


「ああ! カイトさんの尻尾が、あたしを誘惑します」

「いや……これは作り物……」


 もしかして、ナーモ族って異性の尻尾の動きを見て発情するのか?


「カイトさん。ここでは二人切りです」

「ええっと……エシャーとロットとルッコラもいるけど……」

「ベジドラゴンはヒューマノイドの恋愛に興味なんて……」


 ミールがふと見回すと、エシャーとロッド、ルッコラがジーと僕とミールを見つめている。


「カイト。ミール。アタシ達ニ構ワズ、続キヲドウゾ」

「そ……それではお言葉に甘えて、カイトさん。Pちゃんがいない今の内に……」

「甘ーい!」


 その聞き覚えのある女の声は、ロッドが首から下げている籠から聞こえてきた。


「よいしょっと」


 籠の中から、声の主が這い出してくる。


 な……なんだ? これは……身長十五センチほどの小人?


 いや、この小人の顔は……頭についている二本のアンテナにメイド服は……


 十分一スケールPちゃん?

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