第322話 この中で、一番司令官の貫録がある人ってだあれ?

 異を唱えたのは、アーニャ・マレンコフだ。


「私は別に、ベジドラゴンで乗って偵察に行くことに反対というわけじゃないの。でも、君が行くのはちょっと問題があると思うわ」

「え?」


 僕が行っては問題? なんで?


「どうして、僕が行くと問題だと?」

「この艦隊の最高司令官は誰?」

「え?」


 艦隊の最高司令官? なにそれ? 提督ってことかな?


 まあ、潜水艦二隻で繰り出してきたから艦隊と言えなくはないが、ここに提督なんて大層な人いたっけ?


 この中で、一番司令官の貫録がある人ってだあれ?


 これに答えられないと、五歳の女の子に叱られそうな気がする。


 馬艦長に視線を向けた。


「馬 美玲は《海龍》の艦長ですが、艦隊司令ではありませんよ」


 僕が何も言わないうちに、アーニャは否定した。


 それじゃあ、いったい誰やねん?


「君でしょ」


 アーニャが指差したのは、他ならぬ僕だった。


「へ?」

「へ? じゃないわよ。君がこの中のリーダーなのよ」


 僕が……リーダー? そうだっけ? いや、なんか成り行きで、みんなに指示していたような気がするが……


「私も、馬 美玲も、楊 美雨から君の指示に従うように言われているわ。ここにいる女の子達も、君を慕って着いてきているのよ。つまり、この中のリーダーは君なのよ」

「そうですか」

「まったく、リーダーとしての自覚が足りないわね」


 んな事言ったってなあ、僕って人の上に立つような人じゃないし……


「君が最高司令だという事は納得したわね?」

「ええ、まあ」

「それで、その最高司令官が軽々しく、艦隊を離れていいと思うの?」

  

 確かに……


「でも、司令官自ら偵察に行くって事もない事もないし……」

「君の好きなアニメではね」


 う! そんな事はない! 実写の時代劇でもあったぞ。


「まあ、司令官自ら偵察に行って、状況を確認するというのは悪くないわ」

「それでは……」

「ただし、リーダーが不在になると集団の統率がとれなくなるわよ。こんな小さな集団でも」


 ううん……いや、僕とミールが不在でも、みんな仲良く……してくれるだろうか?


 レイホーが下ネタをやりすぎて芽依ちゃんを怒らせるとか、ミクがミーチャに女装を強いて、キラと喧嘩になるとか……


 ないとは、言い切れない。


「北村海斗君。そういう場合、どうすればいいと思う?」

「ええっと……」

「そういう時は、君が留守の間、ここを任せられるサブリーダーを決めてから出かけるのよ」

「なるほど……」


 僕の代わりを任せられる人と言ったら……


 芽依ちゃんに視線を向けた。


「き……北村さん……どうして、そこで私を見るのですか!」


 え? おい……君は前の僕の副官だったのだろう……


「そ……そんな期待を込めた目で見ないでください……愛情のこもった目は大歓迎ですけど……」


 ううん……だめだ、こりゃ……


 Pちゃんに目を向けると……


「ご主人様。ロボットである私には、人間に指示を下す事は許されません」


 だよね……


 キラとミクは論外……


 となると……


「レイホー。僕が留守の間、頼めるかい?」

「ううん……私では、馬艦長とアーニャさんに頭が上がらないね」


 結局、留守中のリーダーはアーニャ・マレンコフに頼むことになった。

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