第312話 潜水艦《海龍》2
レイホーも慌てて僕から離れた。
「カイトさん。あたし達にいろいろ頼みごとをしておいて、その間にレイホーさんと何をしていたのです?」
ミールの手には、分身の憑代に使う木札が握られていた。
「よせ! ミール! 誤解だ!」
「レイホーさん」
芽衣ちゃんが、レイホーの前に迫る。
「レイホーさん。やっぱり、逆NTRするつもりだったのですね」
「め……芽衣ちゃん。今の冗談ね……」
ミクが僕の前に進み出た。その手には、式神の憑代に使う人型が握られている。
「お兄ちゃん」
「ミ……ミク……誤解だ! だから、ここでアクロを呼び出すな!」
ミクは不意にニコっと笑ってから。憑代を地面に叩きつけた。
「出でよ! 式神!」
うわわわわ!
思わず目を瞑った。
「お久しぶりです。北村海斗様」
この声は?
目を開くと、僕の足元にウサギ式神の赤目がいた。
「赤目? ここしばらく、姿を見なかったけど……」
「僕は普段、姿は見えませんが皆様の近くにいるのですよ。今回は、主の命令で北村海斗様の後をつけていました」
なんだって?
「ですから、北村海斗様の潔白は僕が証明できます」
よかった。
赤目のおかげで、何とか誤解は解けたが……
「お兄ちゃんに、その気がないのは分かったけど……」
そう言って、ミクはレイホーの前に出る。
「レイホーさん。通路でお兄ちゃんの後をつけていたのは、どういうつもり?」
え? つけられていたのか?
「いや……別につけてないね。ただ、お兄さんが前を歩いていただけね」
いや、それ完全に尾行だから……
「いや……私はただ、港を向かっていたら、お兄さんが前にいたので」
「ここでカイトさんに会ったのは偶然だという事は分かりました。でも……」
今度はミールが僕の右腕にしがみついてきた。てか、胸が当たってる!
「カイトさんに、こういう事をしていい女は、あたしだけですから……」
「あたしだって、権利あるもん……」
左腕にはミクがしがみついて、胸を押しつけてきた。全然膨らんでいないまな板胸なので嬉しくないのだが……よせ! 僕を犯罪者にする気か!
「あなた達にも権利はありません。香子様が、病に臥せっているのをいい事に、ご主人様に手を出すんじゃありません!」
Pちゃんが乱入して、ますます自体が泥沼化……誰か助けてくれ。
…
……
………
「こちらが、貨物室になります」
馬 美玲の案内で、僕達が《海龍》に入ったのは、それから三十分後の事だった。
みんな物珍しげに《海龍》の中を、見回している。
一人ミクだけが、気持ち悪そうな顔をしていた。
「ミク。辛いなら、外で待っていていいんだぞ」
「辛くないもん!」
「そ……そうか」
それにしても、この潜水艦……ずいぶん中が広いな。これだけ広ければ着脱装置二台積めそうだけど……
「艦長さん。《海龍》は《水龍》の同型鑑と聞いているのですが、それにしては中が広いですね」
「これが本来の広さです。《水龍》は特殊な改造を施してあるので、狭くなったのですよ」
「特殊な改造?」
「垂直上昇用のロケットエンジンをつけたのです」
「そ……そういえば、なんで潜水艦にロケットエンジンなんかつけたのですか?」
「はあ。なんでも設計者が言うには、魚雷から防御にするのには、水上に飛び上がるのが最も確実だとか……」
その設計者……沈○の艦○読んでいたな……
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