第215話 ドームの戦い2

 フリントロック銃とは明らかに違う銃声が聞こえた。


『銃撃を受けました。貫通なし』


 自動小銃AK47による銃撃だった。以前、キラにこれで撃たれた時は磁性流体装甲リキッドアーマーの第一層まで貫通されたが、九九式は傷一つ付かない。


 銃撃をしている兵士達は、必死になってマガジンを交換して撃ち続けていた。


 撃たれても平気だが、いつまでも付き合う気はない。


 AA12の一連射で兵士たちを肉塊に変えた。


 バリケードの向こうで爆発が起きた。


 菊花から爆撃だ。


 むこうに隠れている兵士がRPG-7を使おうとしたようだな。


 ん?


 何か細長い物体が爆風で飛んできて地面に転がった? あれは?


 RPG-7!


 兵士の一人がそれを拾う。いや、あいつはダサエフ。


「これさえあれば、こっちの物だ! くだばれ!」


 ダサエフがロケット弾を撃ってきた。


 だが、飛んでくるロケット弾に菊花が体当たり。


 ロケット弾は、僕から十メートル手前で爆発した。


 爆風が襲ってくる。


『第一層貫通。第二層で食い止めました』 


 爆弾の破片が装甲に食い込んでいた。


 十メートル離れていてこれか。直撃だったらアウトだな。


 爆発で生じた粉塵の中を、僕はダサエフがいた方向へ歩いて行った。


 粉塵を抜けると、ダサエフは兵士から次の弾頭を受け取っているとこだった。


「ワイヤーガンセット」


 照準をRPG-7の発射器に合わせる。


「ファイヤー!」


 ワイヤーガンは、弾頭を装着する寸前の発射器に突き刺さった。


「ウインチスタート」


 RPG-7の発射器ごとワイヤーを撒き戻す。


 ダサエフはRPG-7を奪われまいとしがみ付いていたが、途中で瓦礫とぶつかって手放した。


「返せ! 泥棒!」


 泥棒と言われるのは心外だな。だから、RPG-7は返してやった。真ん中からへし折って……


「ひい! バケモノ!」


 ダサエフはバリケードに向かって走り出す。


 だが、逃がさん。


「アクセレレーション」


 加速機能を使って追いつくと、僕はダサエフの襟首を掴んで持ち上げた。


「は……放せ!」

「ダサエフ」


 ジタバタもがいているダサエフに、僕はメガホンを握らせた。


「これで、どうしろというのだ?」


 ミールの分身やミクの式神相手に、虚しい抵抗を続ける帝国軍兵士たちを指差した。


「彼らに抵抗を止めるように命令を出せ。それで、この殺し合いは終わる」

「ふざけるな! 殺されたって、そんな命令出さんぞ」

「ならば死ね」

「誰が出さんと言った! 出す! 出す!」


 根性のない奴……


 ダサエフはメガホンを口に当てた。


「おまえら! 直ちに抵抗をやめろ。やめないと俺が殺されるんだ」


 一瞬、兵士たちの抵抗が止んだ。


 そして、兵士達は互いに仲間と顔を見合わせる。


 集音マイクで、兵士たちの声を拾ってみた。


「これ以上抵抗すると、隊長が殺されるそうだ」

「なに! ダサエフを殺してくれるだと!」

「それなら……」


 しばしの沈黙の後、兵士達はいっそう激しく抵抗を始めた。


「ダサエフ。おまえ……人望ないな」

「うるさい! ほっとけ!」


 仕方ない。僕はダサエフに渡したメガホンを取って帝国軍に声をかけた。


「帝国軍に告ぐ。今から、君たちを一人残らず殲滅する。逃げる事は許さない。一人でも逃げたら、ダサエフ隊長の命はないものと思え」


 そして……


 帝国軍兵士は、一人残らず逃げて行った。


「ダサエフ……おまえ……友達いないだろう……」

「ほっとけ!」


 涙交じりの怒声が虚しく響いた。

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