第205話 ビキナーズラック?
一気に矢部との間合いを詰める。
すれ違い様に、ショットガンを一連射。
むこうも、撃ってきた。
しかし、九九式のアーマーにそんな物は通じない。
そんな事は、互いに分かっている事だ。
振り返ると、向こうはワイヤーガンを発射していた。
九九式のワイヤーガンは、追尾機能があるので避けても無駄。
正しい対処は……
ショットガンを、棍棒のようにふるって叩き落とす。
続いて、ワイヤーをショットガンでからめ捕った。
「行くぞ! イナーシャルコントロール プロモーション二G」
矢部に向かって一気に加速。
ぶつかる寸前に、ワイヤーを掴んで胴体にキックを叩き込んだ。
矢部も少し遅れて、ブーストパンチを放ってくる。
顔面にパンチを食らう前に、僕はワイヤーを手放した。
パンチを食らった反動で、僕は後方へ吹っ飛んでいったが、ロボットスーツが食らったダメージはかなり緩和された。
一方で殴った矢部も、反動で後方へ吹っ飛んでいく。
支える場所のない空中で殴り合うとこうなるのだ。
だから、殴り合いの前に相手にワイヤーガンを打ち込むと有効な打撃を与えられる。
そんな知識が、唐突に脳裏に湧いてきた。
ブレインレターで送り込まれた知識のようだ。
『ちょっと、反則じゃないですか』
「なにが? 戦いに反則もへったくりもないでしょ」
『いえ……そうじゃなくて、九九式初心者の北村さんが、なんで九九式をこんな使いこなせるのですか!?』
「たぶん、ビキナーズラックだよ」
『こんなビキナーズラックがあってたまるか! 生データから作られたというのは、こっちを油断させる嘘でしょ! この戦い方は隊長の動きそのものだ。あんた本当は隊長なんだな? 死んだふりをしていたんでしょ?』
「いや……マジに、生データから作られたのだが」
『嘘だ!』
矢部は、ワイヤーガンを放ってきた。
ショットガンはすでに手放してしまったのでない。
弾丸が刺さらない様に、左腕の装甲を斜めに当てて弾き飛ばした。
そのままワイヤーを左腕でからめ捕る。
『やっはり、隊長だ。ワイヤーガンをそうやって避けられるのは、隊長と芽衣ちゃんだけだったはず』
これって、そんな難しい技だったの?
「他にできる人いなかったの?」
『また、そうやって知らないふりして』
「いや、マジに知らないのだけど……ああ! たぶんブレインレターのせいだと思う」
『ブレインレター?』
「三日前にブレインレターで、前の僕の記憶を送り込まれた。その中に九九式の使い方も入っていたのだと思う」
『冗談じゃない! それじゃあ隊長が生き返ったも同じだ! 俺勝ち目ないじゃん』
「じゃあ降伏しますか?」
『いや、降伏は中の人が許さないので、俺は矢納さんのところへ逃げます。矢納さんのところへ』
「え?」
矢部は通信を切って逃げ出した。
しかし、スピードが遅い。まるで『ついて来い』と言わんばかりの……罠か?
いや待て……矢部もブレインレターで送り込まれた『奴』あるいは『中の人』に操られているとしたら、罠ではなく、僕をある場所に誘導しようとしている?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます