第155話 ミクの失踪2


「キャー! このスカート素敵」

「この帽子どうでしょう? 似合いますか?」


 こ……こいつらは……聞き込みはどうした!?


「どれもお似合いですよ。お客さん」


 女店員が、愛想笑いを浮かべて寄ってきた。

 

 仕方ない。聞き込みは僕が……


「あの……すみません」


 僕は女店員にミクの写真を見せた。


「この店に、こんな子が来ませんでしたか?」

「あら? この子なら今朝、店の前を通りましたよ。白い動物を連れて」


 こんなに早く手掛かりが見つかるとは……


「Pちゃん! ミール! ……ん?」


 二人は何処だ?


「お連れさんなら、試着室ですが」

 

 肝心な時に……しかし、試着室では乗り込んで連れ出すわけには……


「ご主人様。どうでしょうか? この服」


 試着室から出てきたPちゃんは、白い清楚なワンピースを身にまとい、白いつば広の帽子を頭に乗せ、いかにもお嬢様と言った出で立ちだった。


 か……可愛い! いかん! 見とれている場合では……


 しかし、ここで誉めないと拗ねるだろうな。


「か……可愛いよ。Pちゃん」

「嬉しいです。ご主人様。買っていただけますか?」

「う……いくら?」


 後ろで揉み手している店員に尋ねる。


「大負けに負けて、金貨一枚と銀貨二十枚です」


 た……高い


 財布を開く。


 ミールにレッドドラゴンの肝臓を買ってもらった時の金貨はかなり減っていた。


 シーバ城攻めの時に大量の気球を作ったり、スライム対策に塩を大量に買ったりしたからな……


「ご主人様ダメです」


 え? 買わなくていいの?


「言い値の通り、お金を出す人がありますか。ここは値切るのです」


 無茶言うな!


 この惑星に来て、かなりコミュ症は改善できたが、値切りなんて高度な交渉術は無理だ。


「すみません。ご主人様には無理でした。では私が……」


 Pちゃんと店員の間で約一分間交渉の末、銀貨四十五枚まで値引きしてもらった。


「カイトさん。お待たせしました」


 試着室のカーテンから、ミールが顔だけヒョコッとのぞかせた。


 頭に被っている赤いベレーのような帽子には専用の穴があって、そこから猫耳がニョキッと伸びている。


「どうです? これ」


 そう言って、カーテンを開いて出てきたミールは、青いデニム……のような布製のミニスカートを穿き、上には短すぎるシャツをまとっている。


 ようするにへそ出しルックだ。


 ヤバイ! 目のやり場が……


「と……とても似合っているよ」

「嬉しいです!」


 二人は今までの服を手提げに入れ、今買った服を着て店を出た。


 店員から僕も買わないかと誘われたが、丁重にお断りしておいた。


「え? あの店の店員さんが、ミクさんを見ていた。チチイ、まさか一店目で、当たるとは……」

「Pちゃん。今、舌打ちをしなかったか?」

「と……とんでもない。ロボットが舌打ちなんて」

「でも、感情はあるんだよな」


 その質問に答えず、Pちゃんは明後日の方を向く。


 やはり、情報収集にかこつけて買い物をねだる気だったな。


「あの、それじゃあカイトさん。カフェの方は?」

「ミクの手掛かりが見つかったからパス」

「そんなあ」

「わかった! わかった! ミクが見つかったら、みんなで行こう」

「はーい」


 疲れる。


「そこのお兄さん。饅頭買っていかない?」

 

 チャイナドレスの女の子に呼び止められたのは、服屋を出てから百メートルほど歩いた時。


 可愛い女の子だが、ここは無視。


 饅頭なんぞ、食っている場合では……饅頭? 


 なぜ、この惑星に饅頭が?


 女の子の方を振り向いた。


「君は!?」

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