異世界『ニッポン』生活 〜ハーレムの中でも六番目くらいのモブ勢だったけど、勇者を追ってニッポンまでおしかけちゃいました〜

羽場

第1話 六番目の女


 街道からも大きく外れた、山奥の辺鄙な場所にある『ど田舎村』。

 そこで暮らすわたしは、ただのつまらない村娘でしかなく、その生活も貧乏暇なしとでもいうように、とても忙しかった。


 活動を始めるのは、毎朝、まだ空も薄暗いうちからだ。

 料理、洗濯、薪拾い、薪割り、山菜集めなどを日課とし、空いた時間には手芸をしたり、農業の手伝いをしたり。

 ときには狩猟にいたるまで。


 家事に追われる一日に無駄はなく、それでいて代わり映えもない。

 繰り返し繰り返し、昨日と似たような忙しない今日を過ごすのだ。


 もちろん、苦労しているな、という自覚はあった。

 しかし、不満はこれっぽっちもなかった。


 別にわたしだけが特別じゃない。

 村での生活は、この忙しさこそが標準。

 そして、この村で生まれ、この村で育ち、この村で死んでいく。

 それがうちの家系なのだ。


 お父さんもお母さんも、おじいちゃんもおばあちゃんも、ずっとこの生活を営んできた。

 弟や妹もたくさんいるが、皆わたし同様によく働いている。

 だからわたしも、この生活を当然のこととして受け入れていた。




 ――ただし。


 ――彼と出会うまでは、であるが。




 それは、よく晴れた春の日の午後のことだった。

 森へと薪を拾いに行こうとしたところ、その入口で人が倒れているのをわたしは見つけた。


 初めてのことだった。

 薪拾いにおける特別なイベントといえば、せいぜい熊やオオカミに遭遇するくらいなもの。

 だからこそ、このいつもと違う出来事に、わたしの心臓はドキリと強く高く脈打った。


 さらに、「大丈夫ですか!」と近づき、その顔を見て、二回目のドキリ。

 その人は、十代半ばの……つまり、同年代の男の子だった。


 年の近い男子は村にもそれなりにいるが、子どもの頃から知りすぎている。

 ほとんど家族同然の付き合いだといっていい。

 それに精神年齢があまりに幼稚で、今のところ弟以上の評価を与えられない者ばかりだ。


 対してこちらは、知らないがゆえに異性を感じさせた。

 着ている服もエキセントリックで、そのせいか顔もなんだかかっこよく見える。

 そんなわけであるから、わたしは誰かを助けようとする道義心以外にも、自分本意な感情を多少は持ちつつ、彼を背負い、家に連れ帰って介抱することにしたのである。


 家に到着すると、彼をベッドに寝かせ、水と食べ物を摂らせた。

 彼は、それほど時間もかからずに体調を取り戻し、行き倒れるに至った経緯を語ってくれた。


 なんでも、元は『ニッポン』の『トーキョー』なる場所にいたそうだが、突然景色が変わり、気付いたら山の中。

 一日中、森の中をウロウロとして、なんとか外に出れたのはいいものの、そこで力尽きてしまったのだという。


 わたし自身、外の世界についてあまり詳しくないが、それでも自分の国の名前や、住んでいる地名などは知っている。

 しかし、『ニッポン』や『トーキョー』なんて単語は聞いたことはない。

 つまり、彼はよっぽど遠くの場所から、なんらかの魔法現象によって、この地にワープしてきたのだろう。


 なお、そのことを言うと彼は、「ま、まさか、異世界転移……!?」という、わけのわからないことを呟きながら、わなわな震えていた。

 詳しく聞いてみれば、遠くの星から何者かによって、この星に召喚されたとかなんとか。


 ……うん。なにを言っているのか、よくわからない。


 ちょっと頭のおかしい人なのかな? と思いつつも、そのあたりもかっこよく見えるのだから、わたしも存外救えない。

 どうやらわたしは、すでに彼にゾッコンらしかった。


 とりあえず行き場のない彼は、我が家の居候という身分になった。

 働かざるもの食うべからずということで、家の手伝いをしてもらっている。

 基本的に、わたしが彼の面倒を見るという立場だ。


 ひとつ屋根の下で、彼との共同作業の日々が続いた。

 このままいけば、将来は彼と結婚するかもしれない――なんて思うと、つい道端の花を摘んで頭に飾ってみたり、水面に映る自分の顔を気にかけてみたり。

 代わり映えのしない毎日に、ちょっとした彩りが生まれた気がした。


 しかし、彼について衝撃的な事実が明らかになったのが、それから一ヶ月も過ぎた頃。

 教会の関係者だという人たちが、大所帯でうちの村にやってきたのがきっかけだった。


 来訪の理由を聞けば、『さ、最強の勇者の誕生じゃ! 世界は救われる! かつて、どの勇者も倒せなかった魔王を、容易く倒すレベルの最強の勇者が現れるぞよ!』という神託が下ったのだとか。

 で、その勇者が現れるという場所が、このど田舎村だったとのこと。


 それなら早速、村人総出で勇者探しを――となるのだが、探すまでもなくイレギュラーともいうべき存在がこの村にはいるわけで。

 本人も「あの、もしかしたら……」と満更でもない様子で、自分から名乗り出ているし。


 というわけで。

 わたしが拾った彼は、なんと魔王を倒し世界に平和をもたらす『勇者』だったようである。





 彼が勇者として旅立つことになった。

 必然、訪れる彼との別れ――……なんてものは存在しない。


 わたしは彼にホの字だったし、勇者などと聞いてしまった以上、両親からも「是が非でも捕まえておけ」「絶対逃すんじゃないわよ」と釘を刺されていた。

 そこで教会の関係者に無理を言って、わたしもその旅に同行させてもらうことにしたのだ。


 出発はすぐだった。

 家族や村民たちとの別れもそこそこに、彼、わたしの順に二足歩行の竜が牽引する車――『竜車』へと乗り込んだ。


 すると突然、「行くな、行かないでくれ!」と車にすがりつく男――。

 隣の家のボブだった。


「ずっとお前のことが好きだったんだ!」


 まさかもまさか。

 この状況で、思いもよらない告白である。

 いや、もう二度と会えなくなるかもしれない、この状況だからこそか。


「どうします? 降りますか」


 御者さんから尋ねられた。

 しかし、わたしは「いいえ、行ってください」と無慈悲に伝える。


 ごめんねボブ。わたしの心はもう彼のものなの。

 あなたの分まで幸せを掴んでみせるからね。


 突然の告白にはさすがに胸を打たれたものの、所詮ボブは隣人以外のなにものでもない相手。

 ボブに対する特別な感情など、わたしには一ミリもありはしないのだ。


 かくして、わたしたちを乗せた竜車が、ど田舎村を出発する。

 長く住み慣れた故郷との別れである。さらにはボブの悲しい泣き声も相まって、心に寂しいものをこみ上げさせた。

 でも、もう決めたのだ。後悔はしまい。


 願わくば、目くるめくラブロマンスを。

 わたしは彼の隣に寄り添いながら、物語のヒロインにでもなったつもりで、この先に待ち受けるであろう彼との煌めく未来に思いを馳せたのだ。


 ――まあ、そうは問屋が卸さないんですがね。


 全く、わたしごときがなにをとち狂って、勘違いしてしまったのか。

 順を追って言えば、何日かの旅ののちに、竜車は国王様がいる城に到着し、そこで改めて彼が勇者だと認定された。

 しかし、このままでは魔王を倒せないという言葉も頂いた。

 そんなわけで、以後は各地を回り、レベル上げを行うことになったのだが……。


 いや、順調は順調だったのだ。レベル上げについては。

 いかんせんその問題は、わたしにとっての問題であり、それはもっと私的プライベートな部分――彼の男性的な魅力にこそあった。

 とんでもなくモテるのだ。彼は。


 あるときは貴族の令嬢に「アンタが勇者? 大したことなさそうね」と喧嘩を売られ、その末に一対一でその令嬢を打ち倒し、惚れられたり。

 またあるときは、無理やり奴隷にさせられていた獣人の少女を助け、「兄ちゃん!」などと呼ばれ、なつかれたり。

 そんなふうに彼は、行く先々で女性を虜にし、あっという間にハーレムが形成されてしまったのである。


 そして、ついに魔王を倒し、長い長い冒険が終わった頃、彼の周囲にはわたしを含めて八人の女性がいた。

 いや、世界を見渡してみれば、彼を恋い慕っている女性は軽く三桁を超えているのであるが、まあ、有象無象は除外する。

 あくまでもライバル足り得るのは、最後まで彼に付き添っていた主力だけだ。


 名前を言えば、『貴族令嬢』『聖女』『女師範』『女盗賊』『獣人少女』『女魔法使い』『悪役令嬢』という、色とりどりの面々。

 これにわたしを加えた八人が、彼を取り巻くハーレムのメンバー。

 ただしハーレムと銘打ちつつも、彼の貞操観念は強く、いまだ結ばれた者はひとりもいない。

 それに彼は、一夫多妻などという不埒な考えもないようだった。


 つまり、選ばれし勝者はひとり。

 わたしたち八人は、彼の伴侶の座を巡って常日頃より、しのぎを削り合っていたのである。


 なお当然のことながら、現段階において、この『彼争奪レース』は横一列ではない。

 リードしている者もいれば、遅れを取っている者もいる。

 

 そして、わたしが独自にランク付けしたところ、現在わたしは上から数えて六番目。

 そう、〝これ〟の題名にもある『六番目の女』とは、わたしのことだった。


 ……うん、おかしいよね。

 絶対におかしい。こんなことは許されない。


 確かに、ほかのメンツに比べれば、わたしはどこにでもいる村娘。

 容貌もだいぶ地味ではある。


 でも、貴重な初期メンバーなはずだ。ずっと彼を支えてきた自負だってある。

 それにだ。これを言うと少しばかり恩着せがましくはあるが、わたしは彼の命の恩人。

 わたしがいなければ、彼はこの表舞台にすら立てていなかったはずなのだ。


 それなのに、なんでこんなに落ちぶれてしまったのか。ホントわけがわからなかった。

 まあ、どれだけ愚痴を言っても、わたしが六番目であるという現実は変わらないんですけどね。


 ちなみに。

 こんなわたしより下に位置しているのは、いったい誰であるかといえば、『女魔法使い』と『悪役令嬢』の二人。

 どちらも性格に難ありの、不良物件だった。


 詳しく説明すると、『女魔法使い』はいつもとんがり帽子をかぶった変人さん。ボソボソッと喋るために、声が聞き取りにくいのが特徴だ。

 かつては敵であり、彼の身体を実験台にして、百人の勇者を誕生させようとした前科を持つ。

 でも、そのときの「……彼がたくさんいれば、取り合う必要もない」という彼女の提案に、ちょっぴり心を動かされたのは秘密だ。


『悪役令嬢』は金髪縦ロールな、いかにもなお嬢様。その有り様は一言でいって高慢だ。

『貴族令嬢』とは、子どものころから敵対しているとのことで、その縁あってか、行く先々でわたしたちに意地悪を仕掛けてきた。

 しかし、いつの間にかパーティに紛れ込んで、さらにいつの間にかハーレムの一員になっていた。


 まあつまり、ろくでもない二人なのだ。

 さすがに、この二人には負けてないと思いたい。

 ということで、わたしより下の位置付けである。


 一方で、わたしより上の五人は、いずれも強敵ぞろい。

 順位をひっくり返すのは難しく、「正直もう無理だろ……」とわたしも諦めつつあった。

 あとはなんとか彼に不貞を認めさせて、愛人枠にでも収まれないかな、と画策するくらい。


 でも、神様はちゃんと見ていた。

 今日この日、とうとうわたしにも一発逆転のチャンスが巡ってきたのである。





 魔王を倒し、世界は平和になった。

 それだけならばいいものの、国の研究者連中が意外な有能さを発揮し、彼を元の世界へと還す秘術を発見してしまっていた。


 当然、わたしたち彼の取り巻きからは、大不評。

 女性陣全員で顔を見合わせると、意味深に頷き合い、「さて、どうしてくれようか」といったふうに、彼を帰れなくする気満々だった。

 とりあえず、研究者連中は二度と馬鹿な真似ができないよう、闇に葬るの決定で。


 しかし、そんな邪悪な計画も、彼の姿を目の当たりにするまで。

 自分が元の世界に帰れることを知ると、彼は誰はばかることなく涙を流した。

 わんわんと子どものように声を上げて。


 こうとなっては、わたしたちも矛を収めるしかない。

 何者であっても、彼から故郷を奪い去ることをしてはならないのだ。


 その後、話はトントン拍子に進み、いよいよ彼が元の世界に帰ろうという段になった。

 場所は、お城の広場。現在は、そこで彼が一人ひとりに別れの挨拶をしていくところである。


 まずは国王様からはじまり、大臣や、騎士団長、宿屋のおじさんと続く。

 なるほどなるほど。つまり、彼にとってあんまり仲良くない人から順にお別れを言っていく感じか。


 一通り挨拶が済むと、いよいよ真打ち。

 わたしたちハーレムメンバーの番。


 最初のお相手は悪役令嬢だ。

 言うまでもなく、これは当然だろう。ハーレムメンバーではあるものの、その高慢ちきな性格を考えたら、むしろ嫌われている可能性すらある。

『彼争奪レース』における納得の第八位だ。


 そして次に挨拶されたのは、まあ、嫌われているとは言わないまでも、ハーレムメンバーの中ではあまり目立っていない、モブ的な役割の……そう、わたし。

 ――って、ええっ!? なんで、わたし!?


 わけがわからなかった。

 いや、マジでわけがわからない。


 女魔法使いは!? とか。

 え、もしかしてわたし七番目なの!? とか。

 題名も『七番目の女』に変更しなきゃいけないの!? とか。


 次から次へと疑問が頭の中を駆け巡り――。

 しかし、そんな動揺をおくびにも出さず、わたしは彼に言葉を返す。


「涙は絶対に見せません! わたしたちが悲しい表情を見せると、あなたが帰り辛くなっちゃうから……! だから、わたしは笑顔であなたを見送るんです……!」


 目に涙をためつつも、わたしは健気に笑顔を作ってみせたのだ。

 彼も「ありがとう」と、優しく微笑んでくれた。


 それからのちは、女魔法使い、獣人少女、女盗賊、女師範、聖女、貴族令嬢、という順に別れの挨拶がかわされていく。

 わたしと女魔法使いが入れ替わった以外は、予想通りの順番だった。


 そして、別れの挨拶が全て済み、本当の本当にお別れの時間になった。

 ハーレムメンバーは全員が彼との別れを惜しんで、滂沱の涙を流している。


 もちろん、わたしも。

 さっきは「絶対に泣きません!」なんて言ったが、さすがにここでは涙を流した。


 まあ、嘘泣きなんですがね。へへっ。

 そう、あくまでも演技。実をいうと、このときのわたしに悲しみなどは一切なかったのだ。


 なんでって?

 そんなの決まっている。




 ――なぜならわたしは。


 ――この世界を捨てて、彼に付いていくつもりだったのだから。




 無論、このことは誰にも悟られてはならない。決してだ。

 仮に知られたなら、「じゃあ私も!」という展開になるのは明らかであるからして。


 今はみんな、彼との別れが当然と思っている。世界が違うのだから、と。

 自分たちが彼の世界に行くなどという手段は、あまりにも突拍子過ぎて、ハナから除外している。

 自分たちはこの世界に留まらなければならないのだという考えを、まるで義務でもあるかのように、無意識的に持ってしまっている。


 しかし、誰かが彼と一緒に彼の世界へと行くとなれば、その原則が崩される。

 自分も彼についていっていいのだと、勇気づけられる。

 さらに自分が諦めたはずの恋を奪われてなるものか、という反抗心も湧くことだろう。


 だから言わない。

 それこそが勝利への道筋。


 思い返せば、彼と出会ってから苦節一年余り。

 ハーレムメンバーは次々に増え、そのたびにわたしのモブキャラ化が深刻なものになっていった。


 煮え湯を飲まされ続けてきた。歯痒い思いをずっとしてきた。

 冒険が終盤になるに連れ、『あなた、なんでまだここにいるの?』みたいな視線が増えていったが、それにもずっと耐え続けてきた。


 けれど、それも今日で終わる。

 わたし一人が彼の世界に行き、彼と結ばれ、ハッピーエンドを迎えるのだ。


 ――くくっ。あなたたちにとっては、わたしなんて所詮ライバルにすらならない存在だったのでしょうね。

 でもお生憎様。最後に勝つのはこのわたしよ。皆様ごめんあそばせ。


 口に出してしまえば計画が露見してしまうため、心の中で勝利宣言。

 まあ、そんなふうに勝ち誇ってみたけれど、そもそも、わたし以外のハーレムメンバーはいずれも立場のある身なわけで。

 元は奴隷だった獣人少女ですら、実は獣人王国の姫だったというとんでも属性付きだ。

 たとえ彼がいなくなっても、彼女たちが輝かしい人生を送ることは間違いないだろう。


 対して、わたしはどうか。

 ど田舎生まれのど田舎育ち。ただのしがない村娘でしかない。

 ど田舎村に帰れば、わたしを待っているのは、隣の家のドテカボチャであるボブとの結婚だろう。


 未来は暗い。

 なればこそ、故郷を――、家族を捨ててでも、と考えるのだ。

 迷う必要性など、毛の先ほどもない。いざ、彼の世界へ。


 ――お父さんお母さんさようなら。わたしは異世界で幸せになります。


 そして、彼が光り輝く転移陣の中に消えゆくその瞬間。

 わたしは目を閉じて、「えい!」と飛び込んだ。


 まぶたの向こうに感じる強い光。それは転移陣の中にいる証明だ。

 やがて、その光を感じなくなり、わたしはゆっくりとまぶたを開けた。


 先ほどとは違う景色。小さな部屋の中。

 そこには、「――え?」という、彼の驚いた顔があった。

 計画は成功した、成功したのだ。


 ならば、やった、という歓喜が浮かぶはず。

 とうとう、あの女どもを出し抜いたのだと。

 しかし――。




「「「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」」」




 思わずカギカッコを九個も並べてしまいたくなるような、ハモリ具合だった。

 どうやら、ほかを出し抜こうと考えていたのは、わたし一人ではなかったらしい。


 ならば、あとはもうお決まりのパターンだ。

 ハーレムメンバーによる、普段と変わらない賑やかなやり取りがはじまった。


「はぁ!? ちょっと、なんでアンタたちまで来てるのよ!」

「それはこっちのセリフです」


 プンスカ怒る貴族令嬢と、ツンと澄まして言い返す聖女。


「考えることは皆同じ、ということか……はぁ」

「ハッハッ、こいつはやられたな!」


 疲れたように嘆息したのは女師範。

 快活に笑ったのは女盗賊。


「うぅ~、兄ちゃんを独り占めできると思ったのにぃ」

「……なんでこんなことになったのか」


 悔しそうに地団駄を踏む獣人少女。

 ボソボソとぼやく女魔法使い。


「なんであなたまで来てますの!?」

「……」


 金切り声を上げて問いただしたのは悪役令嬢。

 そして、悪役令嬢のメイドさんはなにも言わずにスッと目を逸らした。

 っていうか、悪役令嬢のメイドさん。あなたも籠絡されていたのね。


 まあ、そんなわけで。

 ハーレム要員にまた一人加わり、こうしてわたしたちの異世界『ニッポン』生活がはじまったのである。まる。



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