(没案)ブルースターは無軌道に

要領の悪い

プロローグ

私は目の前に広がる光景に心から関心しつつも常に不安と未知の世界への恐怖があった。時が進むにつれ不安は大きくなり、恐怖は目に見える形へと成長する。

しかし、私以外の存在がそれに対抗する手助けをしてくれた。元来、人の手に頼る事を避けていたが奇しくも結果は最善へと変わったのだ。

私は今、親愛なる友人とともに地平線より昇りゆく日を目にしている。地底から脱した事を祝福するかのようだ。きっと慈悲深い神が恐怖に打ち勝った事を褒めているのであろう。

「終わったね」

飛鳥が不意に呟く。

「まだ、これからさ」

不安など無い。もう前を向く時間だからだ。

我々が体験したものは深淵の本の入口に過ぎないもののこれは決して公にはならない。否、してはならない。この恐怖、醜さを罪無き地上の住人が知るのは可哀想すぎる。

人間はどんなに高く…そう、月や他の星々に行くことが出来たとしても地球の底に行くことは出来ない。本当は出来るのかもしれない。しかし行かないことは事実だ。私は決して恐れ知らずと言える性格では無かったが、先の見えぬその地の底に向かった。そこでは我々現代文明人には到底理解に苦しむ光景が広がっていた。光り輝く幻想郷、人々が天国と呼ぶものに近かったと記憶している。

かつて栄華を誇ったその地は私が来た時は確かに廃墟と呼べる状態であったが未曾有の生物。不思議な環境が私の好奇心を刺激した。

上記の通りでは公に出来ない理由とは言い難いだろう。しかし私の証言、そして仲間達が何よりの証明になる事を願う。

元より、この探索は結果としては失敗だったろう。もっと計画的に行動すれば良いのだ。私の愚かさを悲願するしかない。そうこの話は好奇心に取り憑かれた何の取り柄もない人間が一歩踏み出すまでの出来事だ。

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