phase1.天然最強説

<side ♀>

 白と水色のギンガムチェックの半袖ブラウスのボタンを留め、その上から長袖でロング丈の黒いエプロンドレスを着る。

 足元は白いガーター&ソックスと焦げ茶色のストラップドシューズ。

 襟元に深紅のリボンタイを結び、前髪をまとめるようにホワイトブリムを付ければ、ひとまずは完成。


 「ん……と。こんな感じかな?」

 この家のお仕着せの制服に着替えて、鏡の前で確かめる。


 さすがに友人の家でメイドさんとして働くことになるとは思わなかったけど、この就職難のご時世にしては好条件だし、運が良かったな~。

 なにせ、ボク、「男子高出の女子短大卒」という複雑怪奇な経歴の持ち主だし、雇ってくれるトコロがなかなか無かったんだよねー。


 でも、男子高時代の友人の俊秋くんに短大のコンパで再会して、ふたたび親しくつきあい始めてたのは、本当に幸運だったよ。

 短大卒業を前にして、就職先が見つからずに困ってたボクに、「ウチに就職すればいい」って言ってくれたし。

 ホント、俊秋くんには、いくら感謝しても足りないよ~。


 ──あれ、俊秋くん、どうして泣いてるの?

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