モーレツ!企業戦士の異世界転生記。仕事一筋の俺が異世界で美少女に囲まれながら国一番の領地を作る物語

七龍光彩

第1話 そこは天国


「俺は…確か帰り道に急に意識が遠のいて…」


体が軽い…まるで宙に浮いているようだ…それに俺が帰ったのは朝方だ…12月ならまだ日は登っていないはずだ…


俺の眼前に広がるのは澄み渡った空だ。それにジャケットを着ていたはずだが格好はいつものスーツ姿だった。12月なら東京と言えどスーツだけなら昼でも肌寒いはずだ。だが今いるここは暖かい。


俺はひとまず起き上がる事にした。だが起き上がって驚いた。俺が居るのは雲の上。つまり空中に立っている事になる。意識が遠のいてここに居るって事はまさか天国じゃないよな?


「目が覚めたみたいですね。気分はどうですか?」


俺の目の前に天使のような服をした女性が立っていた。いや、この状況からして天使でしかないな。となるとここはこの世とあの世の境界線か…。ならまだ戻れる!俺にはまだやるべき仕事が残っているんだ!


「気分は最高だ。じゃあ早速で悪いが俺を返してくれ。」


「ええ、肉体がまだ現世にあれば現世に戻ることも出来ますし天国に行く両方の選択肢を与えられるのですが…あなたの場合は肉体がすでに失われてしまったので現世には戻れないのです…」


って事は俺もしかして死んだのか?冗談じゃない!俺は今東京の一等地にオフィスビルを建てるプロジェクトを任されているんだ!1000億のプロジェクトだぞ!高卒で入社してから10年。一流大卒のエリートだらけの中でいままでの仕事が評価されて異例の高卒組からのビックプロジェクトの責任者に大抜擢。俺の企業戦士人生はこれからだって時に…!だがなぜ俺を起こさなかったんだ!少しでも起こされれば直ぐに目は覚める自信はあるぞ。



「1つ質問をしたい。なぜ俺を早く起こさなかった?」


「天界の規則として魂の修復が終わって自然に目を覚ますまで干渉することは出来ません。特にあなたの場合は稀にみる消耗具合でした。もし禁忌を犯して干渉したとしても肉体が失われるまでに目が覚めることは無かったでしょう。」


「魂の修復?俺の魂はあの時最高に燃え上がっていたぞ!消耗なんてしているはずがないだろう!」


俺は仕事が好きで会社を愛していた。だからどんな仕事だって苦に感じた事は一度もないし会社の為なら靴をなめた事もあるがそれだって苦痛に感じたこともない。1年間休みがなかったのも俺が望んで出勤したからだ。上司は心配していたけど。だから魂が摩耗したなんて事はあり得ないはずだ。


「あのー…普通はこれだけの事をすれば魂の修復が不可能な状態まで消耗してここには来れないのですが…むしろこの程度の消耗で済んだあたりが奇跡なんですよ?」


「まあそんなことはどうでもいい。どうやっても戻ることは出来ないのか?例えば神の力で身体を作り直すとか?」


「それも無理ですね。身体を作り直すことは可能ですがそれは禁忌に触れますので。」


クソっ…どうやっても戻れないのか…幸いプロジェクト自体は俺が居なくても回る様にはしておいたからビルは無事に立つだろう…だがまだ天国には行きたくない…俺はまだ働ける!天国じゃ遊んでばかりで労働が出来ない!


「分かった。到底納得は出来ないが現世に戻ることは諦める。で、天国に行く以外に俺に選択肢はないのか?」


「それは…随分と変わった方ですね。普通は天国に行くことを選ぶのに…選択肢がないわけではありませんが…」


「それはどんな選択肢だ。いいから早く教えてくれ。」


「別の世界に転生する事です。ある程度条件は叶えられますが。基本的にどのような世界に行くかは運任せです。比較的文明の進んだ世界に居た貴方には厳しい世界に行くことになる可能性も高いです。それでもその選択肢を選びますか?」


「働けるなら石器時代でも氷河期でも構わない。俺はまだ働きたいんだ。」


「分かりました。どうやら決意は固いようですね。では働くことに出来る世界に転生という事でいいですね?」


「ああ、そうしてくれ。」


「分かりました。ではこれからあなたを異世界に転生させます。次に目を覚ますときは異世界です。あなたに幸運を。そして次は満ち足りてここへ来る事を。」


また意識が遠のいていく…次に目が覚めた時は異世界だ。さあ、働くぞ。

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