彼女はあまりにも綺麗すぎる

佐藤陽太郎

第1話 出会い

綺麗だ。

彼女はあまりにも綺麗すぎる。

森の中、彼女を見た瞬間。心を奪われた。

容姿や体型やそういうところが綺麗と感じた訳ではない。

ただ、純粋にそう感じたのだ。

しかし、その彼女は今まさに縄に首をかけて自殺しようとしていた。

 今日は気晴らしに森へ散策に来ていたところだった。

(どういう状況だよ..これ?)

どうしていいか分からず固まっていた俺に彼女が声をかけてきた。

「あれ?どうしてここにいるの?」

変に心臓が高鳴る。

もう、この高鳴りが何に対しての高鳴りか分からなくなっていた。

「あの、なにしにきたの?」

「えっとぉ...僕はただ!散歩してただけで!!!」

「そうなんだ...」

「君は、なんで、死のうとしてるの?」

「.......」

これは聞いては行けないことだったかな?

嫌なことを思い出させるかもしれないし...

いやでも!この時の正しい質問なんてわからないし!!!

と、自問自答している僕に彼女は、ゆっくり話し始めた。

「君になら、はなしてもいいかなー」

「疲れちゃったの。」

「だって、私この世界からきらわれてるんだもの。子供の頃から、私がなにかする度に変だとか、変わってるとか、どこにいってもそう言われてきた。それでも、私は私でいたかった。だから私で居続けたけどね。世界は私を受け入れてくれなかった。異物とされて排除されそうになったの。それが嫌だった。怖くてこわくて、私は私を辞めることにしたの。」

「世界が笑えといえば笑って、酷いことされても我慢して、自分の身を守るために、世界から嫌われない為に、酷いことして。世界に溶け込むように仮面を被って、私を殺して殺して殺して殺して、気がついたら、私は知らない私になったの。」

「私がもう誰かも分からないの。彼も愛してくれない。本当の私に戻れなくなってしまったの。そのまま、生きてくのってとても辛いんだ。とってもつかれるんだ。だからね」

「死のうとしたんだ。」

彼女の言ってることが、わからなかった。

けど、すごく悲しいことというのは顔を見て分かった。

「あなたは、どうするの?」

.....。

僕はただ、散歩してただけなので、どうするもこうするもないのだが、、、

こんなこと思うのあれだけど、彼女もしや危ない人ではないのか?

いや、でも、放っておく訳にはいかない。

「俺は、帰るよ」

「...そっか。そっか、うん、君にも帰る場所があるもんね。ばいばい」

「なにいってるの?」

「え?」

「君も一緒に帰ろう」

「????」

「どうせ、僕も1人だし。君、話聞く限り帰る場所もないんでしょ?なら、僕ときなよ。」

彼女になにか感じたからと言って、見ず知らずの人を、ましてや女の子を家に連れていくのはあまりにも危険である。

それに、家出とかだったら犯罪になる。

しかし、自然と口からそのセリフが出てしまった。

「ちなみに、君はどこに住んでるんだい?」

「私、私、親に捨てられて孤児院に預けられたんだけどね、施設入る前に逃げたりとか、色々やっちゃって、追い出されて。だから、住んでるとこなんてないよ」

「え?そ、そうなの?」

「うん。」

「僕も、親と住んでたんだけどね、まぁその、虐待されててね、はは、、もうやばいなって、命の危険感じて逃げて今までなんとか生きてきたんだよね、今は画家として活動して、そこそこ売れるようになったからね、なんとか生活していけるようになったんだ!だから、僕もさ、1人なんだよね」

「そうなんだね」

「ちょっとだけ、似てるね、僕達!」

「.....確かに」

「ここで出会ったのも何かの縁だし、一緒に行こうよ、なんかその、死んじゃうの、もったいないよ...」

沈黙が続く。

怪しいよなぁ..

怖いのは彼女もだよなぁ...


彼女は口を開いた。

「本当にもったいないね、、ほんとにね、、、そうだよね、死ぬ予定だったのに会うなんて、、すごいよ、、、本当に運命みたい、。よろしくね、、!!」

彼女は嬉しそうに呟いた。

その言葉を聞いてほっとした。

「うん!そうしよ!

そう言えば、名前ってなんて言うの?」



「名前、名前かぁ、、

あのさ、変かもしれないけど、私とあなたは今死んじゃったってことにしよう」

........

?????

?!?!!

あまりにと唐突な言葉で驚きが隠せなかった。

「いや..生きてるでしょ?」

「いや、死んだの。死んだってことにしよう!!今生まれ変わるの!!!」

「だから!私に名前を付けてよ!!新しい名前!!」

「なんだそりゃ!?!?何言ってるの!??」

「あなたも私も今から新しい人なの!過去なんてない!!出来たてホヤホヤ生まれたて!!!」

もう、何が何だか頭が追いつかない。

「はやく!!な!ま!え!!!」

「え、えーーー...」

「ほらぁ!!つけてっつけて!!!」

何だか不思議な子だなぁ。

まぁ、出会いも出会いだし、これも、何かの運命かな、、、、

その後、彼女も期待してるしお互い名前を付けることにした。

僕は彼女に「「すみれ」」

彼女は僕に「「たいよう」」

と、お互いに名付けあった。

僕は本名を教えようとしたが彼女が僕の口を塞いだ。

「待って!!!本当の名前は、お互い幸せになって別れる時まで教えないって!」

そんな、不思議な約束をした。



なんでだろう。彼女といるととても安心する。こんなこと今まで無かった。


これが彼女と初めて出会った日だった。


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