第6話

 


 


タイチャン曰く、この魔王城は鉄壁にガードされているらしい。


そのため、外部から内部に対して念話を使用することはできないらしい。


ちなみに内部から外部へ念話を送ることもできない模様だ。


じゃあ、魔族たちはどうやって連絡を取り合っているかというと超音波を使用しているそうだ。なんてアナログな。


っていうか超音波だったら障害物に当たって跳ね返ってくるんじゃないだろうか。しかも距離だって長距離は無理だろう。


そう思うと念話ってすごいなと改めて思った。


でも、なんで私は外部に対して念話をすることができたのだろうか。謎は深まるばかりである。


「そんなの、マユが異世界からの迷い人だからです。異世界からの迷い人には妨害工作が効きませんからね。」


深まった謎はタイチャンが教えてくれた。


どうやら私が異世界からの迷い人だから私からは念話することができるらしい。


なにやらどうでもいい知識が増えたような気がした。


「タイチャンはプーちゃんに念話が通じない理由知ってる?」


「は?知る訳ないじゃないですか。っていうか通じないんですか?異世界からの迷い人なのに?なんで?どうして?私が知りたいくらいですよ。」


物知りなタイチャンもプーちゃんに念話が通じないことはわからないらしい。


って、さっきマリアに念話したときにプーちゃんどうしているか聞くはずだったのに聞いてなかったよ。


今更ながらに気づいてがっくりと項垂れる。


今からもう一度マリアに念話してもいいけど、マリアに「物忘れひどすぎ。」ってバカにされそうだし。


うぅ・・・。


時間を置いてもう一回マリアに念話してみよう。


でも、その前にもう一度プーちゃんに念話をしてみた。


だけれども、やっぱりプーちゃんからの応答はなかった。


本当にどうしたんだろう。プーちゃん。


 


 


 


☆☆☆


 


 


 


『あの・・・マリア、元気?』


次の日、もう一度マリアに念話してみた。


『どうしたの?マユ。昨日の念話でなにか聞き忘れたことでもあるのかしら?』


開口一番にマリアにこう言われた。


どうやら一日時間を置いても訊き忘れたことがあるということはマリアに察知されてしまったようだ。


でも、マリアにはバカにされなかった。よかった。


これがタイチャンだったらきっと全力でバカにしてくるのに。ああ、マリアってなんて優しいんだろう。


『あの・・・プーちゃん元気にしてる?』


なので思い切って昨日聞き忘れたプーちゃんのことを尋ねてみた。


『え?今頃?昨日の本題はそれね。よく忘れることができたわね。っていうか、今更プーちゃんのことが気になったの?プーちゃんだったら元魔王様が身罷られてからタマちゃんを連れて「探さないでください」って言いながらいなくなったわよ。』


うう・・・。


やっぱりマリアにもバカにされた・・・。


まあ、確かに今更かもしれないけど。だって、ホンニャンが可愛くてすっかり忘れていたんだもの。仕方がないじゃないか。


・・・って。


『え?プーちゃんいなくなっちゃったのっ!!?れ、連絡先は!?どこにいったの!?』


『だから、探さないでくださいって言いながらいなくなったって言ったじゃない。プーちゃんがどこに行ったのかは私にはわからないわよ。』


『そ、そんな・・・。』


『とりあえずマユの家に戻ってきてみたら?もしかしたら何かわかるかもしれないわよ?』


マリアはそう言って一方的に念話を止めた。


  


 


『マユ、プーちゃんは?』


『マリアなんだってー?』


『やっぱりミルクでしょー?』


マリアとの念話が終わると待ってましたとばかりにマーニャたちが話しかけてきた。


なんだかんだ言いながらもマーニャたちもプーちゃんのことを心配しているようだ。


「うーん。プーちゃん今はお家にいないんだって。元魔王様が亡くなってからどっかに行っちゃったらしいの。」


『えーーーーっ!?』


『うそーーーーっ!?だって、プーちゃんトマトどうするのー?』


『マユがミルクくれないからなのー。』


プーちゃんが家にいないということを告げると、マーニャたちが驚いた声を上げる。


確かにボーニャの言う通り、プーちゃんトマト大好きだからトマトを置いていくなんて思えないんだけど。っていうか、どこに行ってしまったのだろうか。


「でね、タイチャンには内緒でこっそり家に戻ってみようと思うんだけど・・・。マーニャたちはどうする?一緒に来る?」


『もちろんなのー!』


『行くのーーー!』


『ミルクちょうだーい!』


「わかった。じゃあ一緒に行こうね。って、クーニャはミルクのことばかりだね・・・。ミルク飲んだら行く?」


クーニャはすっかりミルクの虜のようで、隙があるとミルクを欲しがる。いや、隙が無くても欲しがるけど。


『ミルク飲んだら一緒に行くの!』


『ずるーい。マーニャもミルク欲しいのー!』


『ボーニャにもちょうだいなのー。』


可愛い三匹の猫はそれぞれミルクが好きなようだ。


クーニャがミルクを貰えると思ったら、マーニャたちもミルクが飲みたくなったらしい。


「はいはい。じゃあ、ミルクを用意するからね。」


そう言って私はマーニャたちのミルクを用意した。


実は、このミルク。少し温めた方が美味しいらしく、マーニャたちの食いつきが違う。


・・・クーニャは温めてあっても冷たくてもがぶ飲みするけど。


人肌程度に温めたミルクをマーニャ達の前に置くと、まるで三匹で競争するかのごとくミルクを飲み始めた。


もちろん一番最初に飲み終えたのはクーニャだ。


まだ飲み足りないようで比較的おっとりとミルクを飲んでいるボーニャのミルクの入った器に顔を突っ込む。


『いやぁー。クーニャ。このミルクはボーニャのなのー。』


『・・・。』


ボーニャはクーニャにミルクを取られまいと必死に抵抗するが、クーニャも負けてはいない。


ついにクーニャの食い意地が買って、ボーニャからミルクの器を奪ってしまった。


『・・・マユぅ。』


ボーニャはクーニャにミルクを取られたショックで目に涙を浮かべてこちらを見てきた。


「まったく。クーニャったら。ほらボーニャ追加のミルクを上げるから機嫌を直して。」


『やったなの!』


そう言って私は開いている器に再度ミルクを注いだ。そして、ボーニャの目の前に出すとボーニャは嬉しそうにミルクを飲み始めた。


『お腹いっぱいなの。』


ほぼ二匹分のミルクを飲んだクーニャはそう言ってその場に寝っ転がった。


マーニャもボーニャもミルクを飲んで満足したのか、優雅に毛づくろいをしている。


まったりとした至福の時間が流れる。


「じゃあ、久々に家に行ってみようか。」


しばらくまったりとした時間を過ごしてから私はマーニャたちに声をかけた。


 


 


 


 




 


 


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