第7話
ってさ。恥ずかしいことに私は転移の魔法なんて使用できないんだった。
家まで行くのは歩いて行くしかないので、片道でも数日はかかる。マーニャたちもいることだし、もっと時間がかかることは明白だ。
いつもはプーちゃんがいたから失念してたよ。それでなくても、ここのところずっと魔王城につめてて、まるっきり外にでなかったもんなぁ。
ホンニャンが産まれてからずっとだから、もう10年以上か。
・・・今思えばすごいな。そんな長い期間、まったく外に出ていなかっただなんて。
キャティーニャ村についたら、想像を絶する発展ぶりだったらどうしよう。
って、10年以上も経ってるんだからマリア結婚したよな。結婚したよね?子供とかいるのかな。
村長さんは元気かな。まだ生きているかな。
久しぶりにキャティーニャ村に思いを馳せる。
『マユー!早く行くのー。』
『早く早くー。』
『早くするのー。』
キャッティーニャ村のことを考えていると、マーニャたちが騒ぎ始めた。そうだよね。早く行かなきゃね。
でも、どうやって行こうか。
プーちゃんがいないから転移の魔法なんて使えないし。
歩いて出て行けばタイチャンに見つかってしまいそうだし。
やっぱりここはマコトさんに頼むしかないかな。
って、マコトさんはもう100歳近くになるのか・・・。生きてるのだろうか。
ちと不安になった。
『マコトさーん。お久しぶりです。』
『・・・あんた誰だね?』
ものすごーく久しぶりにマコトさんに念話を送ると、マコトさんにそう言われてしまった。
どうやらマコトさんは物忘れが激しくなったようだ。
まあ、私も何十年も連絡を取っていなかったからなぁ。
『えっと。マユです。マコトさんと同じ異世界からの迷い人の。』
『・・・マユ?はて、誰だっただろうか?』
うっ・・・。名前を言っても全く思い出してくれない。
どうしよう。マコトさんだけが頼りだったのに。
『マーニャとクーニャとボーニャは覚えていますか?』
マーニャたちは元はマコトさんのところから来たのだから、この子たちのことは覚えているだろうか。
覚えていて欲しい。
『おぉおぉ。マーニャにクーニャにボーニャとは懐かしいな。』
『あ、よかった覚えてたんですね。えっと、私はそのマーニャたちにお仕えしているマユです。思い出せませんか?』
『ん?ああ・・・何十年も前に会いましたっけ?こちらから連絡してもまるっきり連絡が取れないので死んだものかと思っていました。そちらからも連絡がないものですっかり忘れてしまっていましたよ。それで?どうしたんですか?』
よかった。
マコトさん思い出してくれたようだ。
でも、言葉がどうにもとげとげしいんだけど・・・。
これは、家に戻りたいから転移の魔法で送って行ってくださいなんて厚かましいお願いはしにくいなぁ。
『えっとー。いやーあのー。久々に連絡をしてこんなことを言うのもあれなんですけど・・・。』
『なんでしょうか?』
うぅ。久々に連絡するのがお願いごとだなんて言い辛いなぁ。しかも、数か月とかじゃなくて、もう15年も経ってしまっているし。
それだけ久々に連絡して、その内容が家に転移したいから力を貸してくれ。だなんて。
どうしよう。ものすっごく言い辛い。
『えっと・・・。シロとクロは元気ですか?』
うぅ・・・。言い辛い。
言い辛いから思わず世間話をしてしまう。
『シロとクロですか・・・。実はシロとクロは・・・。』
マコトさんの声が暗くなる。
シロとクロに何かがあったのだろうか。
あれから15年も経ってしまったからなぁ。
そう言えば、猫って15年も生きるともうお年寄りなんだよなぁ。高齢者だよ。高齢者。
その高齢者のシロとクロに転移の魔法をお願いするのは酷ということか。
・・・ん?
あ、あれ?
シロとクロの年齢って15歳じゃないよね???
だって、マコトさんとユキさんがこちらの世界に転移してきたときにサポートとして与えられた猫だって話だよね???
私がこの世界に転移してきたときには、マコトさんが転移してから50年は経っていたんだよね。それから15年経ったんだから、シロとクロは最低でも65年は生きているってことだよね?
え?
猫ってそんなに長生きだったっけか?
あ、あれ?
いや。普通におかしいよね?
絶対おかしいよね?
『・・・もしもーし?聞こえてますかー?』
うっかりシロとクロの年齢を換算してしまって思考が停止してしまった私にマコトさんが困ったように声をかけてきた。
そうだった。
マコトさんと念話で話している最中だったんだ。
すっかりシロとクロの年齢に気を取られてしまってうっかりすっかり忘れてしまっていたよ。
『すみません。聞こえています。ちょっとシロとクロの年齢はいくつなんだったかなーと計算していたら思考がぶっ飛びました。ごめんなさい。』
『あはは。そうでしたか。そう言えばマユさんまだ知らなかったんですか?猫様たちの年齢について。』
『ええ。はい。』
そう言えばもうマーニャたちも15歳なんだよなぁ。人間に換算するとお婆ちゃんなんだった。そう言えば。すっごく元気いっぱいだけど。
年齢感じさせないくらい元気いっぱいだけど。
『猫様たちもね、私たち異世界からの迷い人と同じで、年は取らないんだよ。』
『え?年は取らないって、寿命は・・・?』
『寿命もないよ。猫様たちも不老不死なんだよ。猫様たちは肉体の一番成熟している状態で成長が止まるんだよ。』
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