第4章
第1話
「平和だねぇ~。」
『平和なのぉ~。』
『ポカポカ陽気で気持ちいいの~。』
『ミルクまだぁ~。』
ここは、レコンティーニ王国。
猫様たちを神聖化し、猫様たちのためにあるような国だ。
この国は常春の気候をしており、とても住みやすい。
そして、ど田舎なので都会のような喧騒がいっさいない。
村の人たちもいい人ばかりだし。なにも言うことはない。
私はこのレコンティーニ王国のキャティーニャ村でのんびりとした生活を送っている。
うん。
のんびりとした生活を送っていた。つい、この間までは。
「マユ!現実逃避しないの!!」
「・・・うぅ。わかったよ、マリア。」
だって現実逃避だってしたくなるよ。まさか、タマちゃんが呪われた大地の呪いを解いたお陰でまさか世界中のあちこちの呪いが一斉に解かれるだなんて思ってもみなかったのだ。
今のところまだ大きな被害は出ていないようだが、いつどうなるかわかったものじゃない。
だから、呪いを解いてしまった責任を取らなければならないのだが。
「私は普通の人間なんだけどねぇ。世界を救うったってどうしたらいいのか。」
まさか、こんなに大事になるとは思わなかったのだ。
「もう。マユったら。やるしかないのよ。やるしか。大丈夫よ。マユにはプーちゃんもタマちゃんも、他の大精霊もついているんだから。それに、マーニャ様たちだってついているわ。」
「そうなんだけどね・・・。」
マリアの言っていることは正しい。
きっと今のプーちゃんはこの世界で一番強い存在だろう。
そしてあちこちの厄災を封じ込めていたタマちゃんもものすごく強い存在なのだろう。
二人がいればきっとなんてことないのだ。
だけれども、気分はのらない。だって私は普通の人間なのだから。
「あのね、マユ。プーちゃんやタマちゃんを従えているマユは普通の人間じゃないからね。違うからね。選ばれた人間なんだからね。」
「選ばれた人間・・・。」
マリアの言葉に気分が少しだけ浮上する。
「マユがプーちゃんとタマちゃんたちの力を借りなければ世界は混沌に飲み込まれてしまうわ。さあ!立ち上がるのよ!救世主マユ!!」
ああ、なんだかゲームのオープニングを聞いているみたいだ。
私が救世主かぁ。なんだかいい気分だなぁ。
「立ち上がるのよ!マユ!!」
マリアに言われるがまま立ち上がる私。
うん。私が救世主か。
私が。この私が・・・。
「私は新世界の神になるっ!!」
「って違うでしょ!マユ!!」
うぅ。ちょっとふざけてみただけなのにマリアに怒られました。
シリアスな展開だから、ちょっとくらいボケたっていいじゃない。マリアのいけずー。
「はいはい。それより女王様から連絡があったわ。今度はヤックモーン王国に行けって。」
「ヤックモーン王国?」
「そうよ。あの国にも伝承があってね。なんでもあの国に封じ込められている魔物の血を飲むと魔物の言いなりになってしまうという伝承があるのよ。その魔物を精霊王が封じ込めたって話があるの。確かめてみなきゃいけないでしょう?」
そうして私たちはヤックモーン王国に向かうことになったのです。
「えっとぉ。私って猫たちと一緒にスローライフを満喫するんじゃなかったっけ?なんでこんなに慌ただしいんだろう。」
思わず私は誰に言うまでもなくごちた。
おかしい。
非常におかしい。
なんで世界を救うだなんて壮大なことになっているんだろうか。
私は、異世界に迷い込んで猫たちとまったりもったり暮らしたかったのに・・・。
「まあまあ。終わりよければすべてよしって言葉があるから。ね。」
誰に言うでもなくごちた私の独り言をマリアは聞いていたらしい。
「終わりよければって終わってないよ。まだ。」
「うふふ。まあ、いろいろ刺激があった方が生活に潤いができるわよ。」
「いやいやいや。刺激がありすぎるのは胃が痛いのですよ。」
本当に刺激がありすぎる生活というのは胃が痛い。
どうして、世界を救うなんてことになってしまったのだか。
でも、このまま世界が崩壊するのを見てはいられないし・・・。
「それにしても、ヤックモーン王国の伝説ってどのくらい前の話なの?」
ここは情報収集と気分転換をかねてなんでも知っているマリアに確認する。
伝説というくらいだから相当古いものなのだろう。
「え?50年くらい前だったかしら?」
「・・・はいっ!?それって伝説じゃなくないっ!?っていうかタマちゃん産まれてないんじゃ・・・。」
「あら。それもそうね。そういえば50年前には精霊王は確認されていないわね。」
お、驚いた。
まさか伝説っていうのに50年前の出来事とは・・・。
伝説っていうよりつい最近の出来事ではないか。
「えっとぉ。ガセネタってことでいいかな?ということはヤックモーン王国には行かなくていいかな?いいよね?」
どうも、ヤックモーン王国の件はタマちゃんに関係なさそうだ。
その頃はまだタマちゃん卵の中だったと思うし。
絶対タマちゃんの所為じゃない。
うん。
だから私は関係ないし、タマちゃんのかけた呪いじゃないんだからヤックモーン王国の呪いだって解かれているはずがない。
だから、行かなくてもいいよねって確認をこめてマリアを見つめた。
「うーん。でも、女王様からのお願いだからねぇ。」
「じゃあ。女王様の勘違いってことでどうかな?」
私は軽い気持ちでそう口にした。
でも、マリアがどんよりとした顔を見せたので思わず口をつぐむ。
「ま、マリア・・・?」
「勘違いって言うの?あの女王様に?ほんとうに?マユは勘違いじゃないかって女王様にきけるの?」
「うっ・・・。」
マリアがもっともらしいことを言ってきた。
確かに、あの女王様だ。
「勘違いなんじゃないですか?」なんて確認したらすっごく怖そうだ。
もう、ブルブル震えてしまうことは確実だろう。
つまり、逃げ場はないってことがわかったのだった。
「無理。絶対きけない。」
「でしょ?だから、ヤックモーン王国に行くしかないの。って、プーちゃんが優秀だからもうヤックモーン王国に到着してるけどね。さ、まずは王都で情報を収集しましょう。」
そういうことになった。
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