第147話
「いやぁ。売るなんて可哀そうだからね。隣の集落の信頼できる人のところに預けてあるよ。動物の売買はあまり好きじゃないんだ。」
皇太子殿下はそう言ってにこやかに笑った。
よかった。どうやら水色の猫は無事のようである。
女王様から直々に渡された猫だということもあって、なにやらその猫が秘密を握っていそうなのだ。
もしかしたら、皇太子殿下がお金に対して緩くなってしまった原因かもしれないし。
「そうですか。よかった。その猫に会いたいんですが案内していただけますか?」
「ええ。いいですよ。あ、でも徒歩だと半日ほどかかりますので明日の朝からでどうでしょうか?」
うぅ~ん。隣の集落まで歩いて半日もかかるんだ。
現代の移動方法だと車が主流だから半日も歩いたことがないし、この世界に来てからは転移の魔法ばかり使っていたから半日も歩けるかどうか・・・。
「では、クロとシロに協力してもらいましょうか。転移すればすぐですよ。それでしたら、今からでも大丈夫ですか?」
「ええ。構いませんよ。」
徒歩だなんてどうしようかと思っていると、マコトさんがそう提案してくれた。
もう、転移便利すぎます。
と、いう訳で早速私たちは隣の集落に向かうことになった。
なんとなくミルトレアちゃんがいない時に行った方がいい気がするんだよね。しかも、できるだけ早く会いに行った方がいいと私のカンが告げている。
クロとシロの転移のおかげで、隣の集落には一瞬で着くことができた。
そこから、皇太子殿下が水色の猫を預けたという家に向かう。
「あ、ここです。お母様、お元気ですか?猫の様子を見に来ました。」
そう言って、皇太子殿下はその集落の中の真ん中に位置する他の家よりも一回りも二回りも大きい家に気軽に入っていった。
って!!ちょっとまて!!
今、皇太子殿下「お母様。」とか言っていなかった!?
皇太子殿下のお母様と言ったら皇后ではないか。
なんでこんなところにっ!?
思わず口から悲鳴が出そうになってしまうのは仕方がないことだろう。
「あら、いらっしゃい。隣にいるのはお友達かしら?」
家の中に居た金髪の綺麗で上品な女性が出迎えてくれた。
笑顔がとてもやさしそうで見ているこちらまで癒されるようだ。
この人が皇后陛下なのだろうか。
「まあ!あらあらあら!!マコト様っ!!?」
穏やかにこちらを見ていた皇后陛下だったが、マコトさんが一緒にいることを確認すると興奮したように目を大きく見開き声を上げた。
「お久しぶりです。お変わりありませんね。」
「それは、マコト様の方でしょ?いつまでも若くて羨ましいわ。ユキ様もお元気かしら?」
「はい。ユキはそこにいるマユさんのお陰で年を取れるようになりました。でも、変わらず元気ですよ。」
「ふふふっ。懐かしいわぁ。ああ、上がってちょうだい。今、お茶を淹れるわね。」
「お邪魔します。」
「あれ?お母様、マコトさんとお知り合いですか?」
「ふふ。以前大変お世話になったのよ。」
どうやら、マコトさんと皇后陛下はお知り合いのようでした。
にこやかに話しながら二人で家の奥まで進んでいってしまったので、私も急いで後をおいかけました。
そこには暖かそうな暖炉があり、その前に敷かれた毛皮の敷物の上に水色の猫が優雅に寝っ転がっていた。
「マリアちゃん。お客様が来たから大人しくしていてね。」
皇后陛下はそう言って、水色の猫の頭を優しく撫でた。
ん?
マリア??
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