第125話


「………はい!?」


思わず声が裏返ってしまったのは仕方のないことだと思う。


まさか、女神(?)様から、そんなことをお願いされるとは思ってもみなかったのだ。


だってさ、普通だよ。普通はさ、世界を救って欲しいとかっていうお願いってさ、異世界に転移してすぐにお願いいたしますされることなんじゃないの?


なぜ、今さらになってそんなことを言うのだろうか。


「お願い、マユ。この世界を救って………?」


上目遣いで、目をパシパシと瞬かせながらもう一度お願いしてくる女神(?)様。


上目遣いされても、ドキッとなんかしないけど。


「あ、あははは。マユさん。なんだか大変そうですね。では、プーちゃんも見つかったことですし、僕は王都に戻りますね。」


あまりのことに、脳の処理能力を越えたマコトさんが震えながらそう告げてきた。


いやいやいやいや。マコトさん。プーちゃんは見つかったけれども、肝心のマリアはまだ見つかってないんだから、帰らないで。


マコトさんは、シロとクロにお願いして王都に戻るようだ。


「ちょっと、待って!!マコトさんも迷い人でしょ!?ここは、残ってくださいっ!」


「あ、マユだけで大丈夫よぉ~ん。マコトだっけ?帰っていいわよぉ~。」


マコトさんを必死でひき止める私に、無情にも女神(?)様はあっけらかんと告げる。


この女神(?)様は、マコトさんには興味がないようだ。


でも、普通はこういうときって同じ世界から転移してきた仲間と一緒に世界を救うっていうのが相場じゃないの?


マコトさんの魔道具は役に立つと思うよ、たぶん。


「ま、マコトさんは素晴らしい魔道具を造るんですよ。きっとマコトさんにも協力してもらって方が世界を救える可能性も上がりますよ!」


「男は不要よ!」


「へ?」


まさかの女神(?)様は男性が嫌いでしたか………?


いやいやいや、それだけで世界を救える可能性を潰さないよね?ね?


「あらぁ~。マユってばマコト狙いだったのぉ~?だから一緒にいたいのかしらぁ~?」


女神(?)様は目を細めながら聞いてくる。


なぜだか、一気に空気が痛いくらい冷たくなったような気がする。


気のせいだろうか。


「あの、そんな気はいっさいなかったんですが………。」


「ダメよぉ~、ダメダメ。マコトだけはダメよぉ。」


「はあ。まあ、マコトさんこんな若そうな見た目してますけど、80歳ですし。そんな対象にはなり得ないんですけど………。」


「そうですよ!僕にだって選ぶ権利がありますよ。」


「なっ!?」


マコトさんが、私と女神(?)様の会話に急に入ってきた。


つーか、マコトさん。ずいぶん失礼じゃありませんか?


「あらあら~。マユもマコトも気づいていないのぉ~?鈍いわねぇ~。ねぇ、マユ。貴女の名前の由来を知っているかしらん?」


急に女神(?)様が私の名前の由来を聞いてくる。


なんで、今、名前の由来なんかを聞いてくるのだろうか。


私の名前は、若くして亡くなった父の大切な弟と妹の名前から一字ずつもらったと言っていた。


父の弟と妹の分も長生きをして幸せに暮らして欲しいという意味をこめたとか。


でも、それがなんだと言うのだろうか。

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