第119話

 


「無いですね・・・。集落なんて・・・。」


マコトさんと二人で呪われた大地を歩き回っている。


木々も生えていないので遠くまで見渡せるのだが、どうにも集落らしきものが見当たらない。


てくてくと呪われた大地を歩くこと30分。


未だに集落らしきものは見ることができない。


「おかしいですね。あの場所を畑にしようとしている形跡があるので近くに集落があるかと思ったのですが・・・。」


マコトさんも考え込むように歩みを止める。


あの場所だけ手を加えようとしていた形跡が確かにあったのだ。


しかし、今歩いている場所には手を加えた形跡がない。


もしかして、探す方向が間違っていたとか?


「マコトさん。何か近くに人がいることがわかるような魔道具ってないんですか?」


念のためにマコトさんに魔道具がないか確認してみる。


あれだけ、王都の屋敷から魔道具を鞄に詰め込んできたから一つくらい今のような状況で役立つ魔道具があるのではないかと期待してみる。


でも、まあ、魔道具を使用したくてしたくてしょうがないマコトさんが、このような絶好のチャンスを見逃すとは思えないから、きっとそんな便利な魔道具はないのだろう。


そう思っていたのだが・・・。


「こういうこともあろうと、近くの生命反応を検知する魔道具を持ってきています。さっそく使いましょう!」


急に生き生きとした表情を見せるマコトさん。


っていうか、今まで魔道具があるの忘れてたな・・・。


マコトさんはいそいそと鞄からA5サイズの板を取り出す。


「この魔道具のすごいところは、どんな小さな生命反応も検知してしまうことなんです。よって、王都で使うと人どころかネズミや小さな昆虫でさえ検知できる優れものです。キャティーニャ村は畑が多く虫も多いのでたくさんの虫を検知することでしょう。」


マコトさんが意気揚々と説明してくるが、その説明を聞いて、マコトさんがこの魔道具を使用するのを忘れていた理由がわかった。


どんな小さな生命反応でも検知してしまう魔道具。虫や小動物でさえも検知してしまう魔道具。


つまり、王都で使おうがキャティーニャ村で使おうがそこに虫や小動物がいればそれに反応してしまうのだろう。虫なんてそれこそ、そこここにいっぱいいるだろう。


つまり、この魔道具反応し放題という訳だ。


何を思ってマコトさんがこんな魔道具を開発したのかわからないけれども、人や虫、動物がいるような場所では全く使えない代物のようだ。


「あ、ちなみに植物にも反応しますよ。だって、植物だって生きていますからね。生命反応あるんですよ。すごい魔道具でしょ?ね?ね?」


得意満面の笑みで、魔道具のすごさを説明するマコトさん。


・・・植物まで反応するんですか、この魔道具。


さらに使えない代物だよね。


植物も動物も虫もいない場所なんてそうそうあり得ないと思うんだけど。


こんな呪われた大地でなければ使えないような代物だ。


「さっそく!スイッチオンっ!!」


 


 


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