第88話
プーちゃんはサクッとマコトさんの手によって・・・というか、クロとシロの手によってマコトさんの家に転移させることができました。
マコトさんの家ってばとっても大きいので、プーちゃんは余裕で入ることができました。
しばらくは、プーちゃんはマコトさんの家で過ごすことになるでしょう。
「それで、マユさん王都まで突然来てどうしたんですか?」
マコトさんが渋い日本茶を淹れてくれた。
しかも、湯飲みまである。
ずずっとお茶を飲めば、日本茶特有のまろやかな甘みを感じた。
マコトさんってば、結構いいお茶を使っているようです。
「マリアを探しに来たんです。女王様に連れ去られてしまったので・・・。」
「そうでしたか。マリアを連れ去られたんですね。女王様にはもうお会いできましたか?」
マコトさんは、湯飲みを傾けてずずっとお茶を啜った。
「はい。会ったんですけど・・・なぜか女王様にお会いしたらマリアのことを尋ねるのを忘れてしまって・・・。」
キャティーニャ村で女王様に会った時も、王都で女王様に会った時も、なぜかマリアのことを忘れてしまっていた。
今思うととても不思議なことだ。
「ははっ。女王様お得意の忘却スキルだね。」
「忘却スキル?」
「そう。対象相手に対して対象物は1つだけだけど、女王様の半径1km以内にいる時は思い出せないっていうスキルだよ。私もやられたことがあります。」
マコトさんはそう言って過去を思い出したのか苦笑した。
って、女王様何故にそんなスキルを私に向けて発動なさるのでしょうか。
「・・・女王様はマリアを返す気がないってこと?」
思い浮かぶのはそんな想像でした。
「違うと思いますよ。これは、女王様からマユへの試練なんだと思います。マユの力を駆使してマリアを探してみせろってことなのかもしれませんよ。」
マコトさんはニコッと笑いながら告げた。
私への女王様からの試練・・・?
要は自分で考えて行動してマリアを探せということかな?
もしくは、女王様の忘却スキルを破る方法を見つけるとか?
そう言えば、女王様に願いを一つだけ聞き入れると言われていたっけ?もし、そこでマリアを返してくださいって言えば、きっと返してくれるのだろう。
これは、一筋縄ではいかなさそうだ。
「あのお方は人をからかって遊ぶことが大好きなんですよ。傍迷惑ですけど。でも、本当に人が嫌がることは決してしない人ですからマリアさんは無事ですよ。それだけは安心してください。」
「はあ。」
マコトさん所々女王様に対して毒を吐いてないかい?
でも、マコトさんの言うとおりだとするならば、マリアは無事のようだ。
そこだけは安心できた。
「マコトさんはマリアの居場所を知っていますか?」
まずは情報収集からと思ってマコトさんに確認してみる。
しかし、マコトさんはポリポリと頬を掻き、
「ごめんなさい。私は知りません。」
と、申し訳なさそうに告げた。
まあ、そうだよね。
そんなに簡単にマリアの行方を知っている人は見つからないよね。
それに、忘却スキルでマリアのことを忘れさせるような女王様のことだ。
きっとマリアの行方を知っている人にもなんらかの措置をして、会ってもすぐには聞き出せないようにしているのだろう。
と、そこまで思ってふと何かが頭の隅に引っかかった。
あれ?
そう言えば、トンヌラさんって女王様によって私が作った化粧水で猫の姿にさせられた上に猫語しか喋れなくなっちゃったんだよね。しかも、念話も通じなければ、猫語なのに猫との意思疎通もできないというやっかいな状態に。
もしかして、トンヌラさんはマリアの居場所を知っている・・・?
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