第87話

 


駆け足でプーちゃんたちと別れたところに戻ると、既にそこには女王様の姿はありませんでした。


「はぁはぁ・・・。プーちゃん、女王様は・・・?」


もう年なのか、それとも久々に走ったからなのか息が切れる。


そんなに長い距離を走った訳でもないのに。


すぐに戻ってきたはずなのに、すでに女王様の姿はなかった。


あるのはプーちゃんの姿だけ。


しかも、しょんぼりしているとはいったいどういうことなのか。


『あの厄介な女は帰ったぞ。マユ、我は飛べぬ。』


「え?」


飛べないってどういうこと?


今まで宙に浮いた状態でふよふよ移動していたのに。


そういえば、プーちゃんは地面に横たわっている。


『魔力を封じ込められてしまった・・・。よって我は何も出来ぬ。歩くこともままならぬ。』


「はあ!?」


魔力を封じ込められたって!!あの短時間で!!


恐るべし、女王様・・・。


でも、歩けないってどういうことだろうか。


一応プーちゃんにも足は生えてる。身体の割には短い足だけれども。


いうなれば蜥蜴みたいな足だ。


「立てるでしょ?」


『立てぬ。』


そう言って、プーちゃんは足に力をこめて立ち上がろうとした。


だが、


ぬめりんっ。


乳液の効果で足が滑ってしまい立ち上がることができないのだ。


この分だと、なんとか立ち上がっても歩くこともできないだろう。かと言ってこのままうごうごともがきながら移動するのもどうかと思うし、むしろ日が暮れるだろう。


「プーちゃん、小さくなれる?」


小さくなってくれれば、ポケットに入れてプーちゃんを運ぶことができるんだけど・・・。


『・・・無理だ。魔力を封じこめられたゆえ、小さくはなれぬ・・・。』


弱弱しいプーちゃんの声が聞こえてきた。


プーちゃんも魔力を封じ込められたことなんてないから、不安でいっぱいな様子だ。


それに加え、乳液の効果で全身滑っている状態だし。


どうしろっていうの、コレ・・・。


って決まっているよね。


さっさと効果が消える乳液なり化粧水なりを作ればいいんだよね。


でも、この効果は乳液によるものだから、やっぱり乳液で効果を打ち消すべきなのだろうか。


私、未だかつて滑る効果の乳液しか作れた試しがないんだけど。


『マユさん。今どこにいますか?』


プーちゃんをどうしようかと考えていたら、マコトさんからの念話が届いた。


「王都の門のところにいます。プーちゃんが魔力を封じ込められてしまって、自力で動けない状態なんです。」


『ふぅ。わかりました。今行きます。まったくパールバティーは・・・。』


プーちゃんが魔力を封じ込められてしまったことを告げると、マコトさんが来てくれるという。


よかった。


マコトさんなら、シロとクロの力を借りて転移することができるから、プーちゃんも回収可能だね。


ほどなくして、マコトさんがシロとクロの力を借りて転移してきた。


「まったく、青竜ともあろうお方が、どうして魔力なんて封じられちゃうんですか・・・。」


『むっ!マコトのせいでもあるぞ!マコトの魔道具を使ったと言っていたのだからなっ!』


マコトさんが呆れたように呟けば、プーちゃんが反論する。


って、マコトさんの魔道具がかかわっていたんですか・・・。


人のこと言えないけど、マコトさんもだいぶ酷い魔道具を作るなぁ。


「はははっ。若気の至りだよ。」


「マコトさん、解除するにはどうしたら?」


「んー。解除の方法までは考えていなかったんだよねぇ。」


顎に手をあてて、考えこんでしまうマコトさん。


プーちゃんはその言葉にガックシと項垂れた。


「魔道具作るときは効果が解除できることを確認してから作ってくださいよ!それか、解除できないんだったら流通させないでくださいーーーっ!!」


私の叫び声が辺りに響き渡った。


『人のこと言えぬと思うが・・・。乳液の効果の解除・・・。』


プーちゃんがぼそっと何か言ったような気がするけど、よく聞こえなかった。


 


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