第48話

畑に精霊の力を使うなんて思い付きもしなかった。まさに目から鱗です。

でも、土の精霊ってどこにいるのだろうか。

火の精霊はピーちゃんだし、水の精霊はスーちゃんがいる。

でも土の精霊には会ったことがない。


「ケララは土の精霊に会ったことがあるの?」


「ええ。うちの農園で手伝ってもらってるの。でも、精霊だから気まぐれだけどね。うちの農園を手伝ってくれてる精霊に声をかけてみようか?」


「お願いします。」


ケララの提案に乗って土の精霊を紹介してもらうことにした。

土の精霊の、知り合いもいないしね。

まさに渡りに船である。


「でも、精霊は気まぐれだからね。思ったとおりに作業してくれないこともあるから、覚えておいてね。」


「わかった。」


「じゃあ、今から呼ぶね。」


「え?」


ケララ今から呼ぶって言った?

今すぐに来るってこと?

それは助かるけれども、ケララのとこの農園でお手伝いしている最中じゃないの?

迷惑にならないのかしら。


「お手伝いの最中じゃないの?大丈夫なの?」


「大丈夫よ!あの子きっと今頃作業に飽きて寝てるだろうから。ケケラおいでー。」


ケケラ………。土の精霊の名前はどうやらケケラというらしい。ケララにケケラ。ややこしいことこの上ない名前だ。


『なぁにぃ~。せっかく寝てたのにぃ~。』


寝ぼけ眼を擦りながら、人の形をしている精霊が姿を現した。

茶色のショートヘアーに、よく焼けた小麦色の肌をしている。

性別はよくわからない。

女の子にも男の子にも見える容姿をしている。


「このひまわりを鉢に植え替えたいんだって。手伝ってくれる?」


『いいよぉ~。』


ケケラは元気にそう答えてひまわりを見て目をまんまるに見開いた。

そして、ピューンッという音がするんじゃないかと思われるほど素早くケケラの背中にしがみつくようにして隠れた。


「どうしたの?」


「うーん。どうしたのかな。ケララの様子がいつもと違うわ。」


ケケラの様子に目を丸くするケララと私。確かに普通のひまわりじゃないんだけどね。でも、ケララの背に隠れるほど驚くものでもないと思うんだけど………。


『無理っ!偉大なる青竜様が育てたひまわりを植え替えるなんて出来ませんっ!!』


「へ?」


偉大なる青竜ってプーちゃんのこと?プーちゃんってそんなに恐れられてるの?

いやでも、ひまわりを植え替えてもプーちゃんなにも言わないと思うんだけどなぁ。トマトをいじったら怒るだろうけど。


「せ、青竜!?このひまわりを青竜が育てたの!!」


「え、あ、うん。そう。プーちゃんがね育てたの。」


あれ?ケララまで驚いている。うちに来たときに驚いたのはプーちゃんの涙がひまわりに使われているってことに気づいて驚いたと思ってたんだけど、違うの?


「ご、ごめんなさい。私たちには荷が重いわ。」


プルプルとケララが震えながら頭を下げている。

プーちゃんってそんなに恐れられてるの?


「あれ?でもピーちゃんはプーちゃんとよくじゃれあってるんだけどなぁ。精霊の種類によっても違うの?」


『ピーちゃん?』


ケケラがケララの背中から顔だけ出して、首を傾げている。うん、かわいい。


「うん。火の精霊のピーちゃん。」


『火の精霊でも僕達下級精霊だったら青竜様とじゃれあうなんてそんな………。』


『あ?呼んだか?』


噂をすればなんとやら、ピーちゃんがパッと何もなかったはずの空中に現れた。

その瞬間、またしてもケケラがケララの背中にバッと隠れた。

あれ?火の精霊と土の精霊って相性が悪かったりするのかな?


『だ、だだだだだ大精霊様っ!!』

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