第21話

 


今日もいいお天気である。

マーニャたちはお外で鶏さんとヒヨコさんと一緒に遊んでいる。

プーちゃんはトマトを鷲づかみにして、ピーちゃんと競い合うように食べている。

焼きトマト美味しいとか言っていたけれども生で食べているのを見ると、焼くのが面倒だったのだろうか。


「なぁんか、平和だなぁ~。」


窓から外の景色をみながら、のんびりと朝食を口に運ぶ。


「マユいるか!!」


ドンドンドンとドアのノックする音がする。

裕太の所為で平和な空気も一瞬にして壊れてしまった。

なぜ、昨日の今日で来るんだろう。

嫌な予感がするし、居留守を使おうかなぁ。


うん。プーちゃんが分けてくれたトマトが美味しい。

1個100万ニャールドはするであろうトマトを口に運ぶ。

甘くて瑞々しい美味しさが口の中いっぱいに広がった。


ドンドンドンッ


「マユ、いるんだろう!!」


木でできたドアが壊れてしまいそうなほど強く叩かれる。

裕太を無視してトマトの美味しさを噛み締めていたのに邪魔をされた。

裕太ったら何をそんなに必死になってドアを叩いているのだろうか。

嫌だなぁ~と思いながら窓から外を伺う。

すると、裕太とばっちり目が合ってしまった。

今度は裕太が窓をドンドンと叩いてくる。

これでは、窓が割れてしまうではないか。

私は嫌々立ち上がるとドアを開けた。

というか、プーちゃんは何をしているんだ。ってトマトをめぐってピーちゃんと争奪戦を繰り広げていた。

恐る恐るドア越しに裕太に話しかける。


「・・・なに?こんな朝っぱらから。」


どうしても感情の篭らない冷たい声が出てしまう。


「マユのところで働かせてくれ!トマトを収穫するのを手伝ってやるよ。1個収穫で10万ニャールドでどうだ?」


「はあ!?」


なぜいきなりそんな話がでてくる。

なぜ婚約破棄された相手を雇わなければならないのだ。しかも、トマト1個の収穫で10万ニャールドってどういうことだろう。


「トマト1個100万ニャールドなんだろう?1個売値の1割の10万ニャールド収穫してやるよ。」


全くもってふざけるなという話である。

トマト1個収穫するだけで10万ニャールド払うってどういうことよ。

って、そもそもトマトを売る気なんてないし。

むしろトマトを売ることになったらプーちゃんとピーちゃんが黙っていないだろう。


「必要ないから帰ってください。」


「どうしてだよ!?手伝ってやるって言ってるじゃん。お金を独り占めしたいのか!!」


ドアの外で裕太が怒鳴り声を上げている。

それに気づいたのか、マーニャたちが裕太に向かってかけてきた。


「うわっ!!ちょ・・・やめっ・・・。」


マーニャたちの爪が炸裂する。

裕太の右足にマーニャが飛びつき爪を立て、左足にボーニャが飛びつき爪を立てている。

両足を猫の爪で攻撃されたことにより、裕太は地面に転がった。

そこをクーニャが裕太の顔面目掛けて猫パンチを繰り出した。


「ぎゃぁああああああああ!!!」


裕太の悲鳴が当たりに響き渡る。


『どうしたのだ?』


『なんかあったのか?』


そこに遅れてプーちゃんとピーちゃんがやってきた。


「裕太がトマト売るって言ってるの。」


『なにっ!!』


『それは許せないっ!!』


「うぎゃぁあああああああ!!!」


トマトを売ると聞いて、プーちゃんとピーちゃんが裕太に向かって怒りを露にした。

プーちゃんはトマトが絡むとものすごい執念を持つが、ピーちゃんも同類だったのか。

プーちゃんとピーちゃんもマーニャたちに加勢し、裕太はさっそくボロボロのヨレヨレな状態になった。

むしろ、プーちゃんとピーちゃんが加勢したのに、生きてる裕太ってすごい。

気絶してるけど。

裕太、どうしようかな。

このまま家の前に転がしておくわけにはいかないし。

仕方ない。

裕太の家まで運ぶか。


「プーちゃん、裕太を家まで送ってくから裕太を背負って一緒に来てくれる?」


『いいだろう。トマトを狙う奴はマユの敷地に入れないように呪いもかけておくとしよう。』


裕太を運ぶことができるのはこの中ではプーちゃんくらいしかいない。

プーちゃんにお願いすると二つ返事で応じてくれた。しかも裕太が敷地内に入らないように呪いもかけてくれるという。

プーちゃんったらなんて使える子なんでしょう。


「じゃあちょっと行ってくるね。」


『『いってらっしゃーい。』』


『早く帰ってきてねー。』


『俺もいくっ!』


マーニャたちに向かって挨拶をするとマーニャたちが答えてくれた。

って、ピーちゃんはついてきてくれるという。なんと心強いことだろうか。

ピーちゃんがついてきて困ることはないので、ありがたくついてきてもらうことにした。

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