第14話

 

リュリュさんに背負われた裕太は目を覚ましたようで、ロープでぐるぐる巻きにされているために身動きが取れないことに気づき焦っているようだ。

なんだか小さな声でぶつぶつと呟いているようだが、ここからは聞こえない。


「・・・裕太ってばなんて言っているんだろう。」


聞こえないだけに気になってしまう。

すると、プーちゃんがズイッと顔を突き出してきた。


『我があやつの声を届けてやろう。』


すると、裕太の懐かしくも二度と聞きたくなかった声が聞こえてきた。

プーちゃんったらこんなことも出来たのか。と関心してしまう。

なんでも出来ちゃうなプーちゃん。

プーちゃんに頼んだら世界征服も出来ちゃったりなんかして。まあ、そんなことはお願いしないけれども。


「ここはどこだっ!僕を帰してくれ!」


「帰してやりたいけど帰す方法を残念ながら知らないんだよ。このまま村長のところまで来てくれないかな。」


リュリュさんが裕太の相手をしている。

ザックさんは優花に絡まれてそれどころじゃないらしい。

リュリュさんってば相手が男だからかそっけない対応だ。


「いやだ!僕は帰るんだっ!」


「いや、だから帰す方法なんて知らないんだよ。」


「僕を帰してくれ。僕は帰るんだ。」


うん。さっきからずっと同じことを言っている。

裕太ってば現状を理解することを拒否して帰りたいとだけうったえている。

帰りたいと願って帰ることが出来たらどんなに楽なことだろうか。

まあ、ね。不可抗力でこちらの世界に連れてこられたのはわかるけど、もうちょっと周りを見て現状を理解把握しないと生き残れないのに。


「・・・ところであっちの女はお前の知り合いなのか?ユウカと名乗っていたけれど。」


いい加減裕太からの帰りたいコールにうんざりしたのか、リュリュさんが話しをすりかえた。

裕太は優花さんの顔をジッと見つめてから一言。


「知らない。」


とだけ呟いた。

その顔は嘘をついているように見えなかった。


「一緒にここの畑の作物を盗もうとしてただろう?知り合いじゃないのか?」


リュリュさんが裕太に確認をする。

裕太は少し考えるそぶりをした。


「一緒に来たのは優花という女性だ。」


「いや、だから彼女はユウカと名乗っていた。」


またしても話が噛み合わない。


「優花はあんな貧相な体つきじゃない。真由は貧相だったけど。」


「・・・をい。」


いけない。思わず声が漏れてしまった。

距離が離れているからこちらの声があちらに届かないからよかったものの。あぶないあぶない。


「あら。その子いい体つきしてたわよ。本来の姿を取り戻すまでは、ね。」


「まさかっ!豊胸手術してたのかっ!騙されたっ!って顔も全然違うっ!優花はもっとずっと可愛い顔をしていた。こんなのっぺらとした顔じゃないっ!いくら僕でも顔は判別できるからな!」


「ええ。さっきまで可愛い顔をしていたわよ。本来の顔を取り戻したみたいよ?」


マリアが冷静に告げる。

それを聞いて愕然とした顔をする裕太。

マリアの言葉を聴いていた優花も愕然としている。

そうしてしきりに「かがみ・・・かがみどこ。」と鏡を探している。

そうして、鞄の中からコンパクトを探し当てた優花は鏡に映る自分の顔を見て「キャーッ。なんでなんで整形したのにっ!」という悲鳴を上げて、意識を失ってしまった。

その優花のセリフを聞いて、裕太は愕然としている。


「顔も整形していたのか。そんな・・・僕の子を妊娠していなかっただけでなく、顔も嘘をつかれていたのか・・・。」


「はあ!?」


裕太が漏らした言葉に思わず過剰反応してしまう。

だって、優花さんが裕太の子を妊娠したからって婚約破棄されたんだし。妊娠していなかったってどういうことかしら。

もうここで見ているだけなんて我慢ならない。


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