第13話

 


「・・・まあ、ザックさんやリュリュさんが誘惑されてしまっても問題だし、様子を見に行きますか・・・。あ、マユはここにいてね。マユが来ると話が拗れる可能性があるし。」


 


「大丈夫なの?」


 


マリアはザックさんたちの元に向かうらしい。


私も一緒に行こうと思えば、却下された。


なんでも、男の人の方が目を覚まして、私に気づくとやっかいだということである。


別に私はもう、それほど気にしてないんだけどな。


それでも、危なくなったら私もそちらに行くと伝えた。


非力な私が加勢したところで何も変わらないかもしれないが。むしろ、悪化したりして。


マリアは軽く手を振って優花さんの元に歩いていった。その後ろをマーニャがピョンピョンと飛び跳ねるようにしてついて行く。


私は、ドアの隙間からこっそりと優花さんの姿を視界にいれる。優花さんはザックさんの手をぎゅっと掴んでいる。

そこに、マリアが近づいていく。


「あ・・・あれ?」


マリアが近づくと、ザックさんが優花さんをひっぺがした。その勢いで、また優花さんが地面に倒れこむ。


「誘惑がザックさんには効いていない?」


優花さんには誘惑というスキルがあった。それをザックさんに使ったのかと思ったのだけれども、そうじゃない?

ザックさんのマリアへの愛の力?

優花さんは懲りもせず今度はリュリュさんの方に手を差し出した。

が。リュリュさんに差し出した手を思いっきりはたかれていた。

あれれ?リュリュさんにも優花さんの誘惑が効いていない?

なんでだろう。

その後を見ていても、リュリュさんもザックさんも優花さんの誘惑に負けることはなかった。


『マユ、安心して。まだ彼女の誘惑のレベルが低いから成功率が低いみたいよ。』


急にマリアからの念話が届いた。どうやら優花さんの誘惑のレベルが低く誘惑に失敗しているようだ。


『魅了スキルを持っていなくてよかったわ。』


「魅了スキル?」


マリアが言う魅了スキルとはなんなんだろうか。誘惑スキルとは違うのだろうか。


『誘惑スキルは異性にしか効かないけれど、魅了スキルは性別関係なく効くわ。しかも、誘惑スキルよりも効果が強いの。』


マリアが魅了スキルについて説明してくれる。確かにマリアの言う通り優花さんが魅了スキルを持っていなくてよかった。

魅了スキルを持っていたら本当に手に負えなかっただろう。

よかった。

その一言に尽きる。


「う~ん・・・。」


騒いでいる優花さんの隣で、リュリュさんに抱えあげられた裕太が目を覚ましたのか、うなり声をあげているのが聞こえてきた。

わたしは、裕太の視線から隠れるように、ドアの陰に隠れる。


 


 


 


 


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