第96話
『マユ、安易に女王様に会うことなんてないから大丈夫だなんて思わないでね。会うつもりでいた方がいざという時に慌てなくてすむわよ?』
『ぐっ・・・。』
マリアは私の考えなんかお見通しみたいだ。
って、マリアのスキルって人の考えていることが分かるんだっけ?
確か聴覚スキルが・・・。
って、あれって離れていても有効なの!?
『マユ、何を考えているかわからないけれど、マユの考えていることなんてちょっと考えればわかるわよ?だって、マユってば意外と単純だもの。』
クスクスと笑いながら言うマリア。
っていうか今、私のことを単純って・・・単純って言った。
『ひとまず置いておいて、女王様ってどんな人なの?服はやっぱりドレスの方がいいのかしら?』
女王様に謁見するにあたって、やっぱり平服では失礼にあたるだろうか。
キャティーニャ村のような田舎町だと誰かのお古だったり村の誰かの手作りのものが主流だ。王都などの洋品店の服など、田舎までは届かない。というより輸送費を考えるとかなり高価な品となり購入することが難しいのだ。
今着ている服だって、実はマリアのお母さんのお下がりだったりする。
他に手持ちの服はやはりどれも、キャティーニャ村の人たちのお下がりが大半だ。
まあ、化粧水がオークションで思った以上の値段で落札されたので新しく洋服を王都で購入するだけのお金はあるが。
『ドレスとまではいかないまでも上品なワンピースで行った方が間違いないわよ?キャティーニャ村で着ていたような服はもうかなりのお古でしょ?新しいものを買ったらどうかしら?お金がなければ、ザックさんにお金を借りるといいわ。ザックさんはキャティーニャ村一番のお金持ちだから。』
ザックさん。あんな高い化粧水を3本も落札するんだからお金もっているなとは思ったけれども、キャティーニャ村一番のお金持ちだったとは・・・。いったい、キャティーニャ村でどうやってそんなにお金を貯めたんだか気になるところだ。
『お金は大丈夫。化粧水がオークションでそれなりの金額になったから。』
それなりというよりかは、かなりの大金なんだけどね。
『なら、早く服を買いに行って着替えるといいわ。』
『え?』
服を着替える?
すぐに・・・?
普通女王様に謁見するとなったら事前に日程が決まるわけで、まさか今日の今日謁見するなんてことにはならないはず・・・。たぶん。
こういうことっていろいろと手続きを踏んでから謁見するのではないのだろうか。
仮にも女王様なんだし。
『あの方のことだから、こんな面白いことがあるとわかれば最優先で動くわ・・・。』
『それはちょっと、困る・・・。』
『なんで?』
『猫耳が生える化粧水を飲んじゃって・・・。』
『マユ猫耳生えてるの!?見たい!見せて!』
猫耳が生えていると知ったらマリアは食いついてきた。
いや、でも後2日で効果切れるし、キャティーニャ村に帰る頃には猫耳は消えているだろう。
それ以前に、似合わない猫耳姿をキャティーニャ村の人たちに見せたくないし。もちろん、マリアにも見られたくない。似合わないって爆笑されかねないし。
『キャティーニャ村に帰る頃には効果が消えているはずだから・・・ごめんね?』
『むぅ・・・。ザックさんは見たの?』
『うん。見られた。』
私が返事をするとマリアが不機嫌になったように、低いうなり声をあげた。
『ザックさん、許さないわ。マユの猫耳姿を見たなんて。私も見たいのに!』
おおっと。なぜかザックさんに怒りの矛先が向いてしまった。
『だいたいザックさんって私気に入らないのよね。お金ありますアピールがすごくて。王都に行くたびにお土産買ってきてくれるんだけど、どれも高価なものなの。私が買えないような高価なものばかり買ってきて、自分の財力を見せ付けるだなんて、不愉快なのよ。』
『あ、あはははは・・・。』
ザックさんっていつもマリアにお土産買って帰ってたんだ。
それって、マリアに好意があるってことなんじゃないのかな?マリア気づいてないみたいだけど。
全く逆の発想になっているけれども・・・。
『・・・もしかして、ザックさんマユの化粧水オークションで落札した?』
『あ、うん。三種類の化粧水を一本ずつ・・・。』
『・・・。』
あ、やばい。
なんか、さらにマリアを怒らせてしまったような気がする。
沈黙が痛いんだけど。
沈黙が気まずくなってきた頃、沈黙をぶち壊すように、いきなり嵐がやってきた。
「マユさぁ~ん!女王様にぃ~謁見することにぃ~なっちゃいましたぁ~!」
「え?マジで?」
マリアとの会話中に突然、部屋のドアが勢いよく開き、ベアトリクスさんが突進してきた。
って、ドアに鍵かけてなかったっけ?
それにしても、上司に連絡してから女王様の謁見が決まるまでが早すぎる。
まだオークション終了から2時間くらいしか経っていないではないか。
予想以上に早すぎる。
まさか・・・。
「マジですぅ~。女王様がぁ~お城でぇ~お待ちですよぉ~。今からぁ~行きますよぉ~!」
「えっ?」
まさかの今すぐに謁見ですかっ!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます