第95話
ベアトリクスさんから告げられた化粧水の効果にショックを受けた私は、プーちゃんたちと一緒にひとまず宿の部屋に戻ることにした。
化粧水については、ベアトリクスさんが持ち帰って上司にお伺いを立てるとのことだったので、ベアトリクスさんにすべて渡している。
「はぁ~。これから、どうなっちゃうのかなぁ~。」
オークション自体は化粧水だけの出品だったので、午前中で終わった。
食べる気はなくとも、昼食は取った方がいいというザックさんの指示で現在、部屋の中で昼食を取っている。ちなみに今回はザックさんも一緒だ。
事態が事態なだけに、ザックさんに相談に乗ってもらっている。
「猫化してしまう化粧水があれば悪用される恐れもあるからな。猫様ならどこにでも入り放題だし、何をしてたって許されてしまうからな。」
「・・・猫様って権限強いですね。」
「猫様至上主義な国だからな。国民も猫様至上主義だし。」
「………すごいですね。」
猫様至上主義な国だけあって、猫になれれば何をしたって罪に問われないらしい。猫様、なんて偉大なんでしょう。
でも、そんな訳もあって猫化できる化粧水は混乱の元になり得るらしい。
それもそうだよね。
猫であれば何をしてても許されるのであれば、猫化して何をしてても問題ないのである。犯罪いらっしゃーい状態である。
本物の猫様だったらそんな犯罪紛いなことはしないけれども。
「大事にはならないといいが・・・。」
「そうだね。ちょっとマリアに相談してみる。」
ザックさんが神妙な表情で頷いているので、だんだん心配になってくる。不安を払拭するように私はマリアに連絡を取ってみることにした。それに、今までずっとマリアと一緒にいたものだから、マリアと話をしない期間が長いと落ち着かない。
困ったときのマリア様である。
『マリア、久しぶり。今大丈夫?』
気を落ち着けて念話を送る。
『あら、マユ。もう私が恋しくなったのかしら?それとも、またなんかやらかしたの?』
『ぐっ・・・。』
すぐにマリアが答えてくれた。
恋しくはないけれども、なんだかとても懐かしく感じる。
というか、私がマリアに連絡したらなにかやらかしたと思われるなんて心外だ。
まあ、やらかしたんだけどさぁ。
『いや、ちょっとプーちゃんと一緒に化粧水を作ったら、飲むと猫化する化粧水が出来上がってしまいまして・・・。鑑定士さんを通してオークションに出品しようとしたら、鑑定士さんからこれは出品できませんっ!って言われちゃって。今、鑑定士さんが上司にこの化粧水をどうするか確認中です。』
『マユったらなにやってるの!?ってこの場合はプーちゃんもか・・・。』
『うぅ・・・。面目ない。』
あはははは。マリア驚いているよ。ビックリしてるようで声が一段と大きくなった。というか、叫んでるような・・・。
『ねぇ、マリア。猫化する化粧水を作っちゃったら何かお咎めあるかな?』
『あるかもしれないわねぇ。この国において猫様は神にも等しい存在だからねぇ。その猫様になれちゃうんでしょ?でも、この国の女王はアレだからなぁ~。』
『女王様までに話がいっちゃうかもしれないのっ!?』
マリアの口から出てきた「女王」という単語に反応する。
まさか、猫化の化粧水は女王様まで報告が行ってしまうのだろうか。
とんでもないものを作成してしまったという不安と恐怖でガクガクと足が震えてきた。
『まあ、悪いことにはならないと思うわよ。たぶん・・・。でも、きっと女王様とは会うことになるんじゃないかしら・・・?』
マリア・・・。なんだか不穏なこと言わないで。
女王様に会うなんてとても緊張するんだけど。
女王様に会わずに化粧水を取り上げられるくらいで許して欲しいなぁ。
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