第66話

 


ザックさんにも会いに行かなければならないけれども、それよりまずはマーニャたちに会いに行こうか。


その方が近いし。


 


プーちゃんと一緒に宿に入る。


 


「「「「「いらっしゃいませっ!!!」」」」」


 


すると、大勢の従業員さんが出迎えてくれた。


それぞれ、お客が来ると動作を止めて迎え入れるための挨拶をしているようだ。


所作がとても綺麗で揃っており、従業員教育の高さが伺える。


日本でもこんな風に出迎えてくれるような宿ってあんまりなかったよなぁ。


それこそ格式高い旅館とかはこんな感じなのだろうか。


縁がなくて一度も行ったことがないけれども。


玄関にある調度品も一目見て質が良さそうなものばかりであった。


また、煌びやかな中にもしっかりとした品があり交換が持てる。


 


「お勤めご苦労である。我らはマーニャ様たちの連れだ。部屋に案内してもらえるか?」


 


「はい。こちらにございます。」


 


おお!プーちゃんがしっかりとした発言をしている。


いつものプーちゃんと違って頼りになる感じだ。


プーちゃんの問いかけにいち早く対応したのは受付と思われるブースに笑顔で立っていたウサ耳の女性だった。


うう。くりっとしたお目目がとても可愛い女性である。


ウサ耳がとてもよく似合っている。


小柄で華奢なところも、可愛いウサギみたいでとてもグッと来るものがある。


チラリッと隣を歩くプーちゃんを見るが、プーちゃんはこの女性にはあまり興味がないようでごくごく普通の顔をしている。


 


「どうした。マユ殿。我の顔になにかついているか?」


 


「えっ!なんもついてないよ!いや、本当にプーちゃんなのかなぁ~って思っただけ。見た目違いすぎるし。」


 


ジッとプーちゃんを見つめていたら、私の視線を不審に思ったプーちゃんから声をかけられた。


以外とプーちゃんも鋭いものである。


 


「ふむ。マーニャ様たちを真似て泉に飛び込んだからな。あの泉の効果はこの街を出て1時間すると切れてしまうらしい。」


 


「ふぅ~ん。この街にいる間はずっとこのままなの?」


 


「うむ。このままだな。」


 


「そうなんだ・・・。」


 


ということは、マーニャたちと話ができるのもこの街だけといことになる。


なんだか、この街から離れたくないなぁ。


マーニャたちが普段何を思っているかずっと知りたいと思っていたし、この可愛い子たちがおしゃべりしたらもっと可愛いんだろうなって思っていた。


だから、こんな形でその願いが叶ったことは実はとても嬉しかったのである。


でも、猫の姿でニャーニャーしゃべるのも可愛いなとは思うが。


この街から離れるとマーニャたちとも会話ができなくなるので、いっぱい話しておかなきゃと思った。


 


「こちらでございます。」


 


「うむ。ご苦労だった。」


 


「案内、ありがとうございます。」


 


なんと、ウサ耳な女性従業員に案内されたのは最上階の部屋だった。


この最上階には部屋が一つしかなく、とても広い部屋となっている。


どのくらいかっていうと、大体30畳ほどの部屋だろうか。


その大きな部屋には6つのベッドが備え付けられていた。


その他にもいろいろな扉がある。


トイレやお風呂だろうか。


キティーニャ村の自宅にはお風呂がなかったから毎日シャワーだった。


ここでお風呂に入れるとしたらとても嬉しいものである。


 


さて、マーニャたちはどこにいるのだろう。


私は、部屋の中に視線を巡らせる。


 


 


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