第30話


ゴクゴクゴクっとメロンソーダ味の化粧水を一気のみしたプーちゃんは、直後に動きを止めた。


『・・・くっ。』


そうして、苦しげな声をあげて何かに耐えている。それから数秒後・・・。


『・・・・・・・・・げふっ。』


大きなゲップをした。

そうだよね。炭酸を一気飲みしたんだもんね。竜も人間と同じだったんだなぁ。


「プーちゃん・・・?」


大きなゲップをしたプーちゃんはそのままの姿で固まっていた。

プーちゃんもマーニャたちと同じでショックが大きかったのだろうか。

心配そうに、プーちゃんの顔を覗き込む。

すると、キラキラと輝く瞳と目があった。


「あれ?」


『きゅーーーーっ!!!』


突如、プーちゃんが甲高い声をあげて鳴いた。


「きゃっ。」


驚いて 思わず尻餅をついてしまった。マリアも村長さんもプーちゃんの声に驚いたのか、両手で耳を塞いでしゃがみこんでいる。マーニャたちはあれだけ走り回っていたのに、ピタッと動きを止めた。

ぷるぷるぷると震えるプーちゃん。今度はどんな大きな声をだすのだろうか、と身構える。


『我の腹の中で爆発がおこったのだーーーっ!なんなのだこれは!?』


大声でプーちゃんが叫ぶ。うるさい。

爆発だなんて大袈裟な。


『このようなものがあるなんて、なんて恐ろしいのだ。でも、この喉ごしに、この甘さ・・・なんとも・・・なんとも!!癖になるのだっ!!』


おっと。プーちゃんは化粧水(メロンソーダ味)を気に入ったようだ。

ただ、大声で叫ばないでほしい。とてもうるさい。先程からオークションの中継が聞こえないくらいにうるさい。

そろそろそんなに大きな声を出しているとマーニャあたりが何か行動を起こしそうなものだ。チラッとマーニャの姿を視界にいれる。

あれ?先程と違う体勢をしている。

なんだか、腰を低く落としてジィーーーッとプーちゃんを見つめている。

それから、腰を高くあげ、一気にプーちゃんに駆け寄った。


『ピギャーーーっ!!』


マーニャはプーちゃんに飛び付いた。爪を立てながら。

痛かったのだろう。

プーちゃんからは悲鳴があがる。そうして、


『痛いっ!!痛いのだっ!!ぎゃーーーっ!!』


クーニャとボーニャもマーニャの後に続けとばかりに、プーちゃんに飛び付いている。

こちらもやっぱり爪を立てているようで、プーちゃんが悲鳴をあげている。

プーちゃんの悲鳴、うるさい。

猫は大きな音が嫌いだと聞いたことがある。まさに大きな声をあげてしまったプーちゃんはマーニャたちに嫌がられたのだろう。

そして、嫌な大きな声を出したプーちゃんに復讐している・・・のだと思う、たぶん。


「ちがうわ。マユ・・・。あれはね・・・。」


「違うの?」


大きな声をあげたことにマーニャたちが怒っているのではないのだろうか?

でも、マリアは否定してきた。

いったい、なんだというのか。


「あれはね。自分達が飲めなかった化粧水を、プーちゃんが美味しそうに飲んだことが原因だわ。」


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