第72話
村唯一の薬屋とはいったいどういったところなのか。村唯一の調合スキルを持っているソフィアさんとはどういった人なのだろうか。
そんなことを思いながらマリアと一緒に薬屋に向かう。
そこは、村の端に位置していた。
私の住んでいる家からはちょうど対極にあった。私の家から一番遠い位置にその薬屋はあった。
一番遠いとは言っても、小さな村なので歩いて15分もかからないくらいだ。
こじんまりとした清潔な感じのする建物。それが、ソフィアさんの薬屋だった。
「こんにちわ。ソフィアさん」
マリアが可愛らしい黄緑色のドアを開けて中に入っていく。私もその後ろをついていく。
中もとてもこんじまりとしていたが、一面を白で統一されており、とても清潔感がある室内だった。
「あ、いらっしゃいませ・・・」
カウンターの中には大人しそうな少女が座っていた。
少女は一見して黒く見える髪をしているが、光が当たると紫色にも見える不思議な髪の色をしていた。長い髪をひとつに結っている。
「眼鏡。始めてみたわ」
そして一番気になったのは、この世界に来てから初めて眼鏡をつけている人をみたこと。
眼鏡、この世界にもあったんだ・・・。
「あ、そうですね。眼鏡珍しいです。でも、私、これがなきゃ見えなくて。おかしいですか?」
「全然、おかしくないよ。」
「そうですか。よかったぁ」
ソフィアさんは、そう言ってふんわりと微笑んだ。
笑うと可愛いな。ソフィアさん。
「ソフィアさん。錬金釜ある?今日は錬金釜を買いにきたの」
「あ、錬金釜ですか?少々お待ちください」
マリアが聞くとソフィアさんは、そっと立ち上がって奥に消えていった。
「ソフィアさんって大人しくて優しいそうな人ね。それにこの空間とても落ち着くね」
「ソフィアさんは優しすぎるところがあるのよ。騙されないか心配で・・・。ここは、薬草の香りがするから落ち着くよね」
やっぱり見た目通り、ソフィアさんは優しい人なんだ。それにしても、マリアに心配されるほど優しいとは・・・。
「マリアとソフィアさんは同い年?」
ふいに気になったことを尋ねる。見た目は同い年っぽく見えるんだけど、マリアがソフィアさんのこと呼び捨てしてないけら、年が離れてるのかしら?
マリアは苦笑して答えてくれた。
「ソフィアさんはああ見えても35歳だよ。私よりマユの方が年が近いんじゃない?」
「えっ!?」
マリアより私に年齢が近いの!?見えない。まだ10代だって言われても信じられるくらいの見た目なのに。
「すごい綺麗な肌してるよね。もちもちだよね?皺ないよね?嘘だよね?」
「ほんとだよ。薬草とか扱ってるからかなぁ?綺麗だよね。それに結婚もしてるのよ」
「えええっ!?」
し、信じられない。
もう、いろいろと信じられない。
私より年上なのに、マリアと同じくらいお肌が綺麗だとか。恐るべし薬草。
「お待たせしました」
マリアと話していると、ソフィアさんが錬金釜らしきものを持ってやってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます