第18話


「うわぁ・・・」


アンナちゃんが「おいでー」と言うと、店の奥から手袋たちが、こっちに向かって一斉に飛んできた。


思わず、マリアを盾にしてしまった。


「あはははは。マユさんビックリしてるー」


きゃらきゃらと、アンナが笑う。

その手には、大量の手袋が巻き付いている。


「手袋いっぱい来たよ。どれがいい?」


「どれがいいってどんなのがあるの?」


見た目じゃわからないので、アンナちゃんに説明を求める。


「んーとねー、こっちのが手にぴったりと合う手袋で300ニャールド。これが、水に濡れない手袋で500ニャールド。これは、頑丈な手袋、少しぐらいの力じゃ破れない手袋で1000ニャールド。こっちのは、これは、熱さを感じにくい手袋で同じく1000ニャールド。最後にこれは、何を触っても手が汚れない手袋で1000ニャールドだよ」


うーん。

いろんな手袋があるみたいだ。

どれがいいんだろう。


「マユ、迷っているなら頑丈な手袋から、手が汚れない手袋がいいよ?畑仕事って結構手が汚れるから」


「へぇー、そうなんだ。じゃあ、手が汚れない手袋にしようっかな」


「ありがとー」


私は、アンナにお金を払うと手袋を受け取った。見た目は普通の手袋に見えるけど・・・。


「あと、これあげるー。お兄ちゃんがマリアちゃんに買ってきたんだけど、ずぅーと渡せずにいて埃被ってるからあげるー」


いや、あげるって。

お兄さんからマリアに渡す予定のものでしょ。そんなものをマリアがいる目の前で受けとる訳にはいかない。


「それは、お兄さんに聞いてみてからにしようね。もしかしたら、王都からお兄さんが帰ってきてから渡すかもしれないし。そのときに、知らない人の手に渡ってたら嫌だとおもうよ?」


「そうかなー?」


「そうそう」


「そうねぇ。アンナちゃん、それはそっとしまっておきましょうね」


マリアったら、当事者なのにのんびりしている。動じていない。

もしかして、お兄さんの気持ちを前から知っていたのかなぁ。


「じゃあ、これあげる。これはさっきのと違って効果はあまり強くないけど、力が2倍になるっていう魔道具。腕輪になっているから腕につけてね」


「ありがとう」


そう言ってアンナちゃんは私にシルバーのブレスレットを渡してくれた。

見た目は普通のシンプルな ブレスレットに見える。



アンナちゃんからもらった腕輪を何気なく、腕につけてみる。


「わぁっ!」


見た目は何も変わらないけど、なんだか力がみなぎっているような気がする。

なにか、手近なもので試してみたい。

でも、なにもない。

キョロキョロすると、可愛いアンナちゃんの姿が目に入った。

そうだ・・・。


「きゃぁあ♪お姫様だっこなのー♪」


アンナちゃんを抱き上げた。


すごい。


軽々とアンナちゃんを抱き上げることができた。これは、本当に力が2倍になる腕輪なのね。すごいなぁー。

異世界すごい。

魔道具すごいー。


アンナちゃんを抱き上げたまま、クルクルと回る。


「きゃぁ~あ♪」


どうやら、このグルグル楽しいようで、アンナちゃんが歓喜の悲鳴が上がる。

しばらく、アンナちゃんと遊んでると、


「マユ、そろそろお昼の時間だからアンナちゃんを放してあげて」


おっと。

もうそんな時間か。

アンナちゃんをそっと、地面に降ろすと、アンナちゃんが笑顔いっぱいで「ありがとー。またやってねー」と、お礼の言葉をくれた。


「どういたしまして。素敵な腕輪をありがとう。また、遊ぼうね」


「またね。アンナちゃん」


私とマリアはアンナちゃんに手を振ってアンナちゃんと別れた。


「可愛かったなぁ。アンナちゃん・・・」


「まったく、マユははしゃぎすぎよ。でも、アンナちゃんも楽しそうでよかったわ。それに、いい腕輪も手に入ったしね」


「あ、そうそう。この腕輪ポンっとくれちゃったけど、もらっていいような腕輪なの?なんだか力が2倍になるだなんて、すごい腕輪だと思うんだけど・・・」


「大丈夫だと思うよ?そこら辺の雑貨屋で売っているようなものだから」


へー。

力が2倍になるような腕輪ってそんなに手に入りやすいんだ。

便利だと思うんだけどなぁ。


「マユ、ご飯食べていこう♪」


「うん」


今日もお昼はマリアとダンさんの食堂でご飯を食べることにした。

一人じゃないご飯は嬉しいな。


食堂に入り、今日のお勧めというメニューを注文する。

お昼時ということもあり、ちらほらとお客がいるようだ。サラさんが、忙しく注文を聞いたり料理を運んでいる。


「マユ、困っていることはない?」


「あ、そうそう。化粧水とかってこの世界にあるのかな?ええと・・・化粧水ってのは、お肌を整えるための液体なんだけど・・・。」


今朝気になった化粧水について、マリアに聞いてみる。


「ああ!あるよ!でも、王都じゃないとなかなか手に入らないかも。」


「そうなの!?」


化粧水って一般に普及してないんだ。王都でしか売ってないとなると、高価なものなのかなぁ。


「高いの?」


「違うよ。1000ニャールドくらいで買えたりするんだけどね、絶対数が少ないから王都で買い占めにあっちゃってて、なかなか仕入れられないのよ。でも、原価は100ニャールドもないって話よ?」


原価100ニャールドで、販売価額が1000ニャールド!?ぼったくり!?

でも、絶対数が少ないってことは付加価値があるからなのかなぁ。


「絶対数が少ないって、作るのに誰かの許可がいるからとか?」


「ううん。スキルがないと作れないんだけどね。スキル持ちがあんまりいないの。だから、絶対数が少なくなってしまうの。」


ここでも、スキルか。


「美容薬調合ってスキルなんだけどね・・・。」


「どのくらいスキル持ちがいるの?」


「レコンティーニ王国では100人いるかいないかよ。ねぇマユ、化粧水作ってみる?スキルがなくても作れることは作れるの。でも、効果があまり出ないのが難点。でも、つけないよりはつけた方が多少は違うって感じかなぁ。」


自分で作れるんなら作ってみようかな。

効果があまりなくても、気休めでもお肌の曲がり角をとうに過ぎた私には、とても欲しい一品だ。


「作ってみるわ。何が必要なの?」


「基本的には山の湧水と薬草よ。美容薬調合スキルを持っている人はそこに魔力を込めたり、自分なりの秘伝のレシピがあったりするみたいよ?」


山の湧水と薬草か・・・。

どこに行けば手に入るのかな?


「材料集めるなら手伝うよ?あそこに見える山で全て揃えられるから。」


そう言ってマリアは、近くの山を指差した。

30分も歩けばいけるだろう距離だ。

でも、今から行くのは遅いかな?


「もし、お嬢様方、ピンクの卵を持っていないかい?」


突如、話に割り込んでくる人がいた。

ピンクの卵?なにそれ?

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