第6話

保管庫の前で朝食をどうしようか迷っていると、「にゃぁ」という鳴き声とともに、足元にふわりとした感触が。




足元を見ると、マーニャが足にすりよってきていた。




「おはよう。マーニャ。お腹すいたの?」




見上げてくる目が可愛い。


ちょっと首を傾げて催促してくるところが、また可愛く感じる。




保管庫から取り出した餌の1/3を取り出して、器に移す。




「ほら、お食べ」




マーニャの前に器を置くと、ありがとうとばかりに「にゃあ」と鳴いてから食べ始めた。




食べてる姿もまた可愛い。


小さな口でもごもごと口を動かしているところも可愛い。


時々食べるのをやめて、口の回りをベロでペロッと舐めとっているのも可愛い。




猫ってこんなに可愛かったんだ。




じぃーっとマーニャを見ていると、後ろから二つの視線を感じて振り替える。そこには、クーニャとボーニャがいて、じっとこちらを見つめている。




「クーニャ。ボーニャ。おいで、ご飯食べよう」




クーニャとボーニャの分のご飯を器に移して名前を呼ぶと「にゃあ」と声を合わせてトコトコとやってきた。


そして、そのままご飯にかぶりつく。


クーニャはガツガツと。ボーニャはおっとりと。


姉妹猫って言ってたけど、性格が違うのね。


見てると飽きない。




しかし、美味しそうに食べる子たちね。この子たちを見てると私もお腹がすいてきた。


ここにいてもしょうがないから、マリアのところにでも行こうかな。


マリアにご飯を食べられるところを教えてもらおう。


あと、10万ニャールドを支給してくれるって村長が言っていたけど、10万ニャールドはどこにあるんだろう。


それにどんなお金の種類があるのかもわからないから、これもマリアに聞かなければ。




猫様たちが食べ終わるのを待つ。


ご飯を美味しく食べ終わった猫様たちは、思い思いの場所で毛繕いをしたり、水を飲んだりしている。


それにしても、毛繕いしているところを見ると、この子たちは体がすごく柔らかいんだなぁと改めて思う。


すごいなぁ。




お腹がいっぱいになったからなのか、それぞれ寝心地のいい場所を探してねっころがっている。




「今度は私がご飯食べてくるからね。いい子で待っていてね」




猫様たちに声をかけて家をでる。そして、歩いて5分のところにマリアの家がある。




「おはよう。マリア。朝早くからごめんね」




「おはよう。どうしたの?」




マリアの家に行き、声をかけるとマリアがすぐに出てきた。ちょうど食事中だったのか、家の中からは食欲を誘う匂いがしてくる。




「朝食をね。どこか買えたり食べたりするところはないかしら?昨日のうちに買うのを忘れてしまって」




「あら。私としたことが案内をするのを忘れていたわ。ごめんなさい。後で案内してあげるわね。今日はよかったら私の家で食べていって」




「ありがとう」




マリアに誘われて家の中に上がり込み、朝食をいただいた。


マリアの作ってくれたご飯はとても美味しかった。




「美味しい」とマリアに伝えると嬉しそうにマリアが微笑んだ。そして、




「私、料理のスキル持ちなの。Lv99なのよ」




ん?スキルってレベルがあるの?


というかLv99ってカンストしてる?




「Lv99!?すごいね。レベルって最大いくつなの?」




「今知られているのはLv1000まであるってことかな。でも、Lv1000の人はほとんどいないけどね。普通の人はLv100で満足してるから」




「そうなんだ、なんかすごいね」




それからしばらくしてから、マリアに村の中を案内してもらうことになった。




「ここが、村で唯一の食事処兼宿屋よ」




そう言って案内されたのは村の中で一際大きい家だった。


木造だけども、柱に太い木が使用されていてとても頑丈そうだ。


でも大きいといっても、3階立ての建物だ。


2階と3階には10畳ほどの部屋が4つあり、客室になっているらしい。


1階は食堂と経営をしている夫妻の部屋があるとのことだ。




「ここのダンおじさんの作る料理は村で一番美味しいよ。


 なんたって、料理のスキルレベルが300を超えているそうなの。


 一般の人のスキルレベルが50前後だからとてもすごいことなのよ。機会があったら食べてみてね」




ただ、残念なことに食堂は11時から14時、18時から20時までしか開いていないそうだ。


ここで毎朝の食事を食べることはできなそうだ。


朝は自炊するしかないらしい。


自炊苦手なもので、いつもコンビニや近くの喫茶店ですませていたのに。


自炊必須な生活になりそうだ。




「他には食べ物を売っているお店はないの?」




「後はアンおばさんのパン屋さんがあるわ。ここはバウンドケーキが美味しいのよ」




食堂兼宿屋の隣の小さな家がパン屋だった。


こちらは、9時から17時までが営業時間らしい。


パンを作って売るには、製菓スキルが必要になるらしい。


お店を開けるレベルは100~だそうだ。


丁度お店が開店したところだったのでマリアと一緒にお店の中に入ってみた。




「おはようございまーす。アンおばさん。マユさんが昨日からこの村に住み始めたから挨拶にきたの」




「おはよう、マリア。ああ、迷い人のマユさんだね。村長から聞いているよ。私はアン、よろしくね。


 ここでパンやケーキを作って売っているんだ。これは、お近づきにあげる。食べてみて」




「ありがとうございます。美味しそう」




アンさんから菓子パン5つと食パン1斤を受け取った。


焼きたてのようでまだホカホカと暖かく柔らかい。




「食べ切れなかったら保管庫にいれておくといいよ。保管庫の中は時間が進まないから入れておけばいつでも出来立てのパンが食べられるよ。」




「なるほど。保管庫って便利ですね」




「便利だけどあの家の保管庫容量が少ないわね。


確か、10種類までしか入れられなかったと思うわ。ただ猫様たちの餌は別枠、いくつでも入るわ。


お金がたまれば村の魔道具やでもっと大きな保管庫を購入できるから覚えておいてね」




10種類か。


確かに少ないかも。


部屋を探索してみたが冷蔵庫なんてなかったので、痛みが早い食材は漏れなく保管庫に入れる必要がありそうだ。


これは早々にもっと容量を入れられる保管庫を購入した方がよさそうだ。




「今より大きな保管庫を購入するにはいくらくらい必要ですか?」




「そうね。在庫状況や容量によって値段はまちまちだけど新品で3万~かな。


 中古なら1万~売ってるよ。


 ただ、村の魔道具屋さんに在庫がない場合があるから取り寄せになっちゃうかもしれない。


 取り寄せになると納品まで10日前後かかっちゃうかも。」




10万ニャールドを支給してもらっているから購入はできそうな金額だ。


ただ、収入源が今のところ安定していないから、しばらくは何が必要なのかを見極めてから購入しないとすぐに支給された金額がなくなりそうだ。




そういえば、大事なこと忘れていた。


お金の使い方を聞かなきゃいけなかった。


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