第3話

村長の家に連れてこられた私は、間もなく村長に会うことになった。




「マユさんでしたか。ようこそ、キティーニャ村へ。歓迎いたしますぞ。」




白髪の人の良さそうな笑みを浮かべた好好爺がこのキティーニャ村の村長、ハルジオンさんだそうだ。




「このレコンティーニ王国では、姓を持っているのは貴族のみじゃ。それ故、この村では申し訳ないが、マユさんとして過ごしてもらうことになるが良いか?」




「・・・ええ。」




貴族じゃないしね。


それくらい仕方ないか。




「まあ、姓を名乗りたければお金を稼いで貴族になるといい。一定の金額を支払えば貴族になることが可能じゃ。時間はかかるかもしれないがな。それがこの国の掟じゃ。」




「あの、50年前に異世界からの迷い人がいらしたということなんですが、その方は今どこに?」




もしかして、元の世界に帰れるのかしら。


帰れるのであれば、帰りたい。


友達だって元の世界には多少なりともいたし、婚約者はいなくなってしまったけれど。




「おお、懐かしい。マコトのことか?マコトは今、王都にいるはずじゃ。いろいろな魔道具を作成しているとのことだ。王都に行けば会えるかもしれぬぞ。まあ、もう80近いじじいだがな。」




「元の世界に帰ることはできないんでしょうか?」




「ふむ。今だかつて、迷い人が帰ったという話は聞かないのぉ。」




「そうですか。」




帰れないということだろうか。


帰れないと思うと無償に懐かしさを感じる。




「帰りたい気持ちはわかる。やはり産まれた国というのは特別だからの。ゆっくり帰る方法を探すのもよい。帰りたいのであれば、わしも調べてみよう。」




「ありがとうございます。よろしくお願いします。」




まだ、元の世界に帰る気はないが、選択肢はひとつでも多い方がいい。




「元の世界に帰る手だてが見つかるまでは、この世界で暮らしていくことになる。客人として滞在して欲しいという思いはあるが、生憎予算がないのじゃ。申し訳ないが、土地と建物と資金10万ニャールドを用意したので、それを当分の生活に当てて欲しい。土地には畑もついているので、農作物を作ってもよし、にわとりや牛を飼って育てるもよしじゃ。自由に暮らしてくれればよい。」




生活する場所を提供してくれるのはありがたい。それに、10万ニャールドの価値はよくわからないが、当面の資金を提供してくれるのも助かる。


その資金があるうちに仕事を探してお金を稼いで生活をすることになるのかな。




「仕事はどこにいけば紹介してもらえるのでしょうか。」




「王都じゃ。だが、仕事につくためには相応のスキルを持っていないと難しい。ステータスの見方はわかるかね?」




ステータス?


ステータスってゲームとかのあれ?




「ふむ。知らないようじゃな。心の中でステータスが見たいと念じるのじゃ。さすれば、自分のステータスが見れる。ほれ、みてみなさい。」




ステータスが見たいと念じる・・・。


ステータスが見たい。




【名前:マユ


レベル:1


職業:フリーランス


スキル:なし 】




ん?スキルなしじゃん。


これって王都に行っても職業につけない?




「スキルがなしってなっているんですが、スキルって増えたりするんですか?」




「そうじゃ。いろいろと生活することで、スキルは少しずつ増えていく。」




「そうですか。ちなみに、王都までの旅費はどのくらいですか?」




帰るのであれば、マコトさんに会ってみたい。異世界からの迷い人に会って話を聞いてみたい。


それにはまず王都に行かなければ。




「片道約5万ニャールドじゃ。ただ、王都の宿に泊まるとなると一泊2万ニャールドほどかかる。10万ニャールドあれば、王都まで行くことは可能だが、ここに帰ってくるのは難しいだろう。スキルもないようであれば、王都で職について稼ぐことも難しいだろう。」




ふむ。王都に行ってもマコトさんにすぐ会えるかどうかはわからないし。


まずは資金をためて、スキルを身に付けるのが先決かな。




「職につけない私が稼ぐにはどうしたらいいんでしょうか?」




「ふむ。マユさんにお渡しする土地には畑がついている。畑で育てたものを売るのはスキルがなくてもできる。家に転送ボックスがついているから、そこに品物を入れると自動的に資金が増えるだろう。また畑で作物を育てるには多少の期間がかかる。それまでの間は釣竿を渡すので魚でも釣って、転送ボックスにいれてはどうじゃ?あとは、森は恵みの宝庫じゃ。森で採取したものも買い取ってくれるじゃろう。まあ、スキルなしの状態だと多少報酬は減るが、日々暮らしていくのには困らないであろう。」




「ありがとうございます。」




自給自足ってことか。


なるほど。




「あと、この三匹の猫様を授けよう。きっとマユの助けになってくれるであろう。」




にゃんこ!


一度飼ってみたかった。


王都に行くまで、もふもふしながら、スローライフ満喫しますか。










こうして、私のスローライフ生活が幕をあけた。

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