83話 めんどくさがりな生徒と教師

ここは白凰学園高等部の職員室。

夏休みということもあり多くの生徒が部活動や文化祭の準備などに勤しむ中、顧問を務める陸上部がオフである一之瀬水湊とそもそも顧問を務めていない嶋田美鈴は退屈な冷房の聞いた職員室でだらだらと過ごしていた。


「暇だなー……」


「そうだね〜……生徒を持つと変わるもんだね」


「つかさ、美鈴は来なくても良いんじゃないの?別に部活の顧問やってるわけじゃないしさ。私は養護教諭だから来ないといけないけど」


「まぁな。けど授業の準備だとかそう言うのもあるしな。2学期に入ってから準備に追われるとかが無いようにしたい。それに授業の質も上げる必要があるだろ?」


どうやら今の授業には満足していないらしい。時々保健室に来た生徒に授業どう?とかは聞くが、その中でも美鈴は高評価なんだけどね。ただ気になったことと言えば1年3組だったかな……美鈴の担当クラスは。そこのクラスみんな美鈴ちゃんって呼んでたことかな。


☆☆☆


「美鈴、あんた生徒に舐められてるとか無いよね?」


「はっは!……どっからが舐められてるラインなんだろうな……」


「舐められてんのね……」


「いや、どうなんだろうな。まぁ少し敬語を使う生徒がほとんどいなかったり、私のことを『美鈴ちゃん』なんてふざけた呼び方をするぐらいだぞ?良い生徒達だ」


「まぁ……美鈴が良いと言うんなら良いんじゃない?私からは何とも言えないしね。それに拒絶もしないんだから美鈴もある程度納得……はしてないだろうけど問題は無いんでしょ?」


「まぁな。楽しくやらしてもらってるよ。舐められてるとしか思えんがな。けどあいつらがそうしたいならもうそれで良い。私は教師だ。生徒がやりやすい方を遵守するよ。ま、あくまで常識の範疇だがな」


さすがに授業中にスマホをいじる奴を許すつもりは無いし、授業の妨害をするのなら容赦はしない。いや暴力を振るったりだとかそんなことは断じてしないが、きっちりと「指導」はさせてもらう。


「でも京香、あいつら可愛いだろ?クソ生意気な生徒達だけどな。けど私はそのクソ生意気な生徒達を気に入ってるらしいぞ」


「あんた楽しそうだもんねぇ。水湊もそう思う?」


「うん!なんか今年に入ってから美鈴が楽しそうだなーって思ってたんだよ!でもそっかぁ……そんなに可愛い生徒達なんだ」


「あぁ。2学期も楽しみだ」


3人で笑い合う。こいつらも今の私には無くてはならない奴らだ。


「じゃあ私は帰ろっかな。今日は特にやることも無いしね。美鈴は?」


「煙草吸って授業の準備したら帰るかな。先帰ってていいぞ」


「……なら私も授業準備しようかな。美鈴と一緒に帰る!」


ぎゅーっと抱きついてくる。おいやめろ暑い暑い。……つかこいつまた胸デカくなってないか?おいざけんなよ神。私の胸も大きくしろよ。


「暑い。あと胸押し付けんな」


「あー、いじわるー」


「何とでも言え。これに関しては水湊が悪い。私は悪くない。OK?」


「全然OKじゃない!ね〜美鈴〜!」


「あー、うっせえ!帰るから!帰るから胸押し付けんな抱きつくな!マジで暑いから!」


「ふふっ、やった!」


「美鈴……あんた大変だね」


「ちっ!」


☆☆☆


「うーん……飽きた」


そもそも家に1人だ。これじゃ一人暮らししてるのと変わらない。いや、そもそも俺が勝手に帰ってきただけであって両親はいつも通り仕事だ。

それにしても暇だ。夏休みって本当に何もやることないんだよなぁ。学園は面倒だが色々イベントがある分楽しいとは思えるし。


「ふあ……ねみ。寝るか」


どうせ起きててもやる事ないしまぁ良いだろう。今日やる事は特にないしな。

そうして俺は眠りについた……。

が、何故か目が覚めてしまった。別に何か聞こえたわけじゃない。何かを思い出した訳でもない。寝付けないわけでもなく、何故か急に目が覚めてしまったのだ。


「寝たいんだけどなぁ」


ゲームをするのも良いが、生憎今はシャケをシバキ回すバイトはやっていないのだ。ふざけんな年中働け。

バトルに潜っても良いのだが如何せんシャケをしばいてばかりなのでロクに活躍出来る気がしない。A級戦犯かましてネットに晒されるのが関の山。

けど……少しなら……そう、俺でも1戦くらいなら良いだろう。イカではないがシャケをシバキ回すのには慣れている。……行ける!

意気揚々とオンラインバトルの扉を開く。

……とは言っても一応ランク10までは上げているのだが。ただそれ以降はシャケをシバキ回すプロと化していなのでかなり久しぶりだ。


「やばい。何の武器が良いとか全然分からない」


バイトのプロなので全ての武器を一応は使えるがどのルールにどの武器が向いてるかどうかは分からない。いやまぁそもそもレギュラーマッチで慣れるべきなのだろうが、何故か俺はガチの方に潜ろうとしているのだ。頭が悪いことこの上ない。


「とりあえず……これにするか」


まぁ間違いはないだろう。初期武器だし。古来より困ったら初期武器を使えという言葉もあるしな。俺自身初耳だが。んな言葉あるわけねえだろ。

とは言えこの武器。原点にして頂点と言われるほどには強いらしい。と言うわけで使ってみよう。



そうして俺は一日のほとんどをこのゲームに費やす事になる。バトル普通に面白かったな……。

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