55話 意外と凶暴らしいぞ

「レッサーパンダ」


「私の部屋にも可愛いもふもふのがいるよ!」


のそのそと歩くレッサーパンダを見ながら言う。ぬいぐるみで思い出したが、部屋はどうなってんだろうな。ちゃんと綺麗な状態を保てているのだろうか。


「あんな見た目して意外と凶暴らしいぞ」


「けれど草食性だからね。人に対して牙を向けることはないと思うわ。可愛いわね……」


玲は写真を撮っているし、瑠璃はあまりの可愛さに立ったまま昇天しそうだ。


「ほら、瑠璃。戻ってきたまえ」


頬をふにっとすると瑠璃の魂がすぅっと戻ってきたように復活する。女子3人の方が人目を惹きつけているので動物達は涙目だ。


「写真撮るかい?みんなでね」


「良いね。誰かに頼む?」


「そうだねぇ……すみません。写真撮ってもらってもよろしいですか?」


おう普段もその態度ですごした方が良いんじゃないか?まぁいつもの態度でも既に大人気なのだが。むしろ急に変わったらそれこそ気持ち悪い。

快く引き受けてくれるお兄さん。良い人だなー。


「ほら唯。真ん中入れ」


「えへへ〜真尋の隣〜」


「可愛い……」


「涼風さん……」


「わ、私も唯さんの隣です!」


前に女子3人が並び俺と玲が後ろ。そして後方からはレッサーパンダが覗いてる。

シャッター音がして「撮れましたよ」の声。その写真を確認する。


「良い写真!」


「本当にありがとうございます」


ぺこりと礼をする真尋。それにつられて俺達も一礼。


「思い出になるねぇこれ」


☆☆☆


「腹減った」


朝そこまで食べていないので腹が減るのが早い。早く回りたかったのもあって軽い食事で済ませていたし。


「まぁ時間もちょうど良いくらいだしご飯にしよっか。適当にファミレスとかにするかい?ここ再入場出来るらしいし」


まぁここら辺にしかない店行ってハズレだったら台無しだからな。面白味という面ではかけてしまうが、1番安定しているのはファミレスだろう。


「玲、何か食べたいものとかあるか?」


「うーん……ラーメンとか?」


「ラーメン……私は構わないわよ。最近食べてなかったし」


唯と瑠璃も良い反応を示す。俺は食えれば良いし、ついて行くだけだ。

10分ほど歩いてラーメン屋を見つける。しっかりと検索して中々評価が高いところだ。早々ハズレなんてないだろ。


「こうして店でラーメン食うのは久々だな」


「まぁ学食とか寮食堂で食べれるからね。近くにお店も無いし」


「コンビニってやっぱ最高なんだなって思ったわ」


大抵なんでも売ってるし、普通に美味いし。まぁコンビニよりかはスーパーに寄ることの方が多いんだが。自炊最高。


「寮の食事多いんだよねぇ……もう少し減らして欲しい」


「少盛があるじゃないか。まぁ私も並盛で十分なのだけれどね」


「……少盛あれ多くない?」


「どんだけ少食なのさ……」


中等部の時に少盛を1回食べたが確かにあれは少ない。と言うか唯に関してはあれだけたべるのに並盛で十分は嘘だと思ってる。絶対大盛にしてるぞ。


「瑠璃は結構食べるもんな」


「私ですか?まぁ食べますけど。並盛じゃ少し足りないのでサイドで何かしら足してます。玉子焼きとか」


瑠璃曰くダルそうに食堂の端っこに座ってる美鈴ちゃんの方が食べるらしいが。そのくせあの細身だ。心底女性にとっては羨ましいだろう。


「失礼します」


ラーメンが運ばれてくる。俺が頼んだのは豚骨醤油。なぜか知らないけど最近これが美味い。カップ麺もこればっかだし、袋麺もこればっか。何かにとりつかれてる。


「お先にいただきます」


1口食べる。うっま。

勢いでどんどん食べ進める。いや美味いなこれ。ぜひ神奈川に移転して欲しい。そして出来れば横浜市内でお願いしたい。


「千葉市民は幸せもんだな」


「感想それでいいのかい?」


馬鹿言え。最高級の褒め言葉だろ。料理ならミシュラン三つ星付いても良いレベルの素晴らしい感想を言った自信がある。


「何が美味いとかは無いんだけどな。まぁそれが1番美味いと思ってる」


恋人同士で「私のどこが好き?」と聞かれて反応に困るのと同じ感じ。好きだから感想なんて好きしか浮かんでこないだろ。

偉そうに言ってるけど交際経験は無い。クソが。

その後も勢いで食べ進める。唯達のラーメンも運ばれてくる。みんなの評価も中々良さそうだ。うん普通に美味いもんな。

気付いたら麺はなくなり残るはスープのみ。それも一気に飲み干す。


「ごちそうさま」

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