43話 自習時間

自習って始める前、その直後はめちゃくちゃ面白いのだが、徐々に他クラスも授業をやってる事を意識し始めて静かになっていく。

ただこのクラスにはあまり関係が無いようで、そこまでうるさくはないが会話をしている生徒がたくさん見られる。

それに関しては俺も例外じゃない。まぁ会話か?と言われると怪しいのだが。それは今俺が大絶賛お説教中だからだ。


「まったく……そりゃいくら君の身が危ないとは言えあれは傷付いたよ。それに授業中に送ってくるから私怒られちゃったじゃないか」


「それに関しては申し訳ございません」


だってこれ以上痛いの嫌だし。ただそれも分かっているのか、そこまで本気で怒ってるわけではなかった。どちらかと言えば先程耐えてた怒りの方が上だと思う。


「けど本当に何なのよあいつ……。私としてはもう2度と戻ってこないで欲しいのだけど」


「気が合うな。俺もだ」


いやまぁ殴られたら誰でもそう思うだろ。だって痛いし。戻ってきたらまたやられそうで怖いし。

まぁ更生してくれることを願うのみだ。とは言え俺や唯には2度と関わらないでほしいが。


☆☆☆


「なぁ葵。これどういう事だ?」


「ん?あぁそれは……」


しかし葵は人気だねぇ。まぁこういう自習時間って言うのは自習時間なのに比較的みんな自由に過ごすものだけれど。

葵は勉強も出来るから教えを乞う人もいるし、バカ騒ぎをしなければ注意をするようなタイプじゃないからね。


「皐月の脳と俺の脳を取り替えてぇわ……」


「別に地頭が良いわけじゃないから寧ろ苦労すると思うけどな……。勉強してるとこあんまり見ないのに中堅な方が羨ましい」


あぁ確かに。葵って何度も何度も繰り返して覚えるタイプだからなぁ。とは言っても予習復習は欠かさないから授業について行けないわけじゃないけど。


「ふふっ、唯ったら。葵のこと見すぎよ」


「わっ、こ、声が大きいよ……気付かれちゃうじゃないか……」


確かに見すぎだとは思ったけど……。正面から言われると恥ずかしい。

そんな悪い真尋にはおしおきが必要なのでペチっと頬を叩く。やっぱり真尋のほっぺ柔らかいなぁ。むにむにしよっと。


「唯〜、これ説明してやってくれ。俺には分からん」


「お楽しみの途中にすみません……」


「それはね〜……これにこれを代入して……」


なんかさ。葵があまり理解出来てないものをこうやって人に教えるのって楽しいよね。

葵も真剣に説明を聞いて理解しようとしてる。可愛いなぁ。


「で、これで完成。これは数学全体2共通してるけど、公式さえ覚えればそこまで難しくはないはずさ。頑張ってくれたまえ」


「うーん……つまり、これをこうして……」


「あ、葵……」


「し、仕方ないだろ……。頭の出来が違うんだ。何回もやって理解するしかない……」


「葵は基本問題ならスラスラ解くのにねぇ。応用になると急に出来なくなるのはどうしてなんだい……」


本当に……なんで授業とかだと戸惑ってるのに、本番になったら高得点を取れるのだろうね。あ、ちなみに葵は現在3回連続で数学満点を取ってるんだよ?


☆☆☆


「ま、頑張りたまえ。なんなら勉強会でもするかい?葵の家で」


「誘ってるのに会場は俺の家かよ……。まぁ良いけどさ」


複数人が来た時ようにダイニングテーブルは5人まで使えるやつだし、椅子も5つある。寮の部屋だとそういう訳にもいかないからなぁ。


「唯が来るなら真尋達も来るんだろ?一応土日両方開けとくから」


「へぇ……そうなのかい。それなら」


真尋の耳打ちをする唯。……あいつ何か企んでない?変な事はやめてね?寮と違ってやらかしたら追い出されるから。割と本気で。


「良いわねそれ。玲と瑠璃にも伝えておくわ」


「ふふっ、じゃあ葵。週末、て言うか明日だけど。一緒に勉強頑張ろうね!」


それ以上に俺は唯が何を企んでいるのかが気になって仕方がないんだけどな。

ま、いいや。なるようになれ。

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