学年一の美少女幼馴染がアホの子で困ってます
神郷真
1年生篇
1話 新学期は平和に①
春休みも終わり新学期を迎える。冬の厳しい寒さも和らぎ、新たな出会いが始まるであろう4月。
「ふぁ……眠い」
それはこの春から一人暮らしを始めた俺も例外ではない。眠い目を擦りながらカーテンを開けると眩しい光が目に差し込む。
今日から学校かぁ……。
別に学校が嫌とか、嫌いな奴が居るとかではないが面倒という気持ちがある。新学期、ついでに言うと高等部進学後という点があるがその思いは変わらない。
理由としては中等部の9割9分は外部進学などせずに進学するので代わり映えがしないからだ。もちろん高等部なので外部からの入学者も数名いるだろうが結局は昨年度までと同じような顔ぶれが並ぶ。
文句を言っても仕方が無いので準備を始める。
☆☆☆
「さて……と」
入学式……という名目なのでそれほどの荷物はいらないだろう。クローゼットからナップザックを取り出し、クリアファイルを入れる。後は……あぁ課題だ。昨日答え見て急いで終わらしたやつ。学校の方からは「自分の力で終わらせろよ〜」と言われたが問題は無いだろう。バレなきゃ良い。
テレビをつけるとニュースがやっていた。まぁ別に興味があるとかそういうのじゃないんだが。かと言ってこの時間帯に面白い番組がやってるか?と聞かれれば困るのでこれしか見るものがない。
だがその中に俺の興味を引くものがあった。思わず目を見開き、食い入るようにテレビに近づいた。
「これ……もしかしなくても俺の住んでるマンションだよな……」
普段は事件などに興味を示すことは無い。大体の人がそうだと思うし、それは俺も例外じゃない。
だが「自分の住んでいるマンションでの殺人事件」となれば嫌でも気にしてしまう。
ベランダから外を見渡すとたくさんの報道陣、警察の方々が居た。下ではリポーターが近隣住民にインタビューを行っている。その様子がテレビにも映っており不思議な感覚になった。
「新学期早々怖いことが起きるなぁ……」
詳しいことはまだ分からないが、恐らく強盗目的では無いかと報じられている。
つまり自分が狙われる可能性が無いわけでもないということだ。ぞっと背中が凍る。
その感覚を誤魔化すように俺は家を出た。
☆☆☆
正面玄関から出るのはやめておいた。時間的には余裕があるがインタビューなんて絶対に嫌だ。多少遠回りにはなるが裏玄関から出る方が良いだろう。
無事に報道陣が集まっている場所を抜ける。ほっと息をつき改めてマンションを見る。事件現場の部屋にはブルーシートが被せられ、自分の部屋と案外近いことに尚更恐怖を感じる。
「……寮に住んどきゃ良かったかな」
俺の通う学園、私立
大学部に進学すれば寮を出ないといけないし、なら早い内から一人暮らしをしたらどうだという父の意見で一人暮らしを決めた。
若干ぶん殴りたくなったがそもそも決定したのは自分だし、今更寮生活の申請を出したところで了承はしてもらえない。
なら違う所に住む……のも考えの一つではあるが、ここ以上に住みやすく、通いやすいところが見当たらない。住みやすすぎて部屋が余るレベルだ。
「結局犯人が捕まるのを待つしかないのか……」
そうなると俺に出来ることは何も無い。
諦めて俺は学園へと足を進めた。
☆☆☆
学園へ近づくにつれ恐怖は消えていった。まぁマンションに近づくにつれて恐怖が増すとは思うが。
だが今この瞬間は気分的にもすごい楽だし、改めて新学期なんだな……と思うことも出来た。
だがそんな高揚感は一撃でぶち壊される。
「やぁ葵。高等部進学おめでとう。今年度もよろしく頼むよ」
セミロングの銀髪を揺らしながら俺に声をかけるこの少女は
「唯。おはよう」
もちろん俺も唯のことは嫌いじゃない。むしろ友達としてなら一番好きなぐらい。
だが唯といると自分の劣等感が増す。
別に自分の容姿が醜いだとか、成績が著しく低いとかではないが、唯と比べた時にゴミと化すので少し悲しくなる。
かと言って唯を拒絶する気など一切無いし、これからも友達でいて欲しいと思う。
だけど唯と居ると視線が痛いんだよ。お前らには絶対にやらないけどな。
「そう言えば葵が住んでるマンション。殺人事件が起こったらしいね。葵は大丈夫かい?何もされてない?」
「俺は大丈夫。けどまぁ恐怖はある」
「葵が恐怖とは……珍しいものが見れたね。けど当然の反応かな?」
わざとらしく首を傾げて尋ねてくる。
あざといがそういう所も可愛いのだから少々ずるい。
「いや自分の身の回りでそんなことが起こったら誰でも怖いって。寮に居た方が良かったと思うくらいには」
「なら今晩は私の部屋で過ごすかい?一晩と言わず犯人が捕まるまでは」
その瞬間周りの視線が鋭くなる。あーもうこの子なんで軽率にそういうこと言うかな……。唯の声音や表情からは冗談など言っていないことは分かるし、本気で心配してくれてるんだなというのは伝わる。
ちらりと周りを一瞥すると鋭い視線はまだ俺を見据えていた。
その視線からは殺意も感じるし、羨望も感じる。……これを承諾したら俺の高校生活が終わるな。
さすがに入学初日で生活が終わるなど絶対に嫌なので断っておく。
すると周りもぱっと表情が元に戻り、先程までも殺意はなんだったんだと言いたくなるような素振りで学園へと向かっていた。
「まぁ……なんだ。心配してくれるのは感謝してるが、大丈夫だ。お前に迷惑かけるわけにもいかないし」
「迷惑なんかじゃないさ。君を1人にして、大事に至るなんて絶対に嫌だからね。君は大切な私の親友だから。まぁ気が変わったら言ってくれたまえ。いつでも大丈夫だから」
その言葉にありがとうとだけ言って、その後は適当に雑談しながら学園へ向かう。
あぁ……また学校生活が始まるんだな、と。若干面倒だが、それ以上の期待を膨らませて白凰学園高等部校舎へと歩いていった。
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