The Seven Fears - 僕と彼女と七不思議

震電みひろ

第1話 プロローグ

「助けて!ここを出して!誰か!」


 少女は激しくドアを叩きながら、声の限りを尽くして叫んだ。

 もう何度この言葉を叫んだだろう。

 自分の手も見えない真の暗闇の中で、それでも少女は必死に叫ぶ。

 だが少女の声は既に枯れかけていた。

 このペースで叫び続ければ、直に声も出せなくなるだろう。


……なぜ、こんな事になってしまったのか?なぜ、こんな所に来てしまったのか?……


 少女は自分の行動を激しく後悔していた。

 そう、始めはちょっとした遊びのつもりだったのだ。

 ちょっとだけ好奇心を満たしてくれる遊び……

 それがまさかこんな事態に陥ろうとは……


 さらに少女にとってマズイ事は、少女がここに来た事は誰も知らない事だった。

 明日から長期間に渡って、この建物には人がいなくなる。

 何としても今日中に見つけて貰わねば……


 少女の気持ちは焦りと恐怖に囚われていた。

 真の闇の中では、人間は時間の感覚を喪失する。

 少女は既に何時間ここにいるのか、わからなくなっていた。

 ポケットを探り、スマートフォンを取り出す。

 スイッチを入れると既に時刻は午後八時を回っていた。


……もうすぐ建物内の人は全て帰宅してしまう……


 少女の気持ちはさらに焦りが膨れ上がった。


「誰か!お願い!助けて!私はここにいる!」


 少女は淡いスマートフォンの灯りの中で、ドアに向かってせがりつくように叫んだ。

 心なしか、先ほどまでよりスマートフォンの灯りも弱いような気がする。

 充電容量は既に50%を切っていた。

 何度見ても、アンテナ一本立っていない「圏外」表示。

 それでも何度も電話してみた。

 親、家、友人、110番に119番。

 いずれも全くつながる事は無かった。


……このスマホの電源が切れる時、私の命も終わる時なのでは……


 少女の心に新たな恐怖が撒きおこる。


―これが本当の呪いなのか―


 少女はさらに気が狂ったようにドアを叩き、喉から血が噴き出るのではないかと思うくらい叫んだ。


「お願い!助けて!誰か!神様!このままここで死ぬのはイヤ!」

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