鑑定

 薄暗い診察室。

 パソコンの画面を見ていた二人の医師は同時にため息をついた。

「ちょっとすみません」

 と一人の若い医師が立ち上がった。

「気分悪くしたなら、悪かったな」

 少し年配の医師が白髪混じりの頭を撫で付けた。

「いえ」

 立ち上がった医師はシンクの前に行った。精神科の診察室なので、安全のため鏡は設置されていない。

「警察から精神鑑定を依頼されたんだが、どう思うね?アメリカで犯罪心理学を学んだ君の意見が聞きたくてね」

 若い医師はメガネを外すと、ため息をついた。

「そうですね。僕の意見は」

 そういいながら、若い医師は右目に指をあてた。

 その右手の小指は第2関節から先が、無かった。

 右目にあてた人差し指をグイっと下から持ち上げるようにすると、義眼が取れた。

 義眼を水道で洗うと、また下瞼をあっかんべーするみたいに引き下げて、義眼を右目に嵌め込んだ。

 胸ポケットから点眼を取り出し、数滴右目にさす。

「僕の意見は、なぜ、女の子だったのかってことです」

「ん?」

 若い医師の言っていることが理解できなくて、年配の医師は聞き直した。

「彼を、僕は知ってます。彼に右目を抉られ、右手の小指を切り取られたのは、僕です」

 年配の医師が息を飲んだ。

「僕じゃダメだったのか、それが彼に聞きたいことなんです。僕は、僕は彼に「食べられたかった」!」

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食べる ghostwriter @ningensakkaku

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