知識で乗り切る異世界生活(?)
饅頭屋せんべい
第1話 転生って実感ないねw
〔お疲れ様でした、茶摘楓さん。残念ながらあなたは亡くなりました。〕
「…はい?」
唐突に言われたこの言葉を、私は理解できなかった。
===
時間は遡ること1時間…。
私はお婆ちゃんの手伝いをするために茶畑に来ていた。
「毎年お手伝いありがとうねぇ、楓。」
別空間に入れておいた茶葉を渡すときに、そうお婆ちゃんは言った。
「いいよ、いいよ、全然。むしろ毎年茶摘みの時期が楽しみで仕方がないんだから!」
「そうかい?でも楓もいい年なんだから、もっと今どきの乙女らしいことをしてもバチなんて当たらないと思うんだがねぇ...」
そう言いつつ、飛走車に摘んだ茶葉を傷つかないよう丁寧に乗せていく。
「よし、準備もできたし陽が落ちる前に荒茶を作ってしまおうか。」
「うん! あっ、でもその前に私、先週のものを卸してくるよ。」
そういって荒茶を空間魔法でしまい、麓の市場に歩いて出かけた。
その途中…
私は突然頭痛を感じ、膝をついて束の間に意識が暗転した。
===
「あーっ、そういえばそうだったっけ。あれで私、死んじゃったんだ...。」
その時のことを私は思い出して、つい率直な感想が口から溢れた。
〔あ、あのっ、楓さん?突然死んだと言われてなぜそこまで落ち着いていr...〕
「あっ!まだ荒茶を市場に卸していない‼︎ お婆ちゃん大丈夫かなぁ」
〔呑気すぎませんか、楓さん。というか私の存在を忘れないでください!〕
抗議の声がしたのでそちらを見ると、紅い水玉模様の入った法衣(?)を着た女性がいた。その女性を見て私は...
「すみません、帰ってもらっていいですか?私、今から茶を卸しに現世に戻らないといけないので」
〔…っ⁉︎ いやだから、あなたは死んだのです‼︎ 自分でも‘私、死んじゃったのか...’っていっていたじゃないですか‼︎〕
鋭いツッコミが返ってきた。この人、なかなかいいセンスだ…。
「それはさておいて、あなたは誰なんですか?ここはどこなんですか?あと、なぜわたしはここにいるのですか?」
と、気になることについて聞いた。
〔自分で振っておいて…。いやまぁ、いいや。よくぞ聞いてくれました! 私こそが豊穣の女神、ラー・ケミスト。主に農耕や天候を司る結構すごくてありがたい女神なんです!〕
「自分で言ってしまうんですね…」
ラー・ケミスト。確かにお婆ちゃんから聞いたことがあったし、実際に存在したのは驚きだ。しかし…
「なんだか想像違いの残念女神ですね。」
〔ちょっ⁉︎ まさか死んだばかりの10代の少女にそこまで言われるとは…。かなり傷つきます...。というかそもそも初対面の者に...〕
「まぁまぁ、それでここはどこなんです?」
〔ここは私の管轄する空間、いわゆる神域です。そのため貴女が生きていた次元とはまた別のものです。〕
「へぇ〜」
〔興味が薄すぎません⁉︎〕
実際のところ、私には興味がなかった。茶関係の仕事だけが生きがいだったから...。
〔…っというわけで貴女はここにいるのです!〕
...やっば、聞きそびれた...
〔まぁ、それは置いておいて、ここからが本題です、楓さん。〕
突然の話題転換に私は少し困惑した。
「ほ、本題...ですか?」
〔そうです! 貴女にはいくつか選択肢がありますがどうしますか?〕
「いや、どうするかを決める前にとりあえず選択肢を教えてくださいよぉ。」
女神ラーとの問答に疲れ始めた私はゲンナリしつつも尋ねた。
〔あっ、忘れていました! 〕
この女神、神として大丈夫なのだろうか...
〔えーっとですね…
①元の世界に生まれ変わる。(いわゆる輪廻転生って
やつだそうデス)
②別の世界でsecond lifeを楽しむ。(記憶や肉体ははそのままだそうです)
③ラー・ケミストの補佐として神に生まれ変わる。
の3つですね。〕
ふぅむ、聞いてみると①と②は、友達から聞いたことがある‘てんぷれ’というやつではないだろうか?そう考えていると、
〔さぁさぁさぁ! どれでもいいんですよ〜!
まぁ、私的には③を選んでほしいなぁ〜! なんて、チラッチラッ〕
鬱陶しい視線を受けつつもしばらく考えていると、ふと疑問に思った。
「あのー、補佐って何をするのですか?」
〔ついにやる気になってくれたのですね‼︎〕
「いえ、気になって質問しただけです。」
しかし聞いているのか聞いていないのかラーは話し始めた。
〔簡単に言えば各空間の管理です。っと言っても基本的には手出し禁止っていうのが私のモットーですので、それほど大変ではありませんよ?〕
そこで私は追求した。
「えっ、他に神様はいないんですか?モットーとかいつでも破れそうなものじゃなくて、法で決めているのではないのですか?」
こういう場面で役に立つヲタ友達の豆知識…前世ではゴミ以下にしか思っていなかったのになぁ、評価を変えなければ! などとロクでもないことを考えていると
〔いますよ?私より適当な神がほとんどな上、個別行動ばかりしてますけど。〕
...決まった。そんな自由奔放な神様ばかりならモットーがある目の前の女神がまだマシだということが...
「もしかして私を神にしたい理由って話し相手が欲しいから、なんていう理由ではないですよね?」
〔…〕
そっと視線を逸らすラー。あっ、これ暇なだけだ...
〔それで楓さん、どうしますか?〕
「…」
〔あ、あの〜ぅ、楓さ〜ん?聞こえていますかぁ〜?〕
「決めましたっっ‼︎」
〔うわぁ!〕
驚きの声とともにどんっ、と音が聞こえた。どうやらラーが驚いた拍子にズッコケたときに出た音らしい。
「私、決めました!③にします‼︎」
〔イテテ、って本当ですか⁉︎〕
「はい、本当です! 私、神になって自分と同じような死に方をしそうな命を1つでも多く守ります!」
〔…それ、私のモットーに反するんですけど…。〕
「神様たちは基本単独行動している方がほとんどなんですよね?」
〔うっ...、わ、わかりましたぁ! 少しくらいならモットーくらい曲げてみせますよぉ〜〕
半泣きになりながらそう言うラー。そして
〔グスッ。...では転生の儀をします。儀式といっても簡単でこの契約文言を読んでくれたら完了ですよぉ。〕
そういってどこからか取り出された契約書。
〔あと、読み上げる時、ほしい能力があるなら強く願うといいですよぉ。〕
---こうして私、茶摘楓は神として生まれ変わったのだ
ちなみに能力は-博学-と-運動操作-という2つのものだった。これを知ったラー先輩は卒倒していたのだった---
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