ENDLESS D

天翔 凪咲

プロローグ

 庭に面した窓に腰掛ける女性がいる。

 記憶にはない場所だが、やや丸みを帯びた柱には彫刻が施され、どこかの神殿か城のようだ。

 不思議な形状をした大理石様のオブジェが、その庭には幾つも並んでいる。


 彼女は瞳を閉じていて、眠っているようにも見える。

 俺の愛しい……

 名前が分からない。

 誰なのかも。

 でも、何故だか激しく心惹かれる。

 形容しがたい感情が湧き上がってくる。


 俺は、いつの間にか彼女の傍らに立っていて、そして、彼女の顔の上に左手を掲げた。

 その手には、やけに赤い色をした血。

 まだほんのりと熱を感じる。

 俺の指の間から零れた血は、その女性の頬に落ちた。

 それはまるで、彼女の涙のようにその頬を滑り落ちていった。

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