自分が物書きであることを明かす
私はこれまでリアルな友人知人、さらには家族でさえも、自分は羽田光夏(はねだひか)というペンネームで、インターネット上で物書きをしていることを、極力知られないようにしてきた。というのも、作品内で恋愛や性について書いていることが多かったり、盲学校や作業所でのブラックな裏事情なんかもたまに書いたりしている(あるいはこれから書こうとしている)ので、これを書いているのが自分であることを、できればあまり知られたくなかったのだ。
もしもリアルな友人知人たちや家族に、そのことを知られてしまったら、
「うわー、こいつこんなこと書いてるよー。気持ち悪ーい」とか、
「へえ、そんな風に思ってたんだー。ショックだわー」
などと言われたりからかわれたりするのは大変苦痛である。
「それならなぜ去年詩集なんか出版したんだよ」
そう思われた方もいらっしゃるかもしれない。まさかこんなにも早く自分の本を出版できることになるとは思っていなかったのだ。
正直な話、第1詩集の出版が正式に決まった時、念願だった出版の夢がかなったことへの達成感や嬉しさよりも、自分が物書きをしていることを周りに知られてしまったらどうしようという不安や恐怖の方が大きかった。
いつか自分の本を出版したいという強い思いはもちろんあった。しかし同時に本を出版したことで、家族や親戚、盲学校の先生や友達、元職場の関係者や元彼など、今まで私と関わってくれていた全ての人たちに、自分の内面の奥の奥のさらに深いところまでを晒してしまうようで、なんともこそばゆいというか、息苦しいような気持ちになるのが耐えきれないだろうなあと、その時は思っていた。
だから詩集を出版してからしばらくの間は、家族に詩集を渡すことができなかった。
それでも母にだけは伝えてもいいだろうと思い立ち、出版してから1カ月ぐらいして、ようやく母に詩集を渡すことができた。
「あんたのその芸名(ペンネーム)は読めん」
これが母の詩集に対する初めての感想だった。なんとも母らしい感想だなあと思った。でもそれで充分だ。
詩集の内容についての感想は、母はもちろん、他の家族の誰一人からも全く聞いていない。でもそれでいいのだ。今後2冊め3冊めと本を出すことになったとしても、私から家族に感想を聞くことはきっとないだろう。言われた私自身も恥ずかしいし、答える側の家族も照れくさいだろうから。
だがだんだんそういうわけにもいかなくなってきた。
主婦業と執筆活動の両立がうまくできなかったことで、心身の調子を崩してしまったこともあり、3年同棲していた元相方との結婚を断って、実家に戻ってきてしまったからだ。
とりあえず家族にはライターの仕事をしながら、賞に向けて小説を書いているということにしている(定期的にさせてもらっていたライターのお仕事は、今年の3月末で終了してしまった)。
またそれ以外のところでは、メンタルの不調で自宅療養しながら、しがない物書きの端くれのようなことをしていると言っている。そのメンタルの不調からくる不安と、このコロナの影響もあって、一人で外出することができなくなり、何か仕事をしたくても、外に出られなくなってしまった。そこを周りから突っ込まれるのが嫌だったからというのもある(実際にTwitter上でそこのところを突っ込まれたことがあったから)。
それでもずっとこのまま両親に養ってもらっているわけにもいかない。ちょっとでもいいから収入が欲しい。
しかし書くことだけで稼ぐのは、とても難しいことも分かっている。でもかと言って、これと言った学歴も職歴も資格も持っていないような私には、書くこと以外にまともにできることが無いのも事実だ。
少しでも書くことを収入に繋げるには、まずは物書きである私のことや、その作品たちを、もっとたくさんの人に知ってもらうしかないと思ったのだ。
前回の章で触れた、isee!ワーキングアワードに応募したのは、そんな思いもあったからだ。そしてありがたいことに入選することができた。
そのことを切に、私はあることを決断した。それはリアルな友人知人や、元職場の関係者が何人も居るフェイスブック上で、私が羽田光夏という物書きであることを明かすことにしたのだ。
isee!ワーキングアワードには本名で応募したというのもあるのだが、やはりもっとたくさんの人に作品を読んでもらうには、Twitterだけではなく、フェイスブックも活用した方がいいのかもしれないとも思ったからだ。
その結果、予想以上に心がふっと軽くなったような気がした。今までずっと隠していたことを、ようやく言えたみたいな感じだろうか。
それまではTwitterでしか流していなかった、カクヨムや、ステキブンゲイや、noteなどの更新のお知らせを、フェイスブックでもシェアするようにした。すると感想コメントや、応援コメントがたくさん付くようになった。こうやって少しづつ読者が増えていくことが、改めてとても嬉しくなった。
まだまだリアルな人たちの前で、自分が物書きをしていることを話すのは、恥ずかしさや照れがあるけれど、オンライン上のフェイスブックならだいじょうぶかもしれないと最近思えてきた。
これを励みに、いつかはオフライン上でも、自分は物書き羽田光夏であることを、自信を持って、胸を張って言えるようになりたい。
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