ワイン王子
かがみ透
グレイ伯爵のお茶会
「これはこれは、白ワイン国王陛下、ようこそわがガーデン・ティーパーティー兼ブドウ会へ!」
「相変わらず冗談がお好きじゃの、グレイ伯爵。『ティーパーティー兼舞踏会』じゃろう?」
「シャルドネ女王陛下もご機嫌麗しゅう。今日も相変わらずお美しい」
「あらまあ、ありがとう!」
「よいよい、そのような堅苦しい挨拶はなしで。そちとワシらの仲ではないか」
マスカット王国宰相グレイ伯爵の邸宅では、恒例のお茶会が自慢の広々とした庭園で催されている。
招待された貴族たちはテーブルに並んだ茶と焼き菓子などのティーフードを口にし、楽団が優雅に音楽を奏でる中、会話を楽しんでいた。
国王夫妻の後から長身の青年たちが現れた。
第一王子のロワイヤル、第二王子キール、双子の第三王子サングリアと第四王子グリューだった。
彼らの登場で、その場は一層華やいだ。
中でも、第一王子ロワイヤルは一つに結わえたプラチナブロンドのロングヘアと、すっきりとした目元の爽やかな笑顔に加え話も面白いと、貴族女性たちの一番人気だ。
早速、黄色い声を上げて群がる淑女たちに連れていかれ、一人ずつと踊り始める。
「やあ、美しい姫君たち、今日はどなたが一番にこの僕と踊ってくれるのかな?」
「きゃーっ!」
「キール様ぁ!」
「あっははは、そんなに引っ張らなくても大丈夫だよ。みんなと順番に踊るからさ」
「きゃーっ!」
「キール様ぁ!」
第二王子キールだけは日焼けして少し肌の色が濃く、髪も赤茶色だが、目尻の垂れた甘いマスクと明るいキャラクターで第一王子に負けず劣らずの人気者である。これもまた淑女たちに引っ張りだこにされてしまった。
第三王子サングリアは短いブロンドに愛嬌のある親しみやすい無邪気な笑顔と性格が、娘たちというより熟女たちに受けていた。彼もまた取り囲まれ、ティーフードの並ぶテーブル近くに連れていかれ、焼き菓子などを乗せられたり、世話を焼かれたりしていた。
第四王子グリューは短い金色の髪の先はカールがかり、同じ双子のサングリア王子とよく似た整った顔立ちではあったが目立たず、ずっと国王の後ろについている。だが、普段は物静かであっても影では時々女性を口説いているという噂もあった。
「第一王子ロワイヤル殿下の人気は相変わらずですなぁ!」
グレイ伯爵が惚れ惚れと眺めながら言った。
「いやいや。早く結婚相手を決めさせようと、あれこれ他国の王女や国内の高位な姫たちと縁談を勧めとるんじゃが、一向に決まらなくてのぅ」
満更でもない調子で、国王は白いあご髭を撫でながら笑った。
「ところで、今回は、南国の王たちは呼ばなかったのかね?」
王の質問に、伯爵は困った顔になった。
「それが、ラム国王もテキーラ国王も、ホワイトだとか、ホワイトではなくあれはシルバーだとか言って揉めていて、この『白のお茶会』に出席のお返事をなかなかくれず。よくよく話を聞いてみますと、彼らのおられる南の国からするとこの時期のこちらの気温はこたえるので、またの機会にということになった次第にございます」
「あの方たちは、またそんなことを?」
呆れた様子でシャルドネ女王がティーカップに口をつけた。
「まったく、いつもながらにわけがわからぬな。来ないというなら来なくていいわ。旅費が浮いて良かったではないか。だいたい、あの二人はいつも言うことが甘いんじゃ」
「陛下ったら、またそのような辛口を」
咎めながらも、シャルドネは小気味好いとばかりに笑い声を上げている。
「その代わり、陛下、今回はすごい方々を東洋からお呼びしたのですよ。白毫銀針殿に、白牡丹殿、そして、東洋一の美女『東方美人オリエンタル・ビューティー』殿でございますよ!」
「ほう!」
身を乗り出した白ワイン王を、隣にいるシャルドネ女王は眉根を寄せて見つめた。
「しかも、ジャスミン侯爵のお供にいらした末の王女スノー・ジャスミン様まで」
「ほほう! あの東方美人に次いで評判が良く、可愛らしいとの噂の!」
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