第5話尼寺は善行の宝庫
守り鏡となった鏡の周りに蓮達が集まって腰を下ろした。
「守り鏡様。改めまして、これからもよろしくお願いします。」
「ヨロシク オネガイシマス」
蓮達は守り鏡に、まずは自分達が聞いてきた守り鏡の伝承を話す。
「守り鏡様は、鏡の持ち主や持ち主に係わりがある者達の危機を予知すると言われております。
守り鏡様が危機を予知すると鏡が光り、危機を映しだすそうです。
守り鏡様は近い将来起こる危機を教える事で、持ち主を救ってきたそうです。」
「ヨチノチカラ」
守り鏡の言葉に頷く尼僧達。
「守り鏡様が教えてくださる危機は色々あるそうですよ。大怪我や盗賊に襲われるような危険もあれば、老人や子供の迷い人等、本当に様々だそうです。」
「マヨイビト」
守り鏡が呟くと鏡が光り、無表情で黙々と歩く1人の老人が鏡に映った。老人見た尼僧達は慌てて立ち上がる。
「大変だわ、又お爺さんが家から出て行ってます。」
「まだそんなに遠くには行ってないわ。弥生さん、村人に声をかけてお爺さんを連れ戻して下さい。」
慌てて出て行く弥生を見送ると、蓮達は守り鏡にお礼を言う。
「守り鏡様、ありがとうございます。
お爺さん、最近惚けが酷くて。家族の隙をついて何処かに行ってしまう事があるんです。先日も迷い人になって、皆で探し回って無事連れ帰ったんですよ。」
「ヨカッタデス ホントウニ」
「ええ、早速1つ善行達成ですね。」
褒められて張り切ったのか、守り鏡が光る。
次に鏡に映ったものは、貴族の男性が豪華な着物を着た老人にお金を渡されて何か頼まれている。これを見た尼僧達、顔が歪み険しい表情になった。
「この方、まだ諦めていないんですね。貴族の方はどなたでしょうか。」
「確か、父の遠縁の親戚の方だと思います。守り鏡様、私は急用が出来て京に参ります。知らせて頂いてありがとうございました。
楓さん、守り鏡様とお寺をよろしくお願いします。少し時間がかかると思いますので、今日はあちらに泊まって明日帰ります。」
「かしこまりました。蓮様、お気をつけて。」
蓮は楓に頷くと、2人の尼僧を連れて部屋を出て行った。
残った楓達。改めて守り鏡にお礼を言い、事情を説明する。
「お金を渡している者は裕福な商人で、尼僧が大好きという気持ちの悪い者なのです。
お金を使って何とか尼僧を手に入れようと、寄付を申し出たり祈祷を依頼したりして来ているのですが、全てお断りしています。
先日は商人に雇われたと思える盗賊が襲ってきたのですが、盗賊を雇った証拠がなくて捕まえられませんでした。」
楓の言葉に不愉快そうに頷いている尼僧達。
「本当に尼寺と言うと、女性だけという事で盗賊やならず者に狙われる事も多いのですよ。駆け込み寺でもありますし、問題は次々に生じます。」
尼僧達の言葉を聞いて守り鏡が呟いた。
「アマデラ スゴイデス ゼンゴウ タクサン デキソウデス」
なんだか嬉しそうな守り鏡の言葉に、尼僧達は苦笑した。
「コノショウニン ニ ゲンジュツ レンシュウ ニ イイカモ シレマセン」
守り鏡の言葉に、楓達の顔が明るく輝いた。
「それは良い案ですね。幻術が失敗したとしても、守り鏡様はここにおられるわけですし危険はありません。
夜、籠に乗って歩いている時にでも、商人にだけ幻術を見せるというのはどうでしょうか。他の者達には見えないのに自分だけ亡霊が見える。結構な恐怖だと思います。自分以外の者は見えないというのが恐ろしいですよね。」
「さすが、楓様。皆が見えない中、1人だけ迫りくる亡霊が見える。怖すぎますわ。」
守り鏡が興奮したように輝いた。
「トテモ イイアンデスネ ヤッテミマス」
張り切っている守り鏡と一緒に細かい作戦を考えている楓達。そこに弥生が戻ってきて、村人達とお爺さんを無事に保護したと伝えて守り鏡にお礼を言う。
守り鏡が嬉しそうにふわりと浮かび揺れると、尼僧達も柔らかい笑みを浮かべた。
「ワタクシ ヨルモ ガンバリマス」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます