面白い作品とは何だろう?
久しぶりにこの自由帳を書きますが今回はある小説を読んで、昔と今とでは「面白い」という感じ方が少し変わってきたのでその事について書きたくなった次第です。あと感想もですね。
今回僕が読ませてもらったのは村田沙耶香さんの「コンビニ人間」です。
そうです、芥川賞のやつです。
それでは自由帳3ページ目スタート!
えーまず、昔の自分が好んで読んでいたのは、内容が分かりやすく尚且つテーマがわかりやすいものでした。ミステリー小説のような思考を巡らせるものよりも、人間ドラマやラブストーリーばかり読んでいました。
それは、読書後の純粋な幸福感を求めていたからです。
簡単に言えば、主人公に感情移入して、ハッピーエンドを追体験することを僕は読書に求めていました。
感情移入できたものは面白い。そうでないものはつまらないみたいな感じでした。
それが変わりはじめたのは乾くるみさんだったかな? 「イニシエーションラブ」を読んでからだと思います。
読書というものの概念が変わりました。
本を読んだはずなのに、マジックを見せられたような感覚でした。
種を明かされたあともう一度マジックを見たくなるのと同じように、ネットで解説を見るともう一度読み返したくなりました。
同じ本を何度も読み返すことはあまりありませんが、ごく稀にこうした本に出会います。
その度に自分もいつか物語を書きたい! と思っていました。
実際に書き初めてからはそうした本に出会うことはあまり無かったのですが、「コンビニ人間」を読んだとき、衝撃を受けました。
ここからは感想も混ぜつつお話しさせてもらいます。
ネタバレはないように気を付けます。
まず、序盤の文章で一気に引き込まれました。
主人公の幼少期のエピソードから背筋がゾクッとするような強烈な狂気を植え付けられます。コイツはかなり狂ってる、ヤバいやつだという印象を強制的に持たされるので、直接的な描写がなくても曖昧な表現であっても、コイツなら絶対ここまでやらかすだろう、と気付くと行間を読まされている自分がいます。
さらに、チラつく狂気がいい具合にページをめくる手を後押しするのです。
主人公の思考が狂いすぎてて、コントのようなやり取りを本気でそう考えているのが恐怖を通り過ぎておもしろくすら感じます。
内容自体は、日本人が大好きな「普通」とは何かということを、「普通」という感覚が理解できない主人公を通して「普通と異分子」「あっち側とこっち側」というような表現で描いていきます。どちらが正しくて、どちらが間違いなのか? そもそも正しさという物差しで計るべきものなのか? 普段の自分について等、色々なことを考えさせてくれます。
人間の見にくい部分が小気味良くあぶり出されていく終盤はゾクゾクしました。
いくつものテーマが見え隠れすることも再読を後押しします。
僕は、最後の最後までこの物語の結末が予想できませんでした。
そして、読み終わった時、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかが分からず、頭に浮かんだ感想は「哲学や……」でした。
そしてすぐに1ページ目へ戻り、再びページをめくり始めました。
今の僕が思う面白い本とは、
・結末はもちろんのこと、収束のさせ方がわからないストーリー
・発見や学びのある文体や表現
・読み終わったあと直ぐに最初から読み返したくなる(伏線やテーマを理解した上で答え合わせまたは考察するための2周目)
・誰かと内容について「熱く」語りたくなる
と言った感じです。
特に上の2つは自分で書き始めた方ならわかると思います。
嫌でも自分なりに結末やそこまでの流れを考えちゃうんですよね。だからホントに先の展開を予想もできない物語に出会ったときは嬉しくなります。
あと、文体や表現も同じですね。自分が考え付かないようなものは無意識に反芻してしまいがちですね。自分のものに出来るかは別として笑
昔に比べてただ面白かったという場合は逆に余韻に浸って再度読み返すことはないですね。
「コンビニ人間」の場合は読んだあとに解説や感想よりも早くもう一度この世界に没頭したいと思いました。他のことはなにも考えず集中して読みたいと思いました。
そして自分なりの哲学を得たなら、それを誰かと語りたいと思える作品でした!
「コンビニ人間」 著:村田沙耶香
皆さんも是非このステイホームなGWに読んでみてください!
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