召還された係長異世界認めねー(仮)

猫3☆works リスッポ

第1話事故責任

詞(ことばね)アリス※男22歳、俺の部下で新人だ。

アルバイト上がりだが明るくて元気が良いので皆の評判も良く正社員に格上げになったのだが、元はニートだったらしいので俺は不安しかなかった。

さっきから見ていると周囲は見える範囲において木しか見えない、森林の中と見て良いだろう、だいいち今この場所に俺らが居るのは、こいつがそもそもの原因だった。

業務用冷蔵庫が冷えないので200vの電源を点検していた時にこいつがバケツに躓いて二人とも水を被ってしまったのだ、まあ感電したという事だ。

「係長おつかれっす。」空に突き刺さるような笑顔がめっちゃ眩しい、そう確かにコイツは底抜けに明るいが。

「なんで君元気なの、この状況で平気なの?。」俺は詞に怒ろうとした、だが怒りたくても怒れない雰囲気を振り撒いている。

「何でって、ステータス見えるんですよ、ワクワクしないっすか。」俺の話を聞いてはいるようだったがコイツは両手を宙に泳がせて妙な踊りを踊っていた。

「そうじゃなくて何がどうなったか俺には理解できない、君のせいで俺たちは死んだはずなんだ。」なんかどっと疲れが湧いてくる。

「かかりちょ、これって転生っすよおいら憧れてたんすよ。」

「いやいや分からん、俺には分からん、どうするんだよこれから、どうやって家に帰るんだよ。」

「なんも問題ないっす、ええとかかりちょのステータスは胸に表示されるっす。」近寄って来て俺のシャツのボタンを外そうとして手を伸ばしてきた。ぞっとして俺はそれを振り解いた。

「やめろ、勝手に俺のを見るんじゃない。」

どうもステータスなるものは空間に現れるものではなく本人の胸に「表示」

されるものらしい、詞はさっきから色々と変な動きをしていたのはそれを探していて自分の胸に表示されるのをやっと見つけたのだった。

「オイラ昔から変だと思ってたんすよ、ゲームだって他人のステータス簡単に見られるはずないっすからね。」ほっぺが赤くなるほど上機嫌で得意気である。

「おまえ、今何しようとしたんだ、俺の胸にステータスなんぞ出てないぞ。」俺は自分でシャツを開けて胸を見たがいつもと同じなんの代わり映えもしない中年の腹が見えた。

「コツがあるんすよ、ち・く・び・をある法則でおすとひょうじされっすす、おいらがやってあげますよ。」

「喋るな寄るな、断る!。」

危ない危ない、すっかりこいつのペースに乗せられるところだった、ステータスなんて有るわけがないのだゲームじゃあるまいし、とにかくこんな与太話に付き合ってはいられない。

右手で右の頬をつねってみる、ほら痛いじゃないか、ほら夢とは思えないし、俺の意識はしっかりしている、そして手足の感覚もこれは現実だと言っている。

つまりはここが現実世界で有るからには職場に戻る必要がある、「ん?そうだ、死んだ気でやり直せつまり死んではいないのだ俺たちは。」

「かかりちょ、矛盾っすね。」今度は見た事ない植物を摘んでいる。

「こんん時はたいてい近くに村か小屋あるはずっす、暗くなる前につかないと危ないっすよ、棍棒見つけたスからかかりちょも持つっす。」俺に木の棒を持たせようと手を伸ばしてきた、まあ受け取っておく事にするか。

「俺はお前と話していると頭が痛いぞ、それに棍棒だなんてドラクエかよ。」

その時藪の向こうでガサゴソと音がした、どうやら二人ともテンションが上がっていた為に周りの状況に気がついていなかったようで。

俺も、さすがにお気楽な詞も手にした棍棒を前方に突き出して身構えたが到底役に立つとは思えないまま、ゆっくりと近づいて来るその黒いものを凝視していた。

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