第6話 バーン・ザ・エアー

「ストライク! バッター! アウト! チェンジ!」

 一回の裏の敵の攻撃が終わった。

「ナイスピッチング!」

 那覇の体を借りて俺の投げたボールは9球で3つの三振を奪った。

「ありがとうございます。」

 腰の低い性格の那覇はペコペコしている。

「なんだ!? あのギャップは!? 直ぐにオーナーに電話しろ!? ダイヤモンドの原石を見つけたってな!?」

「あんな子供が130キロのボールを投げたというのか!?」

「一面にはめ込ませろ!?」

「お昼のニュース!? 30秒でも1分でもいい!? 他社よりも先に映像を流がさせろ!?」

 球場に来ていた、テレビ局、新聞社、各スカウトなどの野球関係者の動きは慌ただしくなった。

「あの子のボールはなんなんだ!?」

 俺の空気を切り裂き、グラウンドの土を巻き上げ、キャッチャーミットを焦がすボールは注目を集めた。

「サイクロン!? ジャイロか!?」

「いや、あれはバーン・ザ・エアーだ。」

「バーン・ザ・エアー?」

「空気を焼くボールという意味だ。俺も初めて見た!?」

 野球関係者の大人たちは、俺の投球に驚くばかりだった。

(ヘッヘンー! どんなもんだ! 俺のピッチングは。幽霊だから勉強しなくて言い分、みんなが勉強している時間に筋トレに走り込みをしているんだ。そりゃ、他の子供より速いボールが投げられるのは当然だ! ワッハッハー!)

 授業を受けないで練習ばかりしているスポーツ特待生がスポーツが上手なのは当たり前。部活動をしないで、塾に行っていたり、学校に行かなないで、自宅でずっと勉強している者がテストの成績が良いのは当たり前である。要するに、人生の時間の配分の問題である。

(この回も三者連続三振だ!)

 2回の裏の相手チームの攻撃が始まった。

「ストライク! バッターアウト!」

「ストライク! バッターアウト!」

「ストライク! バッターアウト! チェンジ!」

 俺のバーン・ボールは、キャッチャーミットにバンバン突き刺さる。

「アチッ!? アチチチチチチッ!?」

 正に近隣火災注意報である。ミットから摩擦で飛び散った火花が打者の足に当たり小火傷して飛び回っている。

「警察を呼べ!? いや消防車と救急車を呼べ!?」

 沖縄球場はちょっとしたボヤ騒ぎになってしまった。

 つづく。

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