第5話 沖縄大会準決勝
「よし! いくぞ! 絶対に勝つぞ!」
「おお!」
那覇たち沖縄小学校は少年野球の準決勝に挑む。沖縄野球場で円陣を組んでチームは気合を入れる。
「それでは試合を始めます!」
「よろしくお願いします!」
審判の前に整列して相手チームに挨拶をする。いよいよ準決勝の始まりである。沖縄大会は3試合勝てば優勝である。
「プレイボール!」
審判の合図で準決勝が始まった。スポーツモノの良い所は、試合で間をつなぐことができることである。そう簡単にメインストーリーや恋バナは進まない。
「打て! 西表!」
1番は西表先輩だった。僕は裏のピッチングに備えてブルペンで肩慣らしをする。
(フッフッフ。今日も俺は絶好調だ! 今日は120キロ出るんじゃねえか? ワッハッハー!)
俺は野球場に那覇が来ると現れることができる幽霊だった。そして俺の調子は絶好調。
(んん? なんだなんだ? 一回戦に比べて観客が多いな? どうやら俺の実力が認められたようだな。ニヤッ。)
確かに沖縄球場の客席にお客さんが多かった。そして目立ったのが、スピードガンを持った大人たちだった。
「おい、スピードガンを構えろ。」
「はい。」
大人たちのスピードガンは那覇を追いかけていた。西表先輩がホームランを打とうが野球の試合は一切注目されていなかった。
「おい、何キロ出ている?」
「ひゃ、100キロです!?」
「おいおい!? スピードガンの故障じゃないか!? あの那覇って子は、まだ小学一年生なんだろ!?」
那覇のウォーミングアップのピッチングは球場に新聞記事や噂を聞いた、野球関係者のスカウトやスポーツ記者を集めた。
「初回は一点止まりか。いくぞ、那覇。」
「はい。」
那覇のチームの攻撃は1点だけだった。遂に注目されている那覇がマウンドに上がる。
(ああ~注目されている! みんなが俺を見に来ているぜ! 快感だ! 絶対に名門中学校やプロ野球チームのリトルリーグからスカウトされてみせる!)
幽霊の俺は今までにない充実感に満ち溢れていた。俺がプロ野球にスカウトされる日は近い。
「プレイ!」
審判が1回の裏の攻撃の始まりを告げる。
「ピッチャー第一球を投げました!」
俺は那覇に取り憑いて、この試合の第一球目を投げた。
「ストライク!」
俺の投げたボールは地面の砂を巻き上げながら、キャッチャーミットに火花を上げながらめり込んだ。
「何キロだ!?」
「130キロです!?」
「なに!? あの小1は化け物か!?」
俺の投球に、おおー! っと球場全体からどよめきが起こった。
つづく。
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