第2話 那覇
「プレイボール!」
審判が試合の開始を告げる。
「おいおい、高学年のリトルリーグに相手のピッチャーは小1のガキかよ?」
「俺たちもなめられたものだ?」
「あんな小さいので大丈夫かよ?」
「ワッハッハー!」
相手のベンチはマウンドに上がっている那覇をバカにしている。
「おい! 手加減してやれよ!」
「そうだそうだ! 子供を泣かすなよ!」
「ワッハッハー!」
相手の先頭バッターがバッターボックスに入り、バットを構える。
「・・・・・・。」
那覇は相手チームの冷やかしに無反応で表情を変えることなく、第一球をキャッチミット目掛けて投げつける。
「え?」
ズドーン! と那覇の第一球はキャッチャーミットに一瞬に吸い込まれた。那覇のボールは空気を切り裂き気流の渦を作って破壊力抜群だった。キャッチャーミットから摩擦で湯気が出ている。
「はあ?」
相手チームのバッター、ベンチのメンバーは時が止まったように固まって動けなかった。
「審判、タイムお願いします。」
「え? ああ!? タイム!?」
審判も那覇のボールを見て驚いて時間が止まっていた。
「な、なんだったんだ!? 目の錯覚か!?」
相手のバッターは那覇のボールを一球見てビビってしまった。
「今のはなんだ!?」
「あいつ小1だよな!?」
「あんなボール見たことないぞ!?」
「100キロ!? いや120キロぐらい出ていたんじゃないか!?」
相手チームのベンチは見たこともない得体の知れない投手と戦うことに気づいた。
「おい、那覇。手加減しろって言ったよな。」
キャッチャの西表がタイムを取ってマウンドの那覇の所にやって来て文句を言う。
「すいません。体がムズムズして、勝手に速い球を投げちゃうんです。」
「また病気か? 野球をする時は、おまえは性格が変わるからな。だがな俺も、おまえの球を最後まで受け続けられるか分からない。いいか、手加減しろよ。キャッチャーミットを何個潰す気だ?」
「すいません。西表先輩。」
西表はキャッチャーのポジションに帰って行った。
「すいません。西表先輩。俺、野球ができるのが嬉しくてたまらないんです。エッヘッヘ。」
那覇は気弱な性格で、直ぐに謝るナヨナヨしていた。しかし野球をする時だけは俺と人格が変わる。
つづく。
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