最後の晩餐メニュー決定機
「キミ、もし明日、人類が等しく滅びるとしたら、死ぬ前に何を食べたいかね」
「唐突になんですか?物騒ですね、博士」
「テレビでそんな質問をしていたものでな」
「どうせ死ぬなら贅沢三昧ですかね。ウニ、トロ、イクラ。高級ネタのお寿司とか。うーん。松阪牛のステーキやすき焼きもいいですね。あっ。トリュフ、フォアグラ、キャビア、フカヒレもまだ食べたことありません。一度、食べてみないと死ねないですね」
「では食べに行こう」
「そんなお金ありません」
「私がごちそうしよう」
「えっ。博士。もしかして、今回の発明は『金のなる木』ですか」
「そんないやしい発明はやらん!」
「失礼しました。では、今回の発明はなんですか?」
「これだ!名づけて『最後の晩餐メニュー決定機』だ。キミにとっての究極のごちそうを決定してくれる機械だ」
「また風変わりなものを発明しましたね」
「うむ。これさえあれば、いざと言うときに悩まずに済むぞ。このメガネ型の装置つけて食事をとる。するとキミの脳波、発汗状態、瞳孔の開き具合、ほほの筋肉のゆるみなどを計測し、その食事にどれだけ魅了されたかを数値化できるのだ」
「わかりました。博士の気が変わらない内に、ごちそうを食べまくりに行きましょう」
『ハカセ、オチャ、イレタゾ。ノメ』
「悪いな。ブリキのロボット君」
「すまん。これから彼と出かけてくる」
『・・・。イッテ、ラッシャイ、マセ』
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「いゃー。本当にごちそうさまでした」
「いやいや。私も驚いた。世の中にはまだまだ美味しいものがたくさんあるものだ。私の研究テーマがまた一つ増えたよ。こんばんはもう遅い泊っていけ」
『ハカセ、カエッテ、キタ!オレ、ユウハン、ツクッタ。マッテタゾ』
「悪いな。ブリキのロボット君。博士も私もお腹いっぱいだ」
「すまんな。これ以上は食べれん。明日の朝にしてくれ」
『・・・。ソンナニ、オイシ、カッタカ?』
「ああ、もちろん」
『・・・。ソウカ、ヨカッタナ。ナラ、オレ、ネル』
「博士、あいつロボットのくせに寝るんですか?」
「どうも、そうらしい。人間と同じように記憶を整理する時間をとるようになった。それより、お腹が膨れすぎて眠い。われわれも寝るとしよう。『最後の晩餐のメニュー決定機』の結果発表は明日だ」
「そうですね。ではおやすみなさい」
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『アサダ、フタリトモ、オキロ!アサメシ、ハ、キノウノ、カレーライス、ダ』
「博士。昨日の贅沢三昧を考えるとなんとも平凡なカレーライスですね」
「比較用に『最後の晩餐のメニュー決定機』をつけてみよう。キミもつけろ」
「はい。つけましたよ」
「いただきます。ん。んーん。うまい」
「ほんとうだ。美味しい。ただのカレーライスなのに」
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「食事もすんだ。では結果発表といこう」
「博士。それが・・・。」
「はやく見せないか。ん。カレーライス。こいつが作ったやつか。ははあ。キミの口が庶民的だと言うことだな」
「なら、博士はどうなんですか?」
「そりゃあもう。ん。そんなバカな」
「博士もカレーライスって表示されているじゃないですか」
「・・・」
『オレ、ココロ、コメテ、ツクッタゾ。ウレシイ』
おしまい。
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