依藤セナの旅―SLCB~CampRing~
@e10ulen
第1話
三台のカブの排気音が早朝の工場街に響く。後ろから一台のバンが着いてきて、僕らを撮影している。まるで某北海道出身のデビュー直後のタレントとその所属事務所社長の原付旅みたいだけど、それを半ば踏襲する形で僕らはカブでの移動を選んだ。後ろから撮影しているのもそう。ただ一つ違うのはあの人たちは無線でやり取りをしていた。僕らは万が一を考えて普段はインカムでの会話。道を逸れた場合なり、天災に巻き込まれた時には荷物に入っている無線を使う、万全の体制で挑んでいる。大げさかもしれないけど、これが僕からできる二人への安全対策だと思っている。姉貴にはその辺の類は僕に任せて気楽に撮影してきてよ! とか言われていたけど、僕が巻き込んだようなものだからと、人任せにしたくなかった。
「セナさん、今日は何処行くんですかー?」
「今日は江の島に行くよ。お昼ぐらいに到着予定かな」
「おー江の島! 楽しみだなー」
「ということで、
「了解です!」
国道を走行する時は
ゆっくりと街中を走り続けて、数時間。そろそろ駿河湾が見えてくるかな。なんて思いつつ、僕らは進む。カメラを止めて休憩中に、ようなものだからと、そこは固く断った。
「紅葉ー、1回江の島に渡る橋の所でストップしてねー。車を先頭に変えて前からの映像とるから」
そんな感じで打ち合わせを行ってから撮影を再開させた。
スタッフの車を先頭に紅葉、莉桜、僕の順で江の島入り口の交差点を左折する。
「ねぇ莉桜見て、江の島に渡るよ」
「長かったねー、もうお昼だよー」
「江の島なぎ駐車場を過ぎた左手にある駐輪スペースがあるから観光するかい?」
「するする! やった! 江の島観光だ!」
「莉桜、こんなとこでドジってコケないでね」
「分っているよ! 紅葉も気を付けてねー!」
「僕の心配はしないんだね。まぁ、ぬかるんだキャンプ場より安定しているから大丈夫だけどね。二人とも、たこせんべいを食べてから観光しよう」
「分りました」
僕達はカブを止めて再びスタッフ達との打ち合わせでここから灯台までのルートを話し合った。
弁天橋をのんびりと渡りながら今日の目的地はあそこの灯台だよと教えたり、有名なたこせんべいを食べて、灯台までの屋外有料エスカレーターを使って莉桜を先頭に並んで乗り、一つ上った先にある
「セナさんも好きなのを注文すればよかったのに」
「そうですよ」
「このお店のおすすめの品を紹介するためだし、二人が楽しそうに選ぶ姿を見ているだけで僕はいいのさ」
そんな話をしている内に店員がフレンチトーストを運んできた。二人がSNSに投稿するから、と何故か僕が写るように撮り始めた。
「おいしそうに撮れたかい? 僕を写した事に関しては横に置いといて僕も莉桜達をバックに写真を撮って更新しないとね」
三人とも別の味を注文したこともあって、交換して食べたりしながらスタッフのカメラにアイドルじゃない僕達を写していく。
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