第1話 Demon Hunting
さて…日直の日誌も書き終えて提出したことだし、悪魔を狩るだけ狩るか…
ズゥゥゥン…
このよどんだ気配…早速悪魔のお出ましか。
ー職員室前ー
ふむ、どうやら悪魔は教師の心に憑いているみたいだな。言い忘れたが、悪魔は基本的に人間の心に巣食っている。当然悪魔は人間には見えず、私のような魔界に住む者でしか見ることは出来ない。
「我らに仇なす黒き輩、その罪を償う時が来た。姿を現せ…」
悪魔を人間の心から離すには特殊な暗示が必要だ。これをしなければ悪魔はどうやっても人間から引き離せない。全く…一手間かかる作業だ…
「クシャァァァァ…!!」
よし、悪魔が2、3匹出てきたか。後は捕縛して人目につかない魔界まで持って行けば…
「あら、サファイアさん。どうしたの?そんな怖い顔して。」
しまった…ここは職員室前だ。ここで立っていれば担任教師にだって出くわすか…
「ちょっと教室に忘れ物をしてしまって、もう取ってきたので大丈夫です。」
「そう?じゃあ気を付けて帰ってね。」
「はい、さようなら。」
ビシィッ!!
「クガ…ガ……」
何とか去り際に捕縛出来たから大丈夫だな…さて、魔界に持ってってさっさと狩るか。
ー魔界ー
パシュッ!!
「さぁ、悪魔達…かかって来なさい。」
「クシャァァァァ!!!」
耳をつんざくような奇声をあげて悪魔達は私に襲いかかる。
サッ…
私は2本の短い剣を出して逆手に構えた。実はこの剣は合体させると一丁のライフル銃に変形するという魔界特製の武器なのだが…
「キシャァァァァ!!!」
奇声をあげながら一匹の悪魔が走りながらこちらへ向かう。私はそれを真っ正面から切り抜いた。
ジャキン!!ブシュゥゥゥ…
声をあげるまでもなく一匹は垂直に切り裂かれて絶命する。それに応じてか、残りの悪魔も敵討ちと言わんばかりにこぞって向かってくる。
「魔力チャージ…」
剣に力を込めて私の中の魔力を注入していく。これは魔力を持つ魔人だけが出来る力であり、並の種族では出来ない芸当だ。
「ハァッ!!」
ザシュザシュザシュッ!!
「ガ……ア……」
魔力を込めた回転斬りは瞬く間に向かって来た悪魔に重傷を与えた。だが、これでやられるほど悪魔は脆くない。さっきの一匹はほぼ完全に体を切断したために一瞬で絶命したが、今のでは致命傷になっただけで絶命したわけではない…
ガチャ、ガコンッ!
すかさず2本の剣を合体させ、ライフルの形状にすると、踊るように乱射を開始した。
ドパパパパパパパパ!!!
「Die(死んで)。」
ブシュゥゥゥ…
「ふぅ…」
さて…魂を回収して持って帰るか。
キュポンッ。
悪魔の魂3つ、まぁそれなりの収穫といったところかな。
ーペルビ邸ー
「ただいま。」
「おぉ、ただいまお戻りになられましたかお嬢様。」
私の帰りを執事であるペリドットが迎えてくれた。彼は私が幼い頃から面倒を見てくれており、かれこれ長い付き合いになる。当然だが彼も私と同じ魔人だ。
「これ、今日の収穫分の魂よ。」
無造作に袋に入れられた悪魔の魂をペリドットに渡す。
「三匹でございますか。良い収穫ですな。」
「まぁ…今日は学校の教師から悪魔が出てきたから…ところで父さんと母さんは?」
「アイオライト様はしばらく会社の出張で家を開けるとのことで、パライバ様は二週間ロシア旅行に行くとのことです。」
「はぁ!?旅行!?」
父さんは魔界の電化製品会社の社長だから出張なんて結構あるから分かる…でも何故そんな時期に母さんは旅行を…!?というかそれってしばらくの間は私しかいないってことじゃない!!
「それと、パライバ様からビデオレターを頂いております。」
「ビデオレター…?」
ペリドットは懐から携帯機のようなものを取り出すと、広げて私に見せた。
『はーい!サフィ見てる~!?学校はどう?友達出来た?私は今ロシアで寒い思いをしながら旅行してまーす!それじゃ、父さんは出張でいないから、しばらく家の留守をよろしくね!』
「ということで…」
「………呆れた。」
もはや怒るだけ無駄な気がしてきた。いくら母さんが旅行好きだとしてもこれは無い。これは無いのだが、今更怒っても無駄に…だけどこれだけは言わせて。
「寒い思いをしながら」って何ッ!?
続く。
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